文・絵:フェリドゥン・オラル 訳:広松由希子 出版:復刊ドットコム
まだ飛ぶことができない子どものフクロウがいました。
このフクロウは、飛べるようになると、羽が赤くなるのです。
そんなフクロウに、初めてできた友だちのお話です。
あらすじ
遠い国の大きな森に、赤い羽根をしたフクロウの夫婦が住んでいました。
夜になると、近くの農家に飛んでいき、子どものために食べ物をとってきていました。
ある風の強い晩。
その子どもフクロウが、木の上の巣穴から出てきました。
まだヨチヨチ歩きで、飛ぶこともできません。
羽も先が少し赤いくらいです。
飛べないフクロウは、「友だちがいたら一緒に遊べるのに」と思っていました。
そんなことを思いながら、木の枝に座っていると、後ろから物音が。
振り返ると、そこにいたのは一匹の小さなネズミでした。
ネズミは、フクロウが悲しそうな顔をしている理由を聞きました。
フクロウは、友だちがいないことと、まだ飛べないことをネズミに話します。
それを聞いたネズミは、フクロウの友だちになってくれたのでした。
そればかりか、飛べるようにしてくれるとも言ってくれました。
ネズミはどうにかして、友だちを飛ばせてあげたいと思いました。
そこで農家に行き、赤いケシの花をたくさん集めてきたのです。
その花をフクロウの羽にくっつけました。
けれど、羽を広げると、花びらは風に飛ばされてしまったのでした。
ネズミはめげずに、果物畑に走りました。
果物畑からリンゴの皮をたくさん持って来たネズミは、フクロウの羽に巻きつけます。
しかし、フクロウが羽ばたくと、やはりリンゴの皮もすっかり落ちてしまうのでした。
それでもネズミは諦めません。
農家に走り、今度は赤い毛糸を持ってきました。
ネズミはフクロウに毛糸を巻き付け始めます。
と、その時、フクロウが大きなくしゃみを一つ。
そのくしゃみでフクロウは足を滑らせ、宙づりに。
毛糸が絡まったフクロウは、毛糸をほどこうと羽をばたつかせてもがきます。
何度も羽を羽ばたかせるフクロウ。
そのうちに、フクロウの羽はだんだんと赤く・・・。
どうしても取れない毛糸を、ネズミが噛み切ったその時、小さなフクロウは・・・。
『あかいはねのふくろう』の素敵なところ
- 飛べるようになるためのかわいい発想
- 飛ぶために必要だったこと
- 飛べるようになった後の、素敵なその後
飛べるようになるためのかわいい発想
この絵本の大きな見どころは、子ども同士で飛べるようになる方法を探していくところでしょう。
ネズミがいい方法を思いつき、それを一緒に試します。
でも、そのどれもが子どもらしく、かわいい発想の方法ばかり。
羽が赤くなれば飛べると思っている2人は、赤くする方法を考えます。
赤い花を体につける。
リンゴの皮を巻き付ける。
毛糸を体に巻く。
どれも羽はきれいに赤くなりますが、もちろん飛べるようにはなりません。
この2人の一生懸命な姿がとても微笑ましいのです。
特に、ネズミの失敗しても明るく励まし、次のアイディアを考えてくれる姿を見ていると、次は成功してほしいと心から応援したくなります。
この積み重ねがあるからこそ、飛べるようになった時に「よかったね!」と2人に言いたくなるのでしょう。
小さなネズミと小さなフクロウの、かわいく微笑ましく、一生懸命な姿と、優しい関係性がこの絵本の心温まるところです。
飛ぶために必要だったこと
こうして色々試した2人ですが、中々飛べるようにはなりません。
それもそのはず。
飾るだけで、飛ぶための力はつきません。
残念ながら、色を変えるだけで飛べるようになる魔法はないのです。
この、飛べるようになった方法が、ファンタジーではなく、現実的なのもこの絵本の素敵なところの一つです。
毛糸で宙づりになったフクロウは、もがくうちにたくさん羽を動かします。
たくさん動かしたことで筋力がつき、羽の動かし方もうまくなり、羽の発達にともなって羽が赤くなっていく。
こうして毛糸が切れた時、本当に飛べるようになっていました。
この結果を見ていると、飛べるようになるための近道はないことと、反復して努力する大切さが強く伝わってきます。
同時に、一緒に目標を目指してくれる友だちの大切さも。
ネズミがいなければ、宙づりになることがなかっただけでなく、きっとネズミがいなかったら空を飛ぶための行動に一歩踏み出すこともなかったように思うのです。
ネズミがいたからこそ、宙づりになった時、必死に羽をはばたかせる強い気持ちに繋がったのだと。
友だちとの関係の中で、不可抗力ではありながらも、飛ぶための地道な努力の結果飛べるようになるというところも、この絵本のとても素敵なところです。
飛べるようになった後の、素敵なその後
さて、こうして飛べるようになったフクロウですが、ここで「めでたしめでたし」にはなりません。
その後のお話が少しだけ続くのです。
飛べるようになり、大人になっていくフクロウと、ネズミのその後のお話です。
これがなんとも心温まり、本当によかったと思えるものになっています。
友だちになったばかりの2人が成し遂げた、小さいフクロウを飛べるようにするという目標。
その目標達成後、2人はどんな関係性になっていくのか?
そんな歴史が描かれます。
この、飛べるまでのエピソードで終わらず、その後の長い歴史まで描くことで、2人は親友なのだなということを再確認させてくれる結末も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
小さなフクロウとネズミが、飛ぶために一生懸命考え、試していく姿がかわいくて微笑ましい。
物語の最初から最後まで、2人の友情の強さと温かさを感じさせてくれる絵本です。
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