文:ドリュー・デイウォルト 訳:中川ひろたか 出版:WAVE出版
なくしてしまったクレヨン。
そのクレヨンたちは大変なことに・・・。
ある日、そんなクレヨンたちから手紙が届きました。
あらすじ
ある日、ダンカンの元へたくさんの手紙が届きました。
それはクレヨンたちからの手紙でした。
えびちゃクレヨンからの手紙
わしを使ったのは、かさぶたを書いたたったの一度きり。
わしはそれきりずっと、ソファの隙間で暮らしていた。
そんなある日、お前のパパがわしの上に座り、体はまっぷたつ。クリップで体を繋げどうにか生きながらえているが、早く部屋に帰りたい。
まめみどりクレヨンからの手紙
この世に豆が好きな子なんて誰もいない。
ましてや豆緑色が好きな子なんて絶対いない。
だから、ぼくはこの名前をやめにして、世界中を旅することにした。
まめみどりクレヨン改め、スーパーストロングマン。
ネオンレッドクレヨンからの手紙
家族一緒に過ごしたあの夏休み、楽しかったわね。
でも、帰る時に、あなたは私を、プールサイドに落っことしたの。
あれからもう8か月。
待ちきれないから、歩いて帰ることにしたわ。
きいろ&だいだいいろクレヨンからの手紙
あなたが私たちを道路に忘れるから、太陽の熱に溶けてくっついちゃった。
太陽の色が黄色か橙色かでケンカしていたけど、太陽の色は黄色でも橙色でもなかったの。
ケンカなんかしてバカみたいだった。
早くお家に帰りたいよう。
まだまだクレヨンたちからの手紙は続きます・・・。
一体何本なくしたのでしょう?
みんな帰って来られるのでしょうか?
『かえってきたクレヨン』の素敵なところ
- なくしたクレヨンたちの気持ちが痛いほどに伝わってくる
- いいアクセントになる続き物の手紙
- 帰ってきたクレヨンたちへのプレゼント
なくしたクレヨンたちの気持ちが痛いほどに伝わってくる
この絵本の素敵なところは、なくされたクレヨンたちの気持ちがダイレクトに伝わってくることでしょう。
なんたって、本人が手紙を書いてよこしているのですから。
ダンカンとの思い出。
忘れられた悲しみ。
その後の苦労。
すべてが文面からはっきりと伝わってきます。
この訴えを聞いていると、ものすごく申し訳ない気持ちになってきます。
自分はクレヨンをなくしても、痛くもかゆくもなく忘れているだけ。
でも、クレヨンたちには生死がかかっているのです。
この必死さや怒り、寂しさが痛いほどに伝わってくるのが、この絵本のすごいところです。
しかも、それぞれの手紙の内容が個性的なのに、その末路がかなりあるあるなのも、聞いている方にダメージを与えます。
ソファの隙間に落っことして、家族が座り折れる。
出先で忘れてくる。
ほったらかしにして、イヌが食べてしまう。
どれも身に覚えがありそうなものばかり。
だからこそ、妙なリアリティがあり、子どもの心に突き刺さるのだと思います。
もちろん、大人の心にも・・・。
いいアクセントになる続き物の手紙
そんなクレヨンたちからの大量の手紙ですが、個性的と言えども、全部読むのは大変です。
そんな中、いいアクセントになってくれているのが、まめみどりクレヨンとネオンレッドクレヨンからの手紙です。
この2人だけは、他と違い続きものになっています。
まめみどりクレヨンは、自分から名前を変え旅に出る物語。
ネオンレッドクレヨンはプールサイドから、各所を経て、家に帰ってくるまでの道のり。
これらが、色んなクレヨンからの手紙の間に差し込まれます。
この効果は非常に大きく感じます。
登場人物のとても多いこの絵本。
毎回新キャラクターからの手紙を聞くことになるので、0からたくさんの情報を読み取らなけらなければいけません。
これがひたすら続くと、おもしろいのですが疲れてきます。
そこで出てくるのが、この続きものの手紙。
もうどんな人物か知っているし、どういう状況かも知っているので、肩の力を抜いて見られるのです。
特にまめみどりクレヨンはギャグ要素強めなので、みんなの肩の力を抜いてくれます。
子どもたちも、
「また~?」
「さっきも出てきたじゃん!」
「今度こそお家出れるかな?」
と喜んだり、話の続きが気になったり。
最後まで飽きずに疲れずに見る、いいアクセントになってくれていました。
帰ってきたクレヨンたちへのプレゼント
さて、こうして自分で帰ってくるもの、ダンカンに拾ってもらうものなど様々なパターンで、ダンカンの家へ帰ってきたクレヨンたち。
しかし、一つ問題が起こりました。
溶けていたり、割れていたりで、元の箱に入らないのです。
そこでダンカンはとても素敵なアイディアを考えました。
これがこの絵本のとても素敵なところです。
それぞれのクレヨンたちの状況をしっかりと踏まえ、さらに楽しく過ごせる工夫も忘れない。
そんな素敵なアイディアです。
見れば見るほど、色々な気遣いや工夫が感じられ、発見もたくさんあるこの場面。
子どもたちも、
「あれ黄色と橙色クレヨンのためじゃない?」
「ぼくはあそこがいい!」
「あれ、あのクレヨンはどこ?」
など、色々な発見を楽しんだり、自分もクレヨンの仲間入りをしたりと、とても嬉しそう。
クレヨンたちの嬉しい気持ちが伝わってきている様でした。
この色々あったけれど、みんな幸せそうに終わる結末も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
なくしてしまったクレヨンたちからの手紙で、なくされたクレヨンの苦悩が痛いほどに伝わってくる。
ダンカンの姿と手紙を見て、自分もクレヨンを大切にしようと思える絵本です。
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