文:ローレル・スナイダー 絵:チャック・グルーンインク 訳:木坂涼 出版:BL出版
ある朝、ライオンになっていたら。
記憶は人間だけど、食べるものはライオンになっていたら。
あなたは理性を保ってられるでしょうか。
そんなライオンになってしまった男の子のお話です。
あらすじ
火曜日の朝。
ジムが目を覚ますとライオンになっていました。
お母さんが台所から「パンケーキが出来たわよ」と呼びますが、ライオンになったジムが食べたいのは生の肉です。
そして、台所に降りると、お母さんを食べてしまいました。
ジムは後悔しました。
でも、お腹はもっと食べたがっています。
そのまま街に出たジムは街の人をどんどん食べてしまいました。
食べるたびに後悔するジムですが、それとは反対にお腹はもっと食べたいと言いました。
ジムは走って森に逃げ込みました。
そこで一人考えていると、背後からお腹のなる大きな音が聞こえました。
振り向くとそこにはクマがいました。
クマに襲われそうになった時、「食われるなんてまっぴらごめんだ」とお腹がうなりました。
その時なんとジムも同じことを叫んだのです。
その時は嫌な気持ちがしませんでした。
そしてクマを食べてしまいました。
すると突然、ジムのお腹は何も言わなくなりました。
ジムは飲み込んだ人を次々ともどして家に帰っていきました。
家に帰るとお母さんを吐き出し、部屋に戻るとクマを吐き出しました。
ジムは段々元の姿に戻っていきました。
ところが吐き出したクマがジムを食べようとしています。
人間に戻ったジムは一体どうするのでしょうか。
『ジムのおなかがなりました』の素敵なところ
- 理性と本能の葛藤がリアル
- ジムの表情がとても豊かで、その心情を丁寧に表現している
- その葛藤を乗り越えた先を見せてくれる
理性と本能と言う対比で、自分の嫌なところと向き合う様子が表現されています。
嫌だと思っているけれど、やってしまう。
そして後悔するけれどどうにもならない。
おそらく、そういう部分が誰しもあると思います。
そんな時のジムの表情が本当に丁寧に描かれていて、後悔していることや、自分自身に腹を立てていることが直感的に伝わってきます。
そんなジムのターニングポイントはクマとの出会いでした。
危機に直面した時、自分の嫌なところを認めたジムは葛藤を乗り越えクマを返り討ちにしました。
そんなジムが人間に戻ってまた危機に直面した時にどうするのかも見どころです。
自分との向き合い方を、ライオンになってしまうという切り口で描いた絵本です。
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