作:スコット・キャンベル 訳:せなあいこ 出版:評論社
男の子は無敵のだっこロボ!
なんでもだっこできるんです。
だっこされた人はみんなほんわか幸せ気分。
あらすじ
男の子は無敵のだっこロボ。
だっこが得意なロボなんです。
だっこされた人はみんなメロメロ。
まずはお母さんに、お父さん、お姉ちゃんのだっこロボの家族から。
次に街へ出て、警察官におばあちゃん、サラリーマン、小さい女の子、おばさん、ミュージシャンもだっこ。
消火栓やベンチやポストや、公園の木にも。
クマさんも、だっこでほんわか。
かめさんも、だっこで生き生き。
泣いている赤ちゃんだって、抱っこで笑顔。
そんなだっこロボを見て、ヤマアラシが声をかけてきた。
トゲトゲだから誰もだっこしてくれないと。
すると、だっこロボは防具をつけてトゲが刺さらないようにしてだっこ。
クジラも声をかけてきた。
大きすぎてだっこは無理だと。
すると、だっこロボはクジラの背中をすべり台のように滑りながらだっこした。
だっこロボはエネルギー源のピザでエネルギーを補充すると、また街へ出かけていく。
次々と町中の人をだっこ。
でも、さすがにだっこロボもだっこしすぎてへとへと。
そんな時は・・・。
『だっこロボ!』の素敵なところ
- だっこしてあげる優しい心地よさ
- なんでもだっこできる無敵のだっこロボ
- だっこエネルギーを使い切った後は・・・
だっこしてあげる優しい心地よさ
この絵本のなにより素敵なところは、だっこをする心地よさが味わえることでしょう。
いつもはだっこされる側の子どもたち。
でも、この絵本ではだっこする側です。
お父さんも、お母さんも、お姉ちゃんも大人たちも、みんなだっこしてあげます。
この逆転がおもしろい。
だっこされた人は驚いたり、嬉しそうにほほ笑んだり。
だっこはしてもらうものという考え方がひっくり返ることでしょう。
同時にだっこしているだっこロボと、だっこされている人の笑顔を見ると、両方とも幸せそうなことに気付きます。
そんな表情を見ていると、自然と自分もだっこしてあげたいと思えてきます。
それはまさにギブの精神。
してもらうだけじゃなく、してあげることの喜びに繋がっているのです。
このだっこロボの姿を通して、自分もだっこしてあげたいと思い、実際にやってみた時にしてあげることの充足感を味わうことへ繋がっていくところが、この絵本のとても素敵なところです。
なんでもだっこできる無敵のだっこロボ
また、だっこロボがだっこするのは人間だけではないというのも、この絵本のおもしろく優しいところになっています。
だっこロボは、消火栓やポスト、木や岩、動物たちまで、本当になんでもだっこしてくれます。
すると、顔などがついているわけでもないのに、消火栓やポストなどの無機物も、ほんわか幸せそうに見えてくるのが不思議なところ。
同時に、とても愛おしいものにも思えてきます。
だっこすることで、そのものを愛おしく思い、大切にしようとする。
きっとこれは、だっこの隠された力なのでしょう。
さらにだっこロボは動物たちもだっこします。
それがたとえトゲトゲのヤマアラシでも、大きなクジラでも。
この分け隔てなく、だっこしてもらえる安心感も、この絵本の素敵なところ。
これは子どもたちにも広がり、優しい空気感に包まれます。
中には、友だち同士でだっこする子も。
だっこエネルギーを使い切った後は・・・
さて、そんな無敵のだっこロボも、限界はあります。
街中の人をだっこしたら、流石にもうヘトヘトです。
そんな時、ピザよりももっとエネルギーを与えてくれるものがあります。
これがとても優しくて、温かくて、安心感のあるものなのです。
このだっこロボらしい最後の場面も、この絵本のとても素敵なところ。
みんなに優しさをギブしてきただっこロボへの一番のご褒美です。
この場面を見ると、きっとだっこというのは、ギブの精神が形になったものなのだなと感じます。
この優しさの応答を通して、こちらまで優しい気持ちになり、自分も誰かをだっこしようというエネルギーをもらえることでしょう。
二言まとめ
なんでもだっこしてあげるだっこロボの、優しさと安心感と充足感が心に残る。
見れば、自分も身近な人をだっこしてあげたくなるし、だっこしてほしくなる温かな絵本です。
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