作・絵:間瀬なおかた 出版:学研教育みらい
ある日、幼稚園でお絵描きをしていると、外に虹色の電車が停まりました。
それはなんと、子どもが描いた絵そっくりな電車。
子どもたちが乗り込むと、虹色電車は発車します!
あらすじ
雨降りのある日。
幼稚園ではお絵かきの時間です。
みんなで絵を描いていると、なぜか外から電車の音が聞こえます。
テラスに出て見ると、虹色の電車が停まっていました。
その電車は、じろうくんが描いた電車にそっくり。
じろうくんは大喜びで、電車に飛び乗ってしまいました。
それを見た他の子も、次々と電車に飛び乗ります。
みんなを止めようと、先生も中に入りますが、電車のドアは閉まり、みんなを乗せて発車してしまいました。
電車は空を走って行きます。
下に見えるのは、かのちゃんの家。
お父さんとお母さん、イヌのポチが手を振っています。
電車はそのまま、花畑のトンネルに入っていきました。
トンネルの向こうにいる魚を見て、けんたくんが「きっと大きなサメもいるよ」と叫びました。
トンネルを抜けると海の中。
本当に大きなサメや魚たちが泳いでいます。
電車は魚たちの間をくぐり、岩のトンネルへと入っていきました。
トンネルの向こうに見えた島を見て、りおなちゃんが「イルカやクジラがいるはずよ」と嬉しそうに言いました。
トンネルを抜けると、今度は南の島。
りおなちゃんの言った通り、イルカやクジラも泳いでいます。
イルカに追いかけられながら、電車は雲のトンネルへと入っていきました。
トンネルに入ると、りょうへいくんが向こうに見える宇宙船を見つけました。
トンネルを抜けるとそこは宇宙。
色々な宇宙船が飛んでいます。
星の間を通り、宇宙に開いた穴を通ると、見えてきたのはみんなの幼稚園。
どうやら戻ってきたみたいです。
子どもたちはみんな満足そう。
でも、ちえちゃんだけは寂しそうな表情をしています。
一体なにがあったのでしょう?
『にじいろでんしゃはっしゃしまーす』の素敵なところ
- 描いた絵が現実になる夢のような物語
- ページが繋がり続ける楽しい仕掛け
- ちえちゃんが笑顔になる、見惚れてしまうような最後の場面
描いた絵が現実になる夢のような物語
この絵本のなにより魅力的なところは、自分の描いた絵が現実なってしまうところでしょう。
虹色の電車の絵を描いていたら、本当に幼稚園のテラスにその電車がやってくる。
こんなの跳び上がって喜ばないはずがありません。
しかも、その電車に乗って旅できるというのだから、ワクワクも止まりません。
さらには、電車の絵だけじゃなく、他の子の絵も現実になります。
そう、この電車が走って行くところは、子どもたちがそれぞれに描いた絵の世界なのです。
だから、トンネルの先を見て、その絵を描いた子はなにがいるかわかっています。
トンネルを抜けたら、まさに自分が描いた世界が本物になって広がっている。
こんなに夢のようなことはないでしょう。
子どもたちは、その世界の魅力に浸りつつも、
「私の絵も、本当になったらいいな~」
と呟きます。
本当にそう思います。
絵本の中で電車が旅する世界はもちろん魅力的です。
色々なものが細かく描き込まれた世界に、
「マグロもいるよ!」
「海で子どもが遊んでる!」
「あ、宇宙人もいるじゃん!」
と、その世界に入り込みながら、様々な発見を楽しみます。
ですが、それ以上に、自分の描いた絵が本当になるという、夢のような世界観を楽しめ、自分の絵でもそんなことが起こることを空想できるのが、この絵本のなによりの魅力なのかもしれません。
ページが繋がり続ける楽しい仕掛け
そんな電車の旅には、一つの仕掛けが施されています。
それが、トンネル部分に穴が空いているということ。
トンネルに入ると、虹色の空間が広がります。
そして、トンネルの入り口になっていた穴は、電車の後方へ移動。
その穴からは前の世界で手を振っている誰かが見えます。
反対に、前方に空いた穴からは、次の世界の何かが見え、未来、現在、過去が繋がり続ける作りになっているのです。
純粋に、次の世界には何が待っているのかワクワクする楽しみや、前の世界の誰がトンネルから見えるのかといった楽しみはもちろんあります。
子どもたちも、
「あ、カエルが手を振ってる!」
「なんか島が見えるよ!」
など、この仕掛けにとても盛り上がります。
ですが、この仕掛けでなによりすごいと思うのが、電車の旅が最初から最後まで繋がっている感なのです。
電車に乗った後のすべてのページは、トンネルを通して繋がっています。
一つとして独立したページはありません。
常にトンネル越しに次のページ・前のページと繋がっているのです。
これが、ずっと電車に乗って旅している感覚を、見事に演出してくれます。
ページめくりだけではどうしても実現しない連続性が、この仕掛けにはあるのです。
そして、この感覚が走り続け、車窓の景色が変わっていく電車の性質と見事にマッチしていて、電車に乗っている感覚に繋がります。
この仕掛けによって、本当に虹色電車に乗って旅している夢のような感覚を味わえるのも、この絵本のとても素敵なところです。
ちえちゃんが笑顔になる、見惚れてしまうような最後の場面
さて、夢のような電車の旅ですが、1人残念そうにしている子がいます。
1人だけ、虹色電車の夢のような世界を味わえなかったのです。
でも、幼稚園が見えてきて、電車の旅は終わりに向かって進んでいます。
そんなちえちゃんが、最後の最後に笑顔になれる結末も、この絵本のとても素敵なところです。
ちえちゃんを笑顔にしたのはある光景。
この光景がまた夢のように、美しいのです。
しかも、ただ絵を現実にしただけじゃなく、ある楽しいおまけつき。
このおまけが、なんとも夢があり絵になっているのです。
その光景に、ちえちゃんだけでなく、見ている子はみんなうっとりしてしまうことでしょう。
この最後の最後に待っている、大きすぎるサプライズも、この絵本のとても美しく素敵なところです。
二言まとめ
自分の描いた絵が本物になって、その世界を電車で旅できるというみんなの夢が詰っている。
楽しい仕掛けとサプライズで、さらに電車の旅と物語を堪能できる絵本です。
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