【絵本】あ~っ!(4歳~)

絵本

作:カンタン・グレバン 出版:講談社

落ちていたボールを投げただけなのに・・・。

戻ってきた犬のリードがベビーカーにひっかかり、それがさらに・・・。

あ~!街が大惨事に!

あらすじ

※この絵本には文字がありません。

イヌを連れ、アイスを食べている女の子。

落ちているボールを見つけたので、投げてあげるとイヌがボールを追いかけた。

嬉しそうにボールをくわえて戻ってきたイヌ。

けれど、イヌが引っ張ってきたものを見て女の子は唖然とした。

なぜなら・・・。

イヌのリードがベビーカーに絡まり、

ベビーカーを押していたお母さんの足が、郵便屋さんの自転車の前輪に引っかかり、

自転車の後輪が凧に引っかかり、

凧の糸がペンキ屋さんの脚立に引っかかり、

脚立が洗濯ひもに引っかかり、

洗濯ひもがバスタブを引っ張り、

バスタブがネコのしっぽを踏み、

ネコがイスにしがみつき、

イスの足がバケツに引っかかり、

バケツにマフラーが絡まり、

マフラーをしているおじさんが引っ張られ、ピアノと本棚を掴んだが、

本棚の足がアイスクリーム屋のタイヤに引っかかり、

落ちたアイスを食べようと、サーカスのゾウが鼻を伸ばし・・・。

と、イヌの後ろが大惨事になっていたから。

でも、ゾウの後ろでも、まだまだ大惨事は続いているのですが・・・。

『あ~っ!』の素敵なところ

  • 想像もつかないバタフライエフェクトのおもしろさ
  • 何が起こっているのかを想像する楽しさ
  • おかわりを予感させる最後

想像もつかないバタフライエフェクトのおもしろさ

この絵本を一言で表すならば、まさにバタフライエフェクト。

そのおもしろさが詰った絵本です。

ただ落ちていたボールを投げただけなのに、その影響が連鎖してとんでもないことになっていく。

この規模感の拡大が本当におもしろい。

最初は予想がつく規模感で、「あ~あ」くらいのものですが、どんどん繋がりを辿り、最後の方になってくるともはや「どうしてそうなった!?」というレベルへと拡大していきます。

子どもたちも、ページをめくるたび、

「えー!?」

「大変なことになってるよ!」

と、大騒ぎ。

ページが進むほど、そのボルテージもあがってきます。

特に最後のページでは、もう笑うしかありません。

しかもそれがたった一つの行動から生まれたものなのですからなおさらです。

この小さな行動が、大きな出来事へと徐々に繋がっていくという、バタフライエフェクトのおもしろさを「ボールを投げる」という、とても身近な行動から味わえるのが、この絵本のとても楽しいところです。

何が起こっているのかを想像する楽しさ

もう一つ、この絵本にはおもしろいところがあります。

それは文章がないところです。

文章がないので、子どもたちはなにが起こっているのか想像するしかありません。

これがなんともおもしろい。

繋がりを見て、

「ひもがベビーカーに絡まって、それを持ってるお母さんの足がタイヤに引っかかって・・・」

と繋がりを辿りつつ、声を合わせて言葉にしていったり、

登場人物の表情に注目して、

「キャー!ペンキで汚れちゃう!って言ってる!」

「アイス食べたーい!って鼻を伸ばしてるんじゃない」

など、気持ちを推測したり・・・。

文章がないことで、子どもたちの絵を見る集中力や、物語への想像力に繋がり、様々な楽しみ方をする姿がみられます。

これが躍動感とドキドキ感溢れるこの絵本の絵と組み合わさり、見ていくのが本当に楽しいのです。

「次はなにに繋がってるんだろう?」

「どんなことが起こっているんだろう?」

と、ワクワクします。

この文章がないことで、想像がどんどん膨らみ、バタフライエフェクトの中で、それぞれの物語ができあがっていくのも、この絵本のとても楽しいところです。

おかわりを予感させる最後

さて、こうして大変なことになり、恐れおののく女の子。

でも、イヌは後ろで起こっていることなど気にも留めていません。

だって、ボールをとってきただけなのですから。

なんなら、「もう一回投げて」といった表情。

そして、この絵本の最後の場面。

どこからかボールが飛んできて、イヌがそれに飛びつき終わります。

普通ならなにも思わないところでしょうが、ここまでのバタフライエフェクトを見てきた子どもたちは違います。

「あ~っ!」

っと、次のバタフライエフェクトを想像してしまうのです。

この、とても自然な子どもたちのタイトル回収には笑ってしまいました。

本当に当然のように「あ~っ!」と言ってしまうのですから。

「次はどんなことが起こるんだろ?」

そんな想像が膨らみます。

ボールが緑であることや、女の子が今度はリードを握っていることなど、すべてが想像の材料です。

「今度は女の子が引っかかっちゃうんじゃない?」

「緑だから木が生えてくるのかも!」

などなど、口々に想像の物語を語り合い、この絵本は終わります。

この、ただボールが飛んできただけなのに、これだけ想像が広がって行くのも、この絵本のおもしろいところ。

バタフライエフェクトのおもしろさを知り、次のバタフライエフェクトを自分で考える。

自然とそんな流れができる、この絵本の終わり方も、とても素敵なところです。

二言まとめ

小さな行動が、知らないうちに大きな影響を及ぼしているという、バタフライエフェクトのおもしろさが目一杯詰まっている。

どんどん大きくなっていく影響の規模感に、ドキドキワクワク、笑いと驚きが止まらない絵本です。

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