作:ジョン・ヘア 文:椎名かおる 出版:あすなろ書房
未来では火山の島へ遠足に行きます。
みんな火山に登り大喜び。
ですが、帰る時間になった時、子どもが1人足りない!?
あらすじ
先生に連れられて、ヘリコプターに乗り込んでいく防護服を着た子どもたち。
今日は火山の島へ遠足です。
火山の島へ降り立つと、火山を目指して歩きます。
つり橋を渡り、間欠泉やマグマを見学しながら、山頂目指して登っていきます。
子どもたちが火山の自然に大喜び。
でも、一人だけ違うものに興味を持っている子がいます。
その子は道中、花を見つけては摘んでいたのです。
手にたくさんの花を抱え、ついに山頂に到着。
マグマが噴き出る火口の中を眺めたら、そろそろ戻る時間です。
もと来た道を戻ろうと振り返ったその時、突風が吹きました。
一番後ろにいた子の持っていた花が、飛ばされ火口の中へ。
先生とみんなが歩いていく中、1人火口へ花を取りに降りてしまいます。
花を掴むことには成功したものの、火口の底へ落ちてしまった子ども。
花を集め水筒に入れ、戻ろうとしますが、滑って坂を登ることができません。
と、そこに伸びてきた大きな手。
なんと、それはマグマが伸ばした手だったのです。
その手はまだ落ちていた花を拾うと、嬉しそうに見つめ、小さなマグマたちにも見せました。
そして、子どもに挨拶しましたが、同時に花が燃えてしまいます。
ガッカリし、泣き出すマグマたち。
それを見た子どもは、地面に花瓶の形を描き、噴き出ているマグマでその形を作るよう身振り手振りで伝えました。
すると、マグマたちは言われた通りに。
子どもがマグマで出来た花瓶に水筒の水をかけると、冷えて固まり花瓶の完成です。
そこに集めてきた花を入れ、マグマたちに渡します。
マグマたちは嬉しそうに花を眺めていました。
子どもものんびりと、マグマたちの姿を眺めます。
その頃、ヘリコプターのところで、子どもが1人いないことに気付いた先生は・・・。
『みらいのえんそく~かざんのしまへ』の素敵なところ
- やっぱり忘れられてしまう子ども
- 初めて花を見るマグマたちとの優しいやり取り
- 子どもの居場所を知らせたサイン
やっぱり忘れられてしまう子ども
この絵本のお約束なおもしろさは、子どもが遠足で忘れられてしまうところでしょう。
この絵本はみらいのえんそくシリーズの2冊目で、前作『みらいのえんそく』でも、1人の子どもが月に忘れられてしまいます。
なので、この展開はシリーズのお約束。
子どもたちも、
「また、忘れられちゃわないかな?」
「今度は大丈夫かな?」
と、不安と期待が入り混じった目で見つめます。
そして、そこからの、
「やっぱり忘れられた!」
という、期待を裏切らない展開に、とても満足そうなのです。
この、シリーズものならではのお約束展開も、この絵本のとてもおもしろいところです。
「あれ?この子、月の時の子じゃない?」
という発見もあったりするので、シリーズ通して見ると、きっとより楽しめることでしょう。
初めて花を見るマグマたちとの優しいやり取り
こうして、忘れられてしまった子どもですが、火口で素敵な出会いをします。
それがマグマたちとの出会い。
マグマたちは、花の美しさに興味を持ちます。
それもそのはず、火口の中に花なんて咲かないでしょうから。
手に取るとうっとりしながら、つぶらな瞳で見つめるマグマたち。
その姿の愛くるしさは、この絵本の素敵なところの一つでしょう。
でも、その笑顔も長くは続きません。
マグマが持つには、花はデリケート過ぎたのです。
燃え尽きてしまう花を見て、悲しむマグマたち。
この表情の豊かさも、マグマたちに愛着を持てる要因なのだと思います。
そんな姿を見ていたら、なんとかしてあげたくなってしまうというもの。
絵本の中の子どもと、絵本を見ている子どもたちの気持ちが一つになる瞬間です。
子どもはマグマたちに花瓶の作り方と、花の扱い方を教えます。
こうして、燃えないように、枯れないように花を愛でることができるようになったマグマたち。
寝転んで足をパタパタさせながら、花を見つめるマグマは胸がキュンとなるほどかわいいし、周りで花の絵を描く小さなマグマたちもまたかわいい。
子どもたちも、
「かわいいね~」
「よかったね!」
と、すっかりマグマたちへの目線が、小さい子を見るような優しい目線になっているのでした。
この、言葉が通じないマグマたちとの、花を通して優しく温かなやり取りも、この絵本のとても素敵なところです。
子どもの居場所を知らせたサイン
さて、こうして平和に異種族交流を果たしていた子どもですが、それで帰れるわけではありません。
そんなやり取りをしていたちょうどその時、火口からのあるサインを見つけて気付きます。
このサインも、優しい気持ちや、嬉しい気持ちが反映されたこの絵本の素敵なところ。
実はマグマたちのシーンで伏線も張られていて、見直すと時系列が推測出来たりもします。
と、同時に先生への伏線も張ってあり、その二つが組み合わさって先生は、そこにいることに気付くのです。
あの子は花が好きだという個性を元に。
さらに、この伏線はどれも、あの子の優しい行動に起因しています。
先生に対しても、マグマたちに対しても、あの子の優しい気持ちが起こしたものなのです。
それが巡り巡って自分を助けることになる。
この優しさのサイクルがなんとも、花が好きなこの子の物語らしいなと感じます。
この伏線が組み合わさるおもしろさと、それらがすべて優しさからできているところも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
遠足先で忘れられるというお約束が、相変わらずおもしろくてハラハラさせられる。
マグマたちとの花を通した交流が、とてもかわいくて、優しくて、温かい遠足絵本です。
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