クリスマスのまえのばん(4歳~)

絵本

作:ターシャ・テューダー 詩:クレメント・ムア 訳:中村妙子 出版:偕成社

クリスマスの前の晩

みんなが寝静まった頃

鈴の音とともにやってくるのは・・・

あらすじ

クリスマスの前の晩。

暖炉の前には靴下が吊るしてある。

ベッドでは子どもたちがすやすや眠る。

父さんと母さんも、ろうそく吹き消し、眠りにつく。

・・・と、真夜中に父さんが目を覚ました。

外からカタカタ音がするのだ。

父さんが、そっとベッドを抜け出して、窓を開けて外を見る。

外は月明かりが白い雪をてらしてとても明るい。

そんな月明かりの下を、飛んでくるものがある。

8頭のトナカイが引く小さなソリだ。

御者は小柄なおじいさん。

サンタだ。

サンタがトナカイに掛け声をかけると、ソリはたちまち屋根の上。

屋根の上から、蹄の音が聞こえた後に、煙突でごそごそ・・・。

ドシン!と落ちてきたのはサンタクロース。

暖炉の中から飛び出してきた。

その姿は、小さな小人。

袋の中からおもちゃを出して、次々と並べだす。

パイプをふかし、動物たちとダンスを踊る。

それを見ていた父さんも、思わずクスクス笑い出す。

そんな父さんに片目をつぶり、おどけた顔でうなずくと、

サンタクロースは、おもちゃを靴下に詰めていく。

詰め終わると「ないしょないしょ」と合図して、あっという間に煙突へ。

屋根に登ったサンタクロースは、あっという間にソリを出し、夜空を遠ざかっていく。

「みなさんクリスマスおめでとう!」の声を残して。

『クリスマスのまえのばん』の素敵なところ

  • クリスマスイブが詰め込まれた静かで楽しく美しい詩
  • 詩の世界が目の前に広がる静かで楽しく美しい絵
  • かわいく愉快な小人のサンタクロース

クリスマスイブが詰め込まれた静かで楽しく美しい詩

この絵本のとても魅力的なところは、クリスマスの気持ちを思いきり盛り上げてくれる詩にあるでしょう。

「クリスマスの前の晩 ネズミたちまでひっそりと 静まり返った家の中」

「やあ 驚いた 八頭のトナカイが 小さなソリを引っ張って 遠い空からやってくる 手綱さばきも鮮やかな 御者は小柄なおじいさん」

といったような、気持ちのいいリズム感で、物語が紡がれていきます。

その中でも、子どもたちをワクワクさせてくれるのが、段々と賑やかに、楽し気に盛り上がっていく空気感。

始めは寝静まった家の中、とてもひっそりとした空気感で始まるこの絵本。

ですが、サンタクロースが近づくにつれ、雰囲気は段々と賑やかに。

ついにサンタクロースが家の中に飛び込んでくると、そこはもうクリスマスパーティのようです。

詩の内容も、

「笑い出しそうな口 真っ白なヒゲ しきりに吹かすパイプから 細い煙が輪を作る まあるい顔をくしゃくしゃにして 笑うたんびにぷるんぷるん 突き出たお腹がよく動く ほんとに愉快な小人のおじいさん」

とすっかり静けさなど吹き飛んでしまっています。

最初は寝る前のように小声だった子どもたちも、

「サンタさん小さくてかわいい!」

「ぷるんぷるんだって!」

「おもちゃたくさんあるよ!」

とクリスマスムード全開になっていました。

特に最後の「クリスマスおめでとう!」の一言は、クリスマスイブに聞いたら、ワクワクせずにはいられません。

楽しみだったクリスマスが来たことを、さらに実感させられ、楽しみが止まらなくなることでしょう。

このクリスマスへの期待がどんどん膨らむ、心地よく美しく楽しい詩がこの絵本のとても素敵なところです。

詩の世界が目の前に広がる静かで楽しく美しい絵

けれど、言葉だけではこの詩のすばらしさを、小さな子どもたちにまで伝えきることはできなかったでしょう。

この詩を彩る、楽しく美しい絵もまた、この絵本のとても素敵なところなのです。

最初は詩と同じように、とても静かな空気感から始まります。

明かりの消えた家の中、暗がりに立つツリーや、寝息を立てる動物に子どもたち。

もう賑やかなクリスマスパーティーの時間は過去のものといった空気感が漂っています。

まさにろうそくの火が吹き消されたような。

けれど、本当のクリスマスはこれからでした。

月明かりが照らす、美しい雪景色の中を飛んでくるサンタクロース。

そこは家の中よりも明るい、白い世界です。

そして、煙突から家の中へ入ってくると、そこは暖炉の火が燃える、温かなオレンジ色。

動物たちも目を覚まし、サンタクロースを歓迎します。

人間は寝ているけれど、サンタクロースの周りは、クリスマスパーティーの真っ最中といった、明るく賑やかな空気に変わります。

おもちゃを広げ、動物たちとダンスをし、パイプをふかして笑うサンタクロース。

この雰囲気が楽しくないはずありません。

詩の、静けさから楽しく賑やかな雰囲気への変化と一緒に、絵の方も、暗闇から雪景色の白、家の中のオレンジ色と色合いが変化して、ページの中の賑やかさも比例して上がっていく。

この見事に詩と絵がリンクしたクリスマスのイブの情景が、子どもたちのクリスマスが楽しみな気持ちを盛り上げてくれるのです。

かわいく愉快な小人のサンタクロース

さて、そんなクリスマスイブをそのまま形にしたようなこの絵本。

その中で、一つだけ子どもたちの持つイメージと違う所があります。

それが、サンタクロースが小人だということ。

きっと多くの子がサンタクロースは、大柄で太っちょのおじいさんというイメージではないでしょうか?

その中で、この絵本では小さなソリを引く、小人のサンタクロースです。

イヌが立ち上がってダンスをすると、サンタクロースの背丈とちょうど同じくらい。

動物との対比からも、その小ささがよくわかります。

これには子どもたちも、

「サンタさんって小人なの?」

「ちっちゃいサンタさんもいるんだ」

「プレゼント持てるのかな?」

など、驚きの声が上がっていました。

けれど、よく考えると、煙突を通り暖炉から出てくるにはちょうどいいサイズかもしれません。

それに、妖精なので小さくてもおかしくないような気がしてきます。

そんなことを子どもたちと話していると、サンタクロースについて思いもしなかった興味がわいてきたりするのです。

こうしてサンタクロースについて色々考えたり、各国でのサンタクロースの伝承を調べてみるきっかけになるのも、この絵本のおもしろいところです。

自分の家に来ているのは、どんなサンタクロースなのでしょう?

二言まとめ

クリスマスイブを詰め込んだような、美しく楽しい詩と絵によって、クリスマスがますます待ち遠しく、楽しみになる。

小人のサンタクロースによる、自分の家にはどんなサンタクロースが来るのか気になってしまうクリスマス絵本です。

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