【絵本】オニたいじ(4歳~)

絵本

作:森絵都 絵:竹内通雅 出版:金の星社

もし豆まきの豆が賢かったら?

今年の豆は、豆まきの鬼役は本当の鬼ではないと考えました。

そして、本当の鬼のところへ飛んでいくことに・・・。

あらすじ

節分の日。

稲川神社で豆まきが行われていました。

たくさんの観衆の中、神主さんが豆をまきます。

監修の後ろにいる鬼めがけて、豆が飛んでいくと、鬼は慌てて逃げ出します。

・・・と、ここまでは去年と一緒でしたが、今年は少し違いました。

投げられた豆たちが、よくものを考える豆だったのです。

一番目に飛び出した豆は、神社の鬼を見て、鬼のふりをしているだけで、いつもは普通の優しいおじさんだと考えました。

そして、世界にいる本物の悪い鬼を退治しようと、町へと飛び出したのです。

ちょうどその頃、3丁目の末吉さんの家に自転車泥棒が来ていました。

今まさに自転車を盗もうとしているところです。

それを見つけた豆は、自転車泥棒へすごい速さで飛んでいき、おでこにぶつかりました。

自転車泥棒はあまりの痛さに、自転車を諦め逃げていったのでした。

二番目に飛び出した豆たちは、鬼のふりしたおじさんも、家に帰れば家族がいることでしょうと考えました。

そこで、本物の鬼を退治するため町へ飛び出すと、ちょうど銀行強盗をしている2人組を見つけました。

さっそく、銀行強盗めがけて一目散に飛んでいき、鼻の穴に飛び込みました。

銀行強盗は、鼻が痛いのと苦しいので、病院へ走っていったのでした。

三番目に飛び出した豆たちは、もっと遠くへ飛んでいくことにしました。

やってきたのはアフリカ大陸。

サイを襲おうとしている密猟者の3人組を発見した豆たちは、まっしぐらに飛んでいきます。

そうして見事、髪の毛の生え際に命中。

密猟者のカツラがとれ、風に飛ばされてしまいました。

密猟者は自分のカツラを追いかけて、どこかへ行ってしまったのでした。

さあ、他の豆たちも負けてはいられません。

本物の鬼を探し、たくさんの豆たちが飛び出したのは、なんと宇宙。

こんなところにも鬼はいるのでしょうか?

『オニたいじ』の素敵なところ

  • 鬼の形をしていない本当の鬼たち
  • 大爆笑な鬼の撃退法
  • 最後の舞台はまさかの宇宙

鬼の形をしていない本当の鬼たち

この絵本のとても素敵なところは、本当の鬼を退治してしまうところでしょう。

豆まきで鬼が登場すると子どもたちは泣きますが、よく考えてみると、現実の世界で人々を泣かすのは鬼ではありません。

鬼の心を持った人間たちです。

そんな人間こそがまさに本物の鬼と言えるでしょう。

と、同時に、目に見えない心に住む鬼の存在にも気付かされます。

悪いことをしていると、その人は鬼になってしまうのです。

それに気付くと、豆まきの意味合いもいつもより深いものになってきます。

病気や不幸な鬼と一緒に、心の中の悪い鬼も追い出すのです。

もしかしたら、心の中に悪い鬼が住み着きそうになった時、この絵本を思い出す子もいるかもしれません。

この、いつもと違う節分を通して、鬼についてより深く考え、いつもの節分をもより深いものにしてくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。

大爆笑な鬼の撃退法

こんな風に紹介すると、堅苦しい絵本だと思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。

むしろ、笑いが止まらない楽しい絵本になっています。

特に鬼退治をするところは大爆笑必至です。

豆がおでこにデコピンのように当たって痛がったり、鼻の穴につまったり、カツラが脱げてしまったりと、まさにギャグマンガのような展開の鬼退治。

鬼たちの情けない表情と相まって、子どもたちは大爆笑。

やっていることはかなり悪いけれど、この情けない姿を見ていると、なんとも憎めない気持ちになってきます。

この笑える鬼退治により、ドキドキしながらも、常に笑いが絶えず平和な空気感が続くのも、この絵本のとても素敵でおもしろいところです。

最後の舞台はまさかの宇宙

さて、そんな物語の最後の鬼がいる所。

それはまさかの宇宙でした。

確かに段々とスケールは大きくなっていたのです。

町の中へ飛んでいっていたのが、3つ目の豆は海を越えアフリカまで行っていたのですから。

ただ、さすがに宇宙まで飛んでくるのは予想外。

こんなところに鬼がいるかと思いきや、ちゃんと鬼がいたのです。

しかも、これまでとは規模が違います。

地球そのものへ悪いことをしようとしていたのですから。

もう豆ではどうにもならなそうな相手です。

豆もこれまでとは違い苦戦します。

子どもたちも、

「さすがに豆じゃ無理じゃない・・・?」

「ガラスは壊せないよ」

と、あきらめムード。

でも、そこでやってくれるのがこの豆と絵本のおもしろいところなのです。

そして、「もしかしたら自分のまいた豆も、賢い豆だったかもしれない」と、思わせてくれるところも。

強大な鬼にも負けない豆の活躍を通して、自分の豆もどこかで鬼を退治しているかもしれないと思えたり、いつもより遠くに豆を投げたくなるのも、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

節分に投げた豆が、大爆笑な方法で、現実世界の鬼を退治するのがおもしろすぎる。

見れば、より節分がおもしろくなり、豆のことが好きになる絵本です。

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