バナナじけん(3歳~)

絵本

作:高畠那生 出版:BL出版

自分が偶然とった行動が、何かの事件に繋がっているかもしれません。

このお話はそんな偶然が重なり起きた悲劇(?)な事件のお話です。

あなたももしかしたら、偶然事件を起こしているかもしれません。

あらすじ

バナナの運搬車からバナナが一つ落ちました。

そこへサルがやってきて、そのバナナを食べ、皮は道に捨てました。

次にウサギがやってきて、サルが捨てたバナナの皮で転びました。

その後、ワニがやってきて、バナナの皮を拾って背中に乗せました。

ここで一つ問題がありました。

なんと落ちたバナナは一つではなかったのです。

落ちるたび、サルが食べ、ウサギが転び、ワニが背中に乗せました。

運転手が気付いたのはコンテナが空っぽになった後でした。

この事件、解決することは出来るのでしょうか。

『バナナじけん』の素敵なところ

  • シュールで笑える発想力とそれにベストマッチした絵
  • 子どもを巻き込み発展する事件
  • 予想外の平和(?)な事件解決

この絵本の一番素敵なところは、その柔軟すぎる発想力から生まれた物語と、それを120%面白くする絵でしょう。

サルがバナナを食べる。

ウサギが転ぶまではお約束です。

でも、ここでワニを出してくるのがさすがとしかいいようがありません。

これにより、事件がよくわからなくなってきます。

この展開だけでなく、それをさらに面白くしているのは独特の絵と構図です。

サルがビジネスバッグを持っていたり、ワニは無表情でただ皮を集めていたり、ウサギは転び過ぎて表情が死んでいるなど、地味にシュールさを入れてきます。

それがこのシュールな事件とベストマッチしているのです。

シュールさだけでなく、その計算された構図も笑いに繋がっています。

サルやウサギやワニがどうするか考える間を作り、次のページでその行動がわかる構成。

それをしっかり見せた後、どんどんバナナが落ちてくる場面では、見開きのページを3列に区切り、たくさん落ちてくるバナナをどんどんサルが食べ、ウサギが転び・・・とテンポよく進んでいく構図を取っているのです。

最初は「ウサギさん痛そう・・・」などと言っていた子やクスクス笑っていた子も、ウサギが次々転ぶ場面では大笑いに変わります。

構成や構図だけでなく、その文章も計算されています。

サルやウサギやワニが来る場面では「どうすると思う?」という一文があります。

サルとウサギは予想通り。

でも、ワニはまさかの背中に乗せる。

ここで「えー!?」「なんで!?」と一気に事件に引き込まれてしまうのです。

そんな大笑いの事件も解決を迎えます。

バナナはもうないのになぜか平和な解決を迎えます。

始まり~終わりまで本当に独特でシュールだけれど、笑いの約束された絵本です。

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