作:北村直子 出版:こぐま社
子どもと大人で、全然姿の違う生き物たち。
その変化はまさに変身!
さあ、どんな変身が見られるのでしょうか?
あらすじ
オタマジャクシが枯れ葉を食べています。
陸地に上がりしばらく過ごすと・・・
カエルに変身!
平べったい幼虫が巻貝を食べています。
サナギになって、お尻が光始めると・・・
ホタルに変身!
アオムシが葉っぱを食べています。
サナギになってしばらくすると・・・
アゲハ蝶に変身!
ボウフラが水の中で微生物を食べています。
サナギになってしばらくすると・・・
蚊に変身!
幼虫が土を食べています。
サナギになってしばらくすると・・・
クワガタムシに変身!
人間の男の子がご飯を食べています。
布団の中でぐっすり眠ると・・・?
『へんしん!』の素敵なところ
- テンポのいい、変身までの3ステップ
- 変身を盛り上げる楽しい言葉
- 最後の身近すぎる変身!?
テンポのいい、変身までの3ステップ
この絵本のなにより楽しいところは、姿がまったく変わる変身のおもしろさにあるでしょう。
オタマジャクシからカエル、幼虫から成虫へと、まったく違う姿になる生き物たち。
そこには生命の神秘を感じます。
それをこの絵本では、テンポよく3ページの3ステップで描き出します。
これがなんとも気持ちいい。
1ステップ目:モリモリご飯を食べる。
2ステップ目:陸に出たり、サナギになって静かに変身の時を待つ
3ステップ目:変身!
と小気味よく、次々と生き物たちが変身していくのです。
けれど、テンポの良さとは裏腹に、その生き物の特徴はとてもよく表されているのがすごいところ。
体の形状はもちろん、住んでいる場所や、食べるもの、サナギの静けさや、出てくる直前の期待感など、すべてがこの3ページから伝わってくるのです。
しかも、かわいくて、楽しくて、かっこいい!
究極のデフォルメと言えるかもしれません。
この、見やすく、わかりやすく、楽しい上に、とてもリアルな3ステップの変身が、この絵本のとても素敵なところです。
変身を盛り上げる楽しい言葉
また、この変身を盛り上げ、より楽しいものにしてくれているのが、絵本の中の文章です。
「へんしん」という文字の描き方が、
カエルなら力強い字体で「へんしん!」。
チョウなら「へ・ん・し・ん」と上品に。
蚊なら「へ~~~~~~~んしんっ!」と、蚊が飛んでいるようにうねった伸ばし棒で・・・。
など、文字でその生き物らしさを表現していたり、
サナギの時に「かさこそ」「くねくね」など、出てくる直前の様子を表すその生き物らしい一言で、もうすぐ出てくる期待感を高めてくれたり、
出てきた時に、
カエルなら不敵に「くっくっく」と笑う。
チョウならかわいく「ルンルン」と輝く。
蚊なら「え?なにか?」とダジャレ。
と、変身をさらに盛り上げて、楽しいものにしてくれるなど、文章はこの絵本に欠かせないものとなっています。
この1ページに一言ずつの言葉が、楽しいテンポ感と雰囲気を生み出し、変身をより楽しいものにしてくれているのです。
最後の身近すぎる変身!?
さて、そんな絵本の最後の変身は、まさか過ぎるオチになっていました。
子どもがご飯を食べ、ぐっすり寝た後の変身・・・。
見ている子は、「わかった!大人になるんだ!」と言っていましたが、デフォルメしつつもリアルさを忘れないこの絵本。
そんなことは起こりません。
子どものままで、しかし変身を果たした最後の場面に、驚きつつも大爆笑。
「わたしも変身してる!」と共感まで生んでいました。
この、予想外だけれどあるある過ぎる、最後の笑える変身も、この絵本のとてもおもしろいところです。
二言まとめ
変身という生命の神秘を、3ステップで余すことなく表現した。
テンポよく、楽しく、おもしろく、生き物のことがよくわかる絵本です。
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