文:富安陽子 絵:飯野和好 出版:童心社
有名な怪談話「雪女」。
お話は知っていても、どのように生まれて、どのように消えていくかを知っている人は少ないのではないでしょうか。
そんな雪女の生まれてから消えるまでを素敵な解釈で描いた絵本です。
あらすじ
雪がやんだ後の月夜の晩。
そんな日は雪女が生まれてくる。
北風が吹いてきて、雪を巻き上げる。
北風と雪がダンスを踊っているうちに、白い影がふわりとたなびく。
その影の中から雪女は生まれる。
生まれたての雪女はまだ形があやふやだ。
冷たい夜を漂ううちに雪女の姿は段々はっきり見えるようになる。
体がしっかり固まると、雪女は嬉しくて歌い出す。
歌い出すとすべてが凍り付く。
昼も夜もあたりを凍らせ、吹雪を起こす。
でも、それもずっとは続かない。
雪女も消える時がやってくる。
それはいつ・・・?
『あたしゆきおんな』の素敵なところ
- 情景が思い浮かぶ、詩的でロマンチックな文章
- 迫力はあるけど優しい雪女
- 雪女らしさを忘れない「誰かにしゃべってはいけない」といフレーズ
この絵本はとても詩的で、雪女が生まれる様、あたりのものを凍らせていく様子などが、とても表現力豊かに描かれています。
その中で、それらをダンスや歌に例えたり、雪女が消えた後の解釈などとてもロマンチックな描き方がされています。
見ているだけでその世界観に引き込まれる魅力に溢れています。
また、雪女も魅力的です。
嬉しくて踊ったり、歌を踊る姿は綺麗でかわいらしい。
あたりのものを凍りつかせますが、生き物を凍りつかせたりはせず、寒がらせるだけという優しさも見せます。
でも、優しい姿だけでなく、雪女本来の怖さも忘れず取り入れているのが素敵なところ。
お話の冒頭と最後に雪女お決まりのフレーズが出てきます。
それは「このことは誰にもしゃべっちゃいけないよ」。
このフレーズがあることで、「優しかったけど、しゃべったら凍らせに来るかも」という怖さが生まれます。
しかし、このフレーズは原作の雪女を知らないと怖さが半減してしまいます。
なので、原作を読んだ後で、この絵本を読むのがおすすめです。
雪女の新たな魅力がたっぷり詰まっている絵本です。
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