作:島田ゆか 出版:文溪堂
ガラゴの売るかばんはとっても不思議。
そのお客さんのためにあるような、ピッタリのかばんを売ってくれるのです。
それはもう、かばんの域を超えているかも・・・。
あらすじ
ガラゴはかばんを売って歩く、かばん屋です。
ある日、森の中を歩いていると、子犬がしっぽに噛みついてきました。
このお客さんは、一人っ子だから兄弟が欲しいと言うのです。
ガラゴは兄弟は持っていないので、ガラゴのかばんから、イヌの形のかばんを取り出しました。
イヌのカバンの中には、さらにイヌのカバンが入っていて、全部取り出すと3匹に。
子犬はお礼にクレヨンをくれ、嬉しそうにイヌのカバンと一緒に帰っていきました。
ガラゴはもらったクレヨンで、かばん屋の看板を書き直し始めました。
すると、大きなネコがガラゴのしっぽを踏みました。
そのネコは、ライオンらしく見えるカバンが欲しいと言います。
ネコだと思っていたのは、毛の薄いライオンでした。
ガラゴはカバンから、たてがみのカバンを取り出しました。
たてがみのカバンを、ライオンの顔につけ、目の輪郭をクレヨンで書き足せば・・・。
すっかりライオンらしくなりました。
ライオンはお礼に大きなスイカを置いて、勢いよく走って行きました。
ガラゴが、もらったスイカをお昼ごはんに食べると、お腹がいっぱいでなんだか眠くなってきます。
そこでカバンをベッドにして、少し昼寝をすることにしました。
しばらくすると、耳がむずむずして目が覚めました。
カエルが耳に水を入れていたのです。
そのカエルは、子どもたちを連れて歩けるカバンが欲しいとガラコを起こしたのでした。
ガラゴはピアノの形のカバンを取り出すと、オタマジャクシと水をカバンに入れました。
そのカバンは、オタマジャクシが泳ぐと、綺麗な音楽を奏でます。
カエルは満足して、袋いっぱいのドーナツをガラゴに渡し、帰っていきました。
ガラゴの手元には、ドーナツと一緒に、ガラゴを気に入ってしまった一匹のおたまじゃくしが・・・。
ガラゴはオタマジャクシのために水を汲みに行きました。
その時、地面が揺れ大きな地震が・・・と、思ったらなんとお客さんでした。
次はどんなお客さんがきたのでしょう?
『かばんうりのガラゴ』の素敵なところ
- どんどん出てくる不思議で楽しいカバンたち
- 着の身着のまま、のんびりとしたスローライフ
- 見れば見るほど発見がある描き込まれたページ
どんどん出てくる不思議で楽しいカバンたち
このこの絵本の楽しいところは、次々にガラゴのカバンから出てくる、不思議なカバンたちでしょう。
そのほとんどは、他の客さんには需要がなさそうな、オーダーメイド感抜群なものばかり。
まるで、その客さんのためだけにあるようなカバンです。
特にたてがみのカバンなんて、毛の薄いライオン以外欲しがる人はいないでしょう。
でも、そんなお客さんにぴったり過ぎるカバンが、いくらでも出てくるのが、ガラゴのかばん屋の魅力です。
しかも、そのカバンたちには、魔法のような機能までついているからさらに不思議でおもしろい。
イヌのカバンは、まるで生きているかのように自分で動き、子犬と一緒に遊んだり、帰る時にも自分で歩いて帰ります。
ピアノのカバンは、水槽に鍵盤と譜面がマジックで描かれただけのように見えるのに、譜面をオタマジャクシが通ると音が出ます。
こんな風に、その見た目からは想像できないような、不思議な機能がついているのです。
この、「本当にかばんなのかな」と思わせてくれるような、かばんに求められる以上の満足度を与えてくれるのも、ガラゴのかばん屋さんのおもしろくて、不思議で、素敵なところです。
着の身着のまま、のんびりとしたスローライフ
また、出てくるかばんと同じくらい魅力的なのが、着の身着のままなガラゴの暮らしぶり。
かばんの代金は物々交換で、その都度なにがもらえるかはわかりません。
でも、なにをもらってもガラゴはそれに合わせ、したいことをしていきます。
クレヨンをもらえば、かばん屋の看板の文字が薄れていたことを思い出し書き直す。
スイカをもらえば、その日のお昼ごはんとしてさっそく食べる。
しかも、クレヨンはライオンのメイクにも使うし、実をくりぬいて食べたスイカの皮は、オタマジャクシを入れる水槽に使ったりと、しっかり使い尽くします。
お腹いっぱいになったら昼寝をするし、お客さんが来たらかばんを売るし・・・。
その時に起こったことを楽しみ、その結果もらったものでさらに楽しみという姿は、まさにあるものを心行くまで楽しむ、まさにスローライフといった雰囲気。
子どもたちも、ワクワクと盛り上がりつつも、
「かばんでお昼寝気持ちよさそう~」
「森でお茶会楽しそうだな~」
と、のんびりした雰囲気も気に入っているみたい。
この、ゆったりとした時間の流れや、お客さんやもったものとのやりとりも、この絵本のとても大きな魅力の一つです。
見れば見るほど発見がある描き込まれたページ
ですが、この絵本の魅力は、物語と雰囲気だけでは終わりません。
ページをじっくりと見る楽しさもあるのです。
ページの中には、小物や背景など色々なところが緻密に描き込まれ、小ネタもたくさん仕込まれています。
子犬がしっぽを噛んだ時には、こっそりアオムシが絆創膏を貼ってくれていたり、
木にカブトムシがひっそりとくっついていたり、
ガラゴのカバンのベッドに、バムの写真が飾られていたり、
妖精のような生き物が、スイカのへたを巡り、アオムシと攻防を繰り広げていたり・・・。
そのページだけのネタから、ページをまたいで言葉のないストーリーが展開されているものまで様々。
読み込めば読み込むほど発見が増えていくのです。
きっと何か発見があるたびに、前後のページにもいたかを確認したくなるでしょう。
そして、別の発見に気付く。
そんなループが自然に起こるのも、この絵本のとても楽しくて素敵なところです。
『バムとケロ』シリーズと共通のキャラクターもたくさんいるので、両方読めば「あ!ケロちゃんだ!」とさらに楽しめるのでおすすめです。
二言まとめ
お客さんにぴったり過ぎる、魔法のようなかばんたちが不思議でおもしろい。
ワクワクしつつも、ガラゴのゆったりとした暮らしに、のんびり癒される絵本です。
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