このすしなあに(3歳~)

絵本

作:塚本やすし 出版:ポプラ社

寿司屋に並ぶたくさんのネタ。

では、そのネタの、元の姿はどれくらい知っていますか?

この絵本で、寿司ネタの元の姿を見てみましょう。

あらすじ

ある日、寿司屋にやってくると、大将が寿司を握ってくれます。

最初に出てきたのはマグロ。

朝から晩まで、寝ている時もずっと泳いでいる魚です。

次の寿司はイカ。

墨を吐いて敵から逃げます。

お次はウニ。

トゲトゲの身体で身を守ります。

さらにはかっぱ巻き。

河童の好きなキュウリが巻いてあります。

今度はたまごの握り。

ニワトリから生まれる卵です。

さて、次は・・・?

『このすしなあに』の素敵なところ

  • 盛り上がるクイズ形式
  • 生き生きと描かれたネタたちの元の姿
  • お寿司にはたくさんの命が詰っていることに気付かせてくれる

盛り上がるクイズ形式

この絵本のとてもおもしろいところは、寿司ネタがクイズ形式で出てくるところでしょう。

最初に大将が「この寿司なあに」と握った寿司を見せてきます。

そして、ページをめくるとネタになる前の生きた姿とともに、正解が描かれています。

この、クイズ形式の作りが、まず盛り上がるのです。

中には、ウニなど少し難しいものもあり、頭を悩ます子も。

すぐにわかるものと、意外と知らなそうなもののバランスもよく、「この寿司なあに」の声掛けに、みんな口々に答えを言う。

この盛り上がりや一体感は、クイズ形式ならではのものだと思います。

生き生きと描かれたネタたちの元の姿

また、答えに出てくる、ネタたちの生きた姿が、本当に生き生きと描かれているのも、この絵本のとても素敵なところ。

マグロの力強く泳ぐ姿。

さんさんと太陽の光を浴びて育ったのが感じられる瑞々しいキュウリ。

切り身とは似つかない大きく立派なイカ。

など、どれも強い生命力を感じるものばかりです。

さらに、ネタの形と、生きている時の姿がまったくの別物なのがおもしろく、名前は知っていても実物は知らないものもけっこうあるみたい。

ウニのトゲトゲを知っていても、食べている場所はその中身ということは知らなかったり、

そもそもネタは食べたことがあっても、それが何かわかっていなかったり。

そんな子たちが、自分が食べているものを知るきっかけになるとともに、寿司になる前は力強く生きていたという、命の息吹も感じさせてくれる。

そんな生き生きとした寿司ネタたちの姿も、この絵本のとても素敵なところなのです。

お寿司にはたくさんの命が詰っていることに気付かせてくれる

さて、こうして色々な寿司ネタを見てきましたが、それを踏まえた大将の最後の言葉も、この絵本のとても素敵で、大切なことに気付かせてくれるところです。

それは、寿司には海の幸だけではなく、川や山、畑や動物など、たくさんの命が詰っていること、また、その命をいただいているということです。

寿司と聞くと、海の幸というイメージが強いですが、この絵本を見ると、陸地のものもたくさんあることに気付きます。

同時に、野菜や卵も生き生きとした命だということも・・・。

忙しい中だと、食べているものの命の形や、それをいただいていることを忘れてしまうことがあります。

子どもの中には、それが元々生きた命だと知らない子もいるでしょう。

そんな時、この絵本は元の生き生きとした命の姿をこれでもかと見せて、命の輝きとその大切さに気付かせてくれるのです。

大人も子どもも、命をいただいているということを、忘れないようにしていきたいと改めて思わせてくれるのも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

寿司ネタクイズを通して、そのネタが生きていた頃の姿を、力強く描き出し見せてくれる。

自分が食べているものが、力強く生きていて命であるということに気付かせ、思い出させてくれる絵本です。

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