文と絵:ほりかわりまこ 出版:復刊ドットコム
クマの子が工作でシチューを作ります。
好きなものが全部入ったシチュー。
そこへママが買い物から帰ってきて・・・。
あらすじ
子グマのクマちゃんが部屋でお絵描きを始めました。
ママが買い物に出かけるので、クマちゃんを誘いますが、クマちゃんはお絵描きをしたいから留守番することに。
クマちゃんはリンゴを食べたくなり、紙にクレヨンで大きなリンゴを描きました。
次に大きなニンジンを。
さらに大きなブロッコリーを。
大好きな魚も生き生きと描きます。
食べ物だけじゃなく、黄色い車も描きました。
絵を描き終わると、クマちゃんはハサミを取り出し、リンゴの絵を切り出します。
クルクル渦巻状に切っていくと、まるで本当のリンゴの皮をむいたみたいに切れました。
クマちゃんは他の絵も切っていきます。
魚はぶつ切り、ニンジンは乱切り、ブロッコリーは小間切りで、車は細い千切りです。
切った具材を全部大きな鍋にいれ、クマちゃんはシチューを作ります。
けれど、シチューを混ぜていると、どこからか風が・・・。
クマちゃんのシチューは風に飛ばされ、部屋に散らばってしまいました。
ママが買い物から帰ってきて、ドアを開けたからでした。
クマちゃんがママにシチューが飛んでしまったことを伝えると、なんと今夜のメニューもシチューです。
ママはシチューを作り、クマちゃんは自分のシチューを拾い集めて・・・。
『ぼくのシチュー、ままのシチュー』の素敵なところ
- 気の向くままに絵を描ける幸せな時間
- 描いたもので作る美味しいシチュー
- ぼくとママとの幸せな偶然
気の向くままに絵を描ける幸せな時間
この絵本のとても素敵なところは、好きなものを好きなように描ける幸せな時間でしょう。
時間を気にせず、温かな部屋の中で、1人じっくりと絵に向き合える時間。
日頃の生活だとありそうで、中々ない時間だと思います。
だからこそ、そんなクマちゃんの時間がとても幸せなものに感じられるのでしょう。
自分の食べたいもの、好きなものを自由にどんどん描いていくクマちゃん。
その色使いは繊細で、本物そっくりに描かれます。
それを見た子どもたちは、
「クマちゃん、絵が上手だね!」
「美味しそう!」
「次はニンジンだ!」
と、クマちゃんと絵を描いているかのように楽しそう。
この幸せな時間を共有しているのが伝わってきました。
クマちゃんの姿を通して、好きなことを好きなように思う存分できる幸せな時間を味わえるのが、この絵本のとても素敵なところです。
描いたもので作る美味しいシチュー
でも、クマちゃんは絵を描くだけで終わりません。
その絵を、ハサミで切って工作を始めるのです。
最初は気まぐれで切ってみたリンゴ。
これが、途切れずに皮をむいた時の様な形になり、まるで料理をしているみたい。
きっとこれで料理心の火がついたのでしょう。
他の絵も、まるで料理のように、ぶつ切り、乱切り、小間切り、千切りと、絵に合わせた切り方で切っていきます。
その様子はまるで料理人。
もう絵描きではありません。
こうして切った絵を混ぜて作るシチュー。
それはリンゴも車も入った、大好きなもの全部入りの夢のようなシチュー。
クマちゃんにしか作れないシチューでした。
この、お絵描きから始まり発展していく、遊びの自由さもこの絵本の素敵なところ。
この絵本を見ていると、絵を描いて終わりにしていたのがもったいなくなってくるのです。
子どもたちにも、新たな遊びの発想を閃かせてくれることでしょう。
ぼくとママとの幸せな偶然
さて、クマちゃんのシチューができた頃、お母さんが帰ってきます。
なんと、今日の夜ご飯もシチュー。
クマちゃんの工作と、偶然にも同じメニューです。
みなさんも、こんな偶然を体験したことがあるのではないでしょうか?
ちょうど友だちと話題にしていた献立が夕食に出てくる。
自分の食べたものと、大好きな相手が食べたものが同じ。
工作をしていたものと、同じ夕食が出てくる。
そんな偶然が起きた時、ものすごく嬉しい、なんだか満たされた気持ちがこみ上げてきます。
この幸せな偶然が、クマちゃんにも起こるのです。
そして、ママのシチューと、クマちゃんのシチューが一緒に並ぶ食卓。
きっと、この日食べるシチューは、特別な満足感に満たされていたことでしょう。
この心が通じ合ったような、温かい偶然の幸せさを感じられるのも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
自分の好きなことを好きなように、思う存分できる幸せさをクマちゃんと一緒に味わえる。
自分も、描いたものを切ったり作ったりして、さらに遊んでみたくなる絵本です。
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