作:林木林 絵:山口マオ 出版:金の星社
背の高いお母さんに憧れるキリンの子。
背伸びをして見上げていたら、首が長く長くなっていきました。
木よりも、山よりも、雲よりも・・・。
あらすじ
キリンの子が背伸びをしています。
草原一背の高い、お母さんみたいなキリンになりたかったからです。
そんな思いで、毎日上を見て背伸びをしていたら・・・
空を飛ぶ小鳥と友だちになりました。
キリンの子はもっと背が高くなりたくて、背伸びをして、木と背比べをしていたら・・・
母さんと同じくらい背が高くなっていました。
母さんと背比べをしながら高い木の葉っぱを食べていたら・・・
母さんよりも山よりも、背が高くなっていました。
気が付くと、世界で一番背が高くなっていて、森だけでなく、海や山のそのまた向こうまで見渡せるほどでした。
キリンはその夜・・・。
『きりんのこがせのびをして』の素敵なところ
- 驚く程長くなっていく首
- 子どもの大きくなりたいという気持ちが詰っている
- 本当のところは誰にもわからない結末
驚く程長くなっていく首
この絵本のなによりおもしろいところは、どんどん長くなるキリンの首でしょう。
お母さんと同じ長さになるくらいまでは、成長の範囲内なのですが、そこからさらに伸びていくからびっくり。
山を越え、飛んでいる飛行機と同じ高さになり、さらには星や月と同じくらいの高さまで伸びていくのです。
ここまでくると、キリンと言うより塔のような建造物にすら見えてきます。
しかも、体が大きくなるのではなく、首だけ長くなっていくというのもまたおもしろいところ。
広がる空に伸びる一本のキリンの首という風景は、圧巻でありえないことが起こっていると、ひしひしと伝わってきます。
もちろん子どもたちも、キリンの首が伸びるたび、
「まだ伸びるの!?」
「飛行機くらい大きくなってる!」
「星ってことは宇宙まで行ってるじゃん!」
と、嬉しそうに驚いていました。
この、ページをめくるたびどこまでも長くなるキリンの首が、この絵本のとても素敵で楽しいところです。
子どもの大きくなりたいという気持ちが詰っている
こんな風に、どんどん背が高くなっていくキリンの子。
予想外に背が高くなる姿に驚きますが、その原動力は「お母さんみたいに大きくなりたい」というとても純粋なものでした。
これはきっとどの子も持っている思いでしょう。
高い高いをしてもらって「お父さんより大きいよ!」という子。
「あたし、お母さんの肩に届くようになったよ!」と喜ぶ子。
「父さんよりもっと大きくなるんだ!」と、ご飯をたくさん食べる子。
など、憧れの大人のように大きくなりたいと見上げることは、とても自然な成長への思いなのかもしれません。
この絵本では、そんな思いを全力で叶てくれます。
見上げていたら本当に大きくなって、お母さんと同じ木の葉っぱを食べれるようになるのです。
子どもにとっては、高いところにある物を大人のようにひょいっと取れる感覚でしょうか。
でも、それだけで終わらないのも、この絵本の素敵なところ。
大人と同じ高さのその先まで、体験させてくれるのです。
お母さんを追い越して、長くなっていくキリンの首。
すると、木の向こうの景色が見えてきます。
山があり、海があり、その向こうには陸地や街や村がある。
お母さんと同じ高さでは見えなかった新しい世界が、目の前に開けてくるのです。
それはまさに子どもが成長し、大人を越えた時に見える世界なのでしょう。
そんな素敵な未来を垣間見せてくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。
本当のところは誰にもわからない結末
さて、どんどん首が長くなっていくキリンの子の結末は、予想外なものでした。
夜にも色々な出来事がたくさんあり、驚きが止まらない子どもたち。
ですが、あることがきっかけで、キリンの姿は元の小さなキリンに戻ることになります。
そして、戻った時の理由は曖昧です。
この曖昧さが、この絵本の素敵なところ。
人それぞれ、色々な解釈ができるのです。
「こんなに長くなるわけないから」と現実的な解釈をする子。
「本当に長くなったんだよ」と夢のある解釈をする子。
自分の思うように解釈でき、それを否定される要素がありません。
この不思議な物語の真相が、それぞれの子どもにゆだねられているのもまた、この絵本のとても素敵なところだと思います。
二言まとめ
お母さんよりも、山よりも、空よりも高くなっていく、キリンの成長がおもしろい。
子どもたちの、「大きくなりたい」という願いを叶えてくれる絵本です。
コメント