作:高畠那生 出版:BL出版
自分が偶然とった行動が、何かの事件に繋がっているかもしれません。
このお話はそんな偶然が重なり起きた悲劇(?)な事件のお話です。
あなたももしかしたら、偶然事件を起こしているかもしれません。
あらすじ
バナナの運搬車からバナナが一つ落ちました。
そこへサルがやってきて、そのバナナを食べ、皮は道に捨てました。
次にウサギがやってきて、サルが捨てたバナナの皮で転びました。
その後、ワニがやってきて、バナナの皮を拾って背中に乗せました。
ここで一つ問題がありました。
なんと落ちたバナナは一つではなかったのです。
落ちるたび、サルが食べ、ウサギが転び、ワニが背中に乗せました。
運転手が気付いたのはコンテナが空っぽになった後でした。
この事件、解決することは出来るのでしょうか。
『バナナじけん』の素敵なところ
- シュールで笑える発想力とそれにベストマッチした絵
- 子どもを巻き込み発展する事件
- 予想外の平和(?)な事件解決
この絵本の一番素敵なところは、その柔軟すぎる発想力から生まれた物語と、それを120%面白くする絵でしょう。
サルがバナナを食べる。
ウサギが転ぶまではお約束です。
でも、ここでワニを出してくるのがさすがとしかいいようがありません。
これにより、事件がよくわからなくなってきます。
この展開だけでなく、それをさらに面白くしているのは独特の絵と構図です。
サルがビジネスバッグを持っていたり、ワニは無表情でただ皮を集めていたり、ウサギは転び過ぎて表情が死んでいるなど、地味にシュールさを入れてきます。
それがこのシュールな事件とベストマッチしているのです。
シュールさだけでなく、その計算された構図も笑いに繋がっています。
サルやウサギやワニがどうするか考える間を作り、次のページでその行動がわかる構成。
それをしっかり見せた後、どんどんバナナが落ちてくる場面では、見開きのページを3列に区切り、たくさん落ちてくるバナナをどんどんサルが食べ、ウサギが転び・・・とテンポよく進んでいく構図を取っているのです。
最初は「ウサギさん痛そう・・・」などと言っていた子やクスクス笑っていた子も、ウサギが次々転ぶ場面では大笑いに変わります。
構成や構図だけでなく、その文章も計算されています。
サルやウサギやワニが来る場面では「どうすると思う?」という一文があります。
サルとウサギは予想通り。
でも、ワニはまさかの背中に乗せる。
ここで「えー!?」「なんで!?」と一気に事件に引き込まれてしまうのです。
そんな大笑いの事件も解決を迎えます。
バナナはもうないのになぜか平和な解決を迎えます。
始まり~終わりまで本当に独特でシュールだけれど、笑いの約束された絵本です。
コメント