作・絵:ワダアスカ 出版:文芸社
変な子、へんてこな子と言われ続けたら自信を無くしてしまうでしょう。
何者にもなれない自分に自己嫌悪するかもしれません。
でも、もしそれを乗り越えて、自分にしかできないことを見つけたら、
伝説の生き物にだってなれるかもしれません。
あらすじ
昔々あるところにとってもヘンナコがいました。
シカのような角
ラクダのような顔
ヘビのような体
トラのような足
羽もないのに空を飛び、雨を降らせることが出来るのです。
その姿を見て、シカもラクダもヘビもトラも言うのです。
「そんな半端じゃ、立派なシカにもラクダにもヘビにもトラにもなれないね」と。
ヘンナコはしょんぼりして言いました。
「ぼくもいつか立派な何かの動物になれるのかな」と。
そんなヘンナコの小さな楽しみは水がなくて困っている花の上に雨を降らせて、花が喜んで咲く姿を見ることでした。
ある日、一匹のコウモリが飛んできて、水を求めながら地面に落ちました。
ヘンナコはコウモリの上に雨を降らせました。
元気になったコウモリはヘンナコにお礼を言いました。
ヘンナコは初めて言われたお礼にくすぐったい気持ちになりました。
コウモリは自分たちの国は日照り続きなので助けて欲しいと言いました。
ヘンナコは困ってしまいました。
ぼくみたいな半端ものが誰かの役に立てるのかと。
しかしコウモリは、なんで何かにならなくちゃいけないのか。
あなたはシカでも、ラクダでも、ヘビでも、トラでもないでしょう?
と言いました。
それを聞いたヘンナコは「そうか」と納得しました。
そして、そんなことを言ってくれたコウモリのために、やってみようと思いました。
大きく息を吸い込み、それに向かって思い切り吼えました。
ヘンナコはコウモリの国を救うことは出来るのでしょうか。
ヘンナコの正体とは。
『あのこヘンナコ』の素敵なところ
- 自分のままでいいという勇気をくれる
- 独特のタッチで描かれる絵の迫力がすごい
- あえて語られない正体
なにかになろうとして、なににもなれなくて自信をなくしているヘンナコ。
そういう人はたくさんいるのではないでしょうか。
実はすごい力や特技があるけど、それに気づかないまま他の人のようになろうとする。
でも、自分らしさを自覚し取り戻した時、自分では気づいていなかったとてつもない力を出すことが出来る。
そんな自分では気づいていない自分に気付くきっかけや、自分らしさを出す勇気をくれる。
そんな絵本です。
それを後押ししてくれるのが、独特なタッチで描かれる、迫力があり力強い絵です。
最初は弱弱しいヘンナコ。
でも、やると決めた後は別人かと思うほどの迫力と力強さで描かれ、その姿はまさに伝説の生き物。
その力に息をのみ、心が躍ることでしょう。
そして、その正体をあえて語らないところも素敵なところ。
見ているみんなはわかっているけれど、あえて語らないことで、ヘンナコのまま物語を終わります。
それはまるで、伝説の生き物だったとしても、枠にはまらずヘンナコはヘンナコのままでいいと言う、作者のメッセージのように感じます。
自分は自分らしく力を発揮すればいいという、優しく力強い勇気をくれる絵本です。
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