作・絵:間瀬なおかた 出版:ひさかたチャイルド
忍者学校に通う4人の忍者。
ある日、たぬき城に来るよう手紙が届いた。
しかし、城には言葉を使ったたくさんの罠が・・・。
あらすじ
たぬき城がそびえる山の麓に、忍者学校がありました。
その学校に、いちじゅうまる、にじゅうまる、さんじゅうまる、はなまるという、学校に入ったばかりの忍者がいます。
4人は、たぬき城の宝を守るため、毎日忍術の勉強をしているのでした。
そんなある日、4人がおしゃべりをしていると、たぬき城の殿様から手紙が届きました。
その手紙には「だれにも見つからずに宝の部屋まで来たら、宝を見せてやる」と書いてあります。
4人はさっそくたぬき城へ向かうことにしました。
忍者学校から、たぬき城の門まではまるで迷路のような道になっています。
4人はなんとか迷路を抜け、たぬき城の門へと辿り着いたのでした。
門をくぐるとお堀があって、不思議な橋がかかっています。
くもの巣のような形の橋には、踊り場にひらがなが一文字書いてあります。
スタート地点には「たぬきばしをわたれ」という看板が。
さっそく、細かいことは気にせずに、にじゅうまるが「ぬ」という踊り場に向かい橋を渡ると、なんと橋が落ちにじゅうまるはお堀にまっさかさま。
それを見たいちじゅうまるが閃きました。
あの看板は「た」「ぬ」「き」「ば」「し」「を」の順番に橋を渡れということだったのです。
こうして無事橋を渡り切った3人。
にじゅうまるも引き上げ先に進みました。
すると、またお堀があり、今度は橋がありません。
仕方なく、水の上を歩ける「みずすましの術」でお堀の中を歩いて進むと、高い石垣がそびえたっていました。
その石垣には石の一つ一つに、色々な絵が描いてあります。
いちじゅうまるがさっそく登っていくと、「みかん」の石を掴んだとたん、石が飛び出して弾き飛ばされてしまいました。
さんじゅうまるはそれを見て、しりとりだと気付きました。
「ん」がつかないように、しりとりで石を登っていきます。
こうして、またしてもお城の罠を抜けた3人。
弾き飛ばされたいちじゅうまるも引き上げて、いよいよお城の目の前へやってきました。
4人がお城へ入ろうとすると、門が二つあります。
それぞれの門には「たけのこやけた」「たけやぶやけた」という違う文章が書いてありました。
さらに門の前には「上から読んでも下から読んでも、同じ言葉の門に入れ」と看板が立っています。
4人はこの関門を潜り抜けることができるのでしょうか?
そして、宝の部屋に辿り着くことができるのでしょうか?
『にんじゃはなまる~たぬきじょうのたからのへやのまき』の素敵なところ
- 絵本に散りばめられたたくさんの頭を使った遊び
- はなまるたちと最上階を目指すワクワク感と一体感
- 最後まで謎解きを忘れない予想外で素敵な宝
絵本に散りばめられたたくさんの頭を使った遊び
この絵本の楽しいところは、たくさんの謎を解いていく遊びが詰っていることでしょう。
迷路に始まり、文字をなぞっていく遊びや、しりとり、回文など、文字や言葉を中心とした頭を使う遊びが盛りだくさん。
どれも、年中、年長組くらいにぴったりな難易度で、しっかりと考えさせられます。
このほどよい難しさと、解けた時のスッキリ感がなんとも心地よいのです。
特に最後の謎解きなどは、ぱっと見ただけで飛びつくと騙される難問。
これまで余裕で解いていた子どもたちも、見事に引っかかり、
「あ、こっちだ!」
「えー!そういうこと!?」
「騙された!」
と、しっかり罠にかかっていました。
看板の指令をそのまま受け取らず、別の意味を考える必要があるこの絵本。
言葉の裏や、他のヒントとの関連性を考える、一段深い思考と謎解きをしっかりと味わえるのが、この絵本のとてもおもしろいところです。
はなまるたちと最上階を目指すワクワク感と一体感
こんな風に、とてもおもしろい謎解きですが、物語のおもしろさが謎解きに負けていないのもこの絵本の素敵なところ。
まだまだ半人前の忍者たちが力を合わせて、城の最上階を目指すというのは、王道のワクワク感を味わえます。
「どんなお城なんだろう?」
「宝ってなんだろう?」
という忍者たちが持つワクワク感と、子どもたちのワクワク感がリンクするのです。
そこに、一緒に謎を解くことが加わって、まさに一緒に宝の部屋を目指している感覚になります。
気分はまさに5人目の忍者。
ワクワクしないはずがありません。
特に、お話を盛り上げてくれるのが、ところどころで出てくる忍者要素。
水の上を「みずすましの術」で歩いたり、兵隊から「かくれんぼの術」で隠れたりと、忍者お馴染みの忍術が出てきます。
これにより、しっかりと忍者感も味わえ、「ぼくこれできるよ!」という子が出てくるくらい、世界観に没入できるのです。
この謎解きのおもしろさに負けない物語のおもしろさも、この絵本のとても大きな魅力です。
最後まで謎解きを忘れない予想外で素敵な宝
さて、そんな物語の結末は、予想外のものでした。
ここまで、4人の忍者も子どもたちも、光り輝く金銀財宝を想像してここまで登ってきたことでしょう。
けれど、その想像は大きく裏切られます。
4人が想像していたのとはまったく別の宝がそこには待っていたのです。
この宝が本当に素敵。
最初は忍者学校の生活に文句を言ったりもしていた4人の忍者は、この宝を見ることで大きな成長を遂げることになります。
忍者学校で学んでいることの意味や大切さ。
そんなことに立ち返れる宝がそこにはあるのです。
そして、さらにおもしろいことは、この宝の部屋の秘密には、物語の序盤で伏線が張られていたこと。
たぬき城からの手紙に、実は結末への伏線が張られていたのです。
まさか、この最後の場面に最後の謎解きが隠されていたとは・・・。
これには忍者たちも、子どもたちも、読んでいる大人もびっくり。
この最後まで謎解きを忘れないおもしろさと、予想外だけれど、とても素敵な宝が待っているのも、この絵本のとても魅力的なところです。
二言まとめ
ワクワクする物語と、頭を使った謎解きの、両方が互いのおもしろさを引き出している。
最後の最後に最大級の謎解きが隠されていたことに、大人も子どもも驚かされる、言葉遊び絵本です。
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