うりこひめ(4歳~)

絵本

作:松谷みよ子・つかさおさむ 出版:童心社

おばあさんが拾った瓜から生まれた女の子。

大切に育てられていましたが、ある日、鬼にさらわれてしまいます・・・。

まるで、桃太郎の対となるような昔話です。

あらすじ

昔あるところに、じいとばあが住んでいた。

ある日、ばあが川で洗濯をしていると、川上から瓜が流れてきた。

ばあは瓜を拾い、家に持って帰ることにした。

家へ帰ると、じいも山から帰ってきたので、早速瓜を食べることに。

瓜を割ろうとしたその時。

なんと、瓜がひとりでに割れ、可愛らしい女の子が生まれたではないか。

じいもばあも喜んで、女の子にうりこひめという名前をつけた。

うりこひめは見る間に大きくなり、美しい娘になった。

はたを織るのが上手で、毎日いい音をさせてはたを織っているのだった。

そんなうりこひめの噂を聞きつけ、東の長者がうりこひめを嫁に欲しいと言ってくるほど。

うりこひめは、東の長者に嫁入りすることになった。

さて、じいとばあが、嫁入りの支度をしに、町へ買い物に出かけた時のことだった。

じいとばあ、うりこひめにあまんじゃくという怖い鬼が来るかもしれないから、誰が来ても戸を開けてはいけないと、言って聞かせ買い物に出かけた。

うりこひめがはたを織り始めるとすぐ、あまんじゃくがやってきて戸を叩いた。

あまんじゃくは戸を開けて一緒に遊ぼうと誘ってくる。

うりこひめは断るものの、あまんじゃくがあまりに必死に頼むので、ほんの少し戸を開けてやった。

すると、その隙間に爪をかけ、あまんじゃくは戸を開けて入ってきてしまった。

あまんじゃくは、西の長者の家の桃畑に、桃を食べに行こうと誘ってくる。

うりこひめは何度も断るが、あまんじゃくはしつこく誘い、最後にはうりこひめをおけに放り込み、そのおけを担いで桃畑へと走り出してしまった。

桃畑に着くと、あまんじゃくは一人で木に登り、美味しそうに桃を食べ始めた。

うりこひめが桃をくれと言うと、あまんじゃくは虫食いや青いものを投げてよこし、バカにした。

うりこひめは悔しくて、木にしがみつき、なんとか桃の木に登っていった。

そこをあまんじゃくが捕まえて、うりこひめを木にくくりつけてしまったから大変だ。

あまんじゃくは、急いでうりこひめの家へ行き、うりこひめに化けて、じいとばあが帰ってくるのを待った。

しばらくしてしいとばあが帰ってきたが、どうもうりこひめの様子がおかしい。

はたの音は騒々しいし、声も変だ。

じいとばあは不思議に思っていたが、そこへ東の長者から嫁もらいのかごがやってきた。

あまんじゃくが化けたうりこひめに、嫁入りの衣装を着せると、かごはしずしずと進んでいった。

このままあまんじゃくは、嫁入りしてしまうのでしょうか?

本物のうりこひめの運命は・・・?

『うりこひめ』の素敵なところ

  • 桃太郎と対になっている物語
  • うりこひめとあまんじゃくのどこか憎めないやりとり
  • 鬼を退治しうりこひめを助けたのは・・・

桃太郎と対になっている物語

この物語のおもしろいところは、ところどころにある桃太郎に似ているけれど、正反対の展開でしょう。

物語の冒頭、川で洗濯をしているばあのもとに、瓜が流れてくるところは、まさに桃太郎そのもの。

子どもたちも、「桃太郎と一緒だ!」とすぐに気付きます。

けれど、そこから生まれたのはかわいらしい女の子。

桃太郎のようにすくすくといい子に育っていきますが、勇ましく鬼退治にはいきません。

長者のところにお嫁にいくのです。

しっかり鬼も登場しますが、ここでも桃太郎と正反対。

うりこひめは鬼にさらわれてしまうのです。

まさに「桃太郎が女の子だったら?」という展開になっているのです。

けれど、パロディという雰囲気は全くなく、うりこひめならではのおもしろさが詰まっています。

この、どこか似ているけれど全然違うという感覚がおもしろく。

「ここは桃太郎と同じ!」

「ここは桃太郎と反対だ!」

と、うりこひめという昔話だからこそ、味わえるおもしろさなのでしょう。

うりこひめとあまんじゃくのどこか憎めないやりとり

では、このうりこひめならではの魅力はなんなのでしょう?

それは、うりこひめの自由でのびのびとした人物像にあると思います。

それがよく表れているのが、あまんじゃくとのやり取りで、色々なやり取りをするうりこひめ。

桃畑へ誘われた時には、

「ほれ、下駄はいて」と言われれば「下駄はけば、からんこからんこ鳴るからいやー」

「それなら草履はいて」と言われれば「ぽんぽん鳴るからいやー」

と、戸を開けて入ってきたあまんじゃくを怖がるでもなく、桃畑への誘いをことごとく断るうりこひめ。

ある意味、桃太郎よりも心の強さを感じます。

さらには、おけに放り込まれ、桃畑まで連れていかれたあとにも、桃を食べたがるうりこひめ。

ここまでくると、あまんじゃくと友だちとしてやっていけるのではないかという強さを感じます。

この、騙されてはいるのだけれど、どこか対等さを感じる憎めないやり取りが、この絵本の見どころで、とてもおもしろいところ。

と同時に、弱々しい、昔ながらのお姫様かと思いきや、桃太郎に通じるたくましさや、芯の強さを感じるところでもあります。

鬼を退治しうりこひめを助けたのは・・・

さて、そんな物語の結末も、まさに桃太郎とは正反対のものでした。

王子様が助けてくれるわけでも、長者が助けてくれるわけでもありません。

助けてくれるのは、まさかのあの人たち。

しかも、あまんじゃくへの仕打ちが中々ひどい。

あまんじゃくとうりこひめのやり取りを見ていると、もう少し大目に見てやっても・・・と思えるほど。

この世界では桃太郎などいなくても大丈夫かもしれません。

この最後まで「桃太郎と反対だ!」と思える、徹底して対になっている展開と結末も、この絵本のおもしろいところです。

二言まとめ

「もしも桃太郎が女の子だったら・・・?」そんなことを思わせる、桃太郎と正反対の展開と結末がおもしろい。

けれど、うりこひめのたくさましさや芯の強さには、桃太郎に通じる魅力を感じさせる昔話です。

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