作:長田真作 出版:文化出版局
性格が正反対の2人が出会い絵を描くことに。
描き方も全然違うけど、なぜか気の合う二人。
次第に絵が混ざり合って・・・。
あらすじ
部屋はぐちゃぐちゃ、色んなものを囲まれているおいら。
部屋には無駄なものがなく、きっちりしているぼく。
そんな2人が、ばったりと出会いました。
2人は一緒に絵を描くことに。
おいらは青でバーッと色を広げていきます。
ぼくは赤で、きっちりした直角の線を描いていきます。
おいらは無秩序に絵の具を広げ、飛沫を飛ばし、
ぼくは線を繋げてきっちり繋がった道路のような線に。
おいらの絵は暴れん坊の怪獣ようになりました。
ぼくの絵は本物そっくりのカメになりました。
おいらの絵は曲線で中心でカオスな世界に。
ぼくの絵は直線中心で秩序だった世界。
おいらはぼくの描き方もできる。
ぼくにはおいらの描き方は難しい・・・。
もう描けないくらい、紙は色でいっぱいに。
2人は肩を組んで笑いあいました。
2人でいいコンビ。
一緒だと思いっきりできると。
と、そこへミルクをこぼしてしまいます。
絵を描いた紙は、ミルクで真っ白に。
でも、これでまた描けるようになりました。
仲良くなった2人が、描いていく絵には一体どんな変化があるのでしょう?
『おいたとぼく』の素敵なところ
- 一目瞭然な性格の違い
- 違うからこそ楽しく広がる絵
- 性格や描き方が違っても同じもの
一目瞭然な性格の違い
この絵本のとてもおもしろいところは、全く性格の違う2人が一緒に絵を描くところでしょう。
この性格が、まさに正反対。
おいらは絵に描いたようなわんぱくっぷりで、絶対片付けが苦手なタイプ。
部屋はものだらけだし、細かいことは気にしなさそうです。
対して、ぼくは几帳面を絵に描いたような性格。
部屋も机しか置かずに、そこで静かに本を読んでいます。
こんな風に、性格が正反対なことや、それが目で見てわかるようになっているのが、この絵本のおもしろいところ。
部屋の様子や、絵の描き方、服装、表情、筆の形など、いたるところに性格の違いが伝わってくる対比があります。
それだけで、細かい説明がなくても2人の性格を察することができるのです。
この見ているだけで、正反対の性格が読み取れるのがこの絵本のとてもおもしろいところ。
それはまるで、普段の生活の中で相手の性格を想像する時のようです。
子どもたちも、
「ぼくはおいらがいいな」
「わたしはぼくがいい!」
とそれぞれの好みを言い合っていました。
この自分に合いそうかを、その子の行動や仕草から予想するのは、現実の友だち探しに似ています。
ここにも子どもたちの性格の違いが出ておもしろいところかもしれません。
違うからこそ楽しく広がる絵
こうして、それぞれの好みを言い合っている子どもたちですが、おいらとぼくはそんな違いを越えていきます。
一緒に絵を描いたことで、その違いと相手のおもしろさに気付いていくのです。
お互いを認め合う言葉をかけた後は、一緒に一つの絵を描き始めます。
おいらが車を描けば、ぼくは平らな道を描き、
おいらが人の横顔を描けば、ぼくはその手にリンゴを描く。
といったように、それぞれ得意なものを描くことで、絵にメリハリが生まれ、さらに世界が広がっていくのです。
これはぜひ実際の絵を見てもらいたいところ。
おいらの勢いある絵と、ぼくのきっちりとした絵が混ざり合って、とても味のあるものになっています。
さらには、別々の部分を描くだけでなく、絵も赤と青の絵の具も混ぜて、完全に一体化。
もっともっと絵の世界が広がります。
この、性格が正反対の2人が一緒に遊ぶことで起こる、化学反応もこの絵本のとてもおもしろいところでしょう。
しかも、そのおもしろさが絵を通すことで、直感的に感じ取れるのです。
普段は、同じ性格やタイプの人と集まりがち。
ですが、この絵本を見ると、自分とは違う性格の相手とも遊んでみたくなる。
違いがとても楽しいものに思えてくるのも、この絵本のとても素敵なところなのです。
性格や描き方が違っても同じもの
さて、違いと同時に2人に共通するところも、実は描かれていたりします。
それが「思いきり絵を描きたい」という気持ちです。
この絵本はほとんどが2人の絵で進んでいきます。
その絵を見ていると、それぞれの違いが際立ちます。
ですが、絵が一段落し、おいらとぼくがしゃべる場面では、とても似た者同士に見えるのです。
それは、
「おれたち中々いいコンビだな」
「全くその通りさ。きみといると思いっきりできるよ」
という会話からもうかがえます。
その根底にあるのは絵を描くのが好きだという気持ちなのでしょう。
性格も描き方も正反対の2人ですが、心の奥にある思いは同じなのです。
この2人を見ていると、最初は違いが気になって「自分に合うのはどちらか」などと考えていたのが、性格や描き方の差など些細なことに思えてくるのが不思議なところ。
「絵を描きたいという思いが同じなら、そんな違いを気にしていたらもったいない。」
そんな声が2人から聞こえてきそうですよね。
この、わかりやすい違いと同時に、普段はわかりにくい心の奥にある「同じ気持ち」も描き出してくれているのが、この絵本のとても素敵なところなのです。
違いを受け入れた先にある楽しさや広がりを、この2人の姿を通して感じ取ってもらいたいと強く思える絵本です。
二言まとめ
性格も暮らし方も見るからに違う2人の、やっぱり全然違う絵の描き方がたまらなくおもしろい。
広がる絵の世界と2人の楽しそうな姿から、「違いを受け入れてみようかな」と変化への一歩を踏み出させてくれる絵本です。
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