作:種村有希子 出版:ほるぷ出版
みんな心の中でしゃっべってる。
色んなことを思ってる。
そんなひとりごとってどんな色?
あらすじ
夏に落ち葉を踏んだ女の子。
あることに気が付いた。
「発見!夏の落ち葉って柔らかいんだ~」と黄緑色のひとりごと。
公園で遊んでいる女の子。
歯がずっとグラグラしている・・・。
「あ!ないない!歯が抜けた!」と赤いひとりごと。
保育園のお誕生日会で、みんなでケーキを食べる女の子。
こぼしてしまったケーキを、床に払い落としたら、他の子に見つかってしまった。
「どうしよう、どうしよう、見つかっちゃった」とオレンジ色のひとりごと。
家で留守番をしている女の子。
台所にあるレタスにアリがたかっているのを見つけ驚いた。
とっさに庭に投げ捨てたけれど・・・。
「あー、これ絶対怒られる・・・」と紫色のひとりごと。
次の子にも、その次の子にも、それぞれいろんな色のなひとりごとがあるみたい。
『カラフルなひとりごと』の素敵なところ
- ひとりごとを色で表すおもしろさ
- さり気なく次の子へと繋がっていくバトンタッチ
- 自分のひとりごとも色で表現したくなる
ひとりごとを色で表すおもしろさ
この絵本のなによりおもしろいところは、色々なひとりごとが色で表現されていることでしょう。
それぞれの子が、それぞれの場面で考えている心の声。
それに色を付けると、どんな気持ちなのかがとてもわかりやすくなります。
子どもたちも、
「びっくりした赤かな?」
「血の味がするから赤なんじゃない?」
「涼しいと水色だよね~」
と、その色の気持ちを考えたり、共感したりと、色になっているからこそ、その子の気持ちをさらに一歩踏み込んで考えている様でした。
また、気持ちを言葉以外で表す方法に気付かせてくれるのも、素敵なところ。
言葉や文字だけでなく、色でも表せるし、音でも表せると、表現方法の多様性に、さり気なく気付かせてくれるのです。
さり気なく次の子へと繋がっていくバトンタッチ
1人の子がそんなひとりごとを言った後、この絵本では、他の子へと移り変わっていきます。
その時の、バトンタッチがさり気なく繋がっているのも、この絵本のおもしろいところです。
落ち葉を発見する子がクローズアップされ、ひとりごとを言うと、画面は遠景へと移ります。
その遠景では、落ち葉をお母さんに見せる女の子の姿と同時に、隣の公園で次に出てくる女の子が遊んでいます。
今度は公園で遊んでいる子がクローズアップされ・・・。
と、どんどん次の子へと繋がっていくのです。
これのおもしろいところは、ひとりごとのその後になっているところ。
歯が抜けた子なら、周りの友だちに知らせ、友だちが見に来たり、拍手してもらっている様子が描かれ、
ケーキを落としていたのが見つかった子は、遊びの時間になった後も、一人いすに座りしょんぼりしている。
というように、次の子へバトンタッチするだけでなく、物語に深みを与えてくれているのです。
きっと、その後の場面では別のひとりごとが、心の中にあるでしょう。
この絵を見ながら、新たなひとりごとを考えてみるのも、この絵本のおもしろい遊びです。
自分のひとりごとも色で表現したくなる
さて、そんな風に、色々な子のひとりごとと色を見ていた、新たな気持ちの表現方法を知ったなら、試したくなるのが子どもです。
「遊んでるときは〈楽しい~♪〉の黄色!」
「泣いてるときは青い気持ちかも」
「ケンカしてるときは〈このやろー!〉の赤!」
など、自分が普段、どんなひとりごとを言っているか考え、それに色を付け始めます。
普段はひとりごとなんて意識していませんが、改めて考えてみると、色々なひとりごとを言っていることに気付く子どもたち。
布団に入る時の気持ちよさ。
なにかを食べた時の美味しさ。
など、実は多くのひとりごとを言っているのです。
そんなことに気付き、考えさせ、そこに色をつけていく楽しさを味あわせてくれるのは、この絵本ならではのものだと思います。
色々な子のひとりごとと色を見る中で、自分のひとりごとにも気付き、どんな色かを考えるきっかけをくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
色々な子が日頃考えているひとりごとを見て、それに色付けすることで、様々な気持ちと触れ合える。
他の子のひとりごとを通して、自分のひとりごとやその色も見えるようになる絵本です。
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