【絵本】ドングリ・ドングラ(4歳~)

絵本

作:コマヤスカン 出版:くもん出版

海の向こうの島で噴火がありました。

それを見たドングリたちは、一斉に移動を始めます。

ドングリたちの壮大な旅が今始まります。

あらすじ

ある夜のこと。

海の向こうの島で、火山が噴火しました。

それを確認したドングリのトチノミたろうは、森に住むドングリや松ぼっくりたちに掛け声をかけます。

噴火した島が、ドングリたちを待っているので、みんなで島へ向かおうと言うのです。

するとみな、歌を歌いながらトチノミたろうについてきました。

ドングリたちの長い旅が始まったのです。

山を越えてどんどん進んでいくと、他の森からもドングリたちが集まってきました。

ドングリたちの数は増え、歌声はますます大きくなっていきます。

けれど、その歌声に呼び寄せられたのは、ドングリだけではありません。

リスが現れたのです。

捕まっては大変と、ドングリたちは葉っぱの剣や小枝の槍で応戦します。

何人か犠牲は出ましたが、リスを追い払うことに成功したドングリたちはまた歩き出したのでした。

ドングリたちが旅を続けるうちに冬が来ました。

辺りは一面雪に埋もれ、寒さで歌声も震えます。

やっとのことで雪山を越えると、ドングリたちはもうヘトヘト。

ですが、気付けば季節はすっかり春。

広い草原にはたくさんの花が咲いています。

ドングリたちは、ここで一休みすることにしました。

一休みしていると、何人かのドングリたちがトチノミたろうのもとにやってきました。

なんと気が緩んでしまい、芽を出してしまったのです。

芽が出てしまってはもう先には進めません。

仕方なく、芽が出たドングリたちはこの草原に残していくことになりました。

再びドングリたちが歩き出すと、そこは果てしない砂の丘です。

のどがカラカラになりながらも、砂の丘を越えていきます。

こうしてついに海へと辿り着いたドングリたち。

流木やプラスチック容器、瓶など、それぞれ船を見つけて乗り込みます。

しかし、沖に出たとたん、海が荒れ始め大嵐に。

荒れ狂う波の中、ドングリたちは、無事に噴火のあった島へと辿り着けるのでしょうか・・・?

『ドングリ・ドングラ』の素敵なところ

  • ドングリたちならではの壮大な旅と合言葉
  • 見ているだけで楽しい、描き込まれた個性豊かなドングリたち
  • 自然の力強さをひしひしと感じる最後の場面

ドングリたちならではの壮大な旅と合言葉

この絵本のまず楽しいところは、ドングリたちの壮大な旅にドキドキワクワクさせられるところでしょう。

火山の噴火を確認し、旅に出るドングリたち。

その目的は不明です。

「なんであんなに危ないところに行くんだろう?」と、目的がとても気になってしまいます。

目的がわからないまま、進んでいくドングリたちの行列。

でも、その道のりはとても困難なものでした。

秋にはエサを集めているリスたちに襲われます。

冬には雪山を滑落者を出しながらも乗り越えていきます。

春には芽が出てしまうこともあり、

夏にはカラカラの砂の丘を干からびそうになりながら歩くのです。

ドングリならではの災難が降りかかる険しい道のりですが、犠牲を出しながらも歩みが止まることはありません。

そんな困難を乗り越えるため、ドングリたちにはある合言葉があります。

それが「ドングリ~、ドングラ~」。

困難な時も、嬉しい時も、この合言葉が聞こえてきます。

寒い時には「フォンフリ、フォンフラ」になったり、

熱い時には声も枯れ消え入りそうになったりしすが・・・。

次第に子どもたちにも、この合言葉が移り、気付けばドングリたちの仲間入り。

合言葉を言いながら、一緒に旅に出ています。

このハラハラドキドキの困難な旅を、合言葉を言いながらドングリと一緒に歩んでいけるところが、この絵本のとてもおもしろく素敵なところです。

見ているだけで楽しい、描き込まれた個性豊かなドングリたち

また、この旅をさらにおもしろくしてくれているものがあります。

それが、細かく描き込まれたドングリたちの姿や自然の風景です。

まず、この絵本には表紙のように、大量のドングリが全ページに描かれています。

なんと、そのドングリ一人ひとり、服装が違うのです。

さらには、ただ行列を作っているだけでなく、虫取りをしていたり、カードで遊んでいたり、おじいちゃんがいたりと、それぞれが生きた動きをしています。

それはまるで『ウォーリーを探せ』のウォーリー以外の人物たちを見ているかのよう。

言葉はないのに、そのドングリたちがなにをやっているのかや、グループごとにどんな話をしているのか想像できてしまうのです。

背景も同じで、雪山には動物の足跡が続いていたり、

草原には、春の花たちが咲き誇っていたり、

砂の丘にはアリがいたり、空き瓶などが転がっていたり。

見れば見るほど、描かれたものやその動きに色々な発見があるのです。

子どもたちも、

「リスに捕まってる!」

「イノシシの足跡かな?」

「アリがドングリを食べようとしてる!」

などなど、発見するたび、嬉しそうに教えてくれます。

このとても細かな描きこみにより、ページの中に発見が尽きないのも、この絵本の大きな魅力の一つです。

自然の力強さをひしひしと感じる最後の場面

さて、そんな旅の終着点はもちろん噴火のあった島です。

その島に辿り着いた最後の場面で、ついに旅の目的が明かされます。

その目的が、なんとも自然の力強さを感じるものであることも、この絵本のとても素敵なところです。

この最後の場面を見ていると、自然が循環していることが強く伝わってくるのです。

同時に、当たり前のように身近にある草木にもそのルーツがあり、あるのが当たり前ではないことも、このドングリたちの姿から思い浮かんできたりもします。

草木が芽吹くということはどういうことなのか?

そんなことをドングリたちの困難な旅を通して伝えてくれる。

それも、この絵本のとても素敵なところです。

ぜひ目的を果たしたドングリたちの、心をじーんとさせる最後の姿を見てみてください。

きっと、草木のことがもっと愛おしく思えてくると思います。

二言まとめ

「ドングリ~、ドングラ~」の掛け声とともに、ドングリたちと季節を巡る旅をする。

見れば、「草木が芽吹くってすごいことだな」と、改めて感じさせてくれる絵本です。

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