文:小風さち 絵:山口マオ 出版:福音館書店
誰もいないわにわにの家。
のはずが、部屋の中から謎の小さなわにが現れました。
だれ・・・?
あらすじ
誰もいない家で居眠りしてたわにわにが、目を開けました。
誰もいない廊下を這っていくわにわに。
ところが、部屋のドアが少し開き、そこから小さな赤いわにが顔を出します。
わにわにが台所へ行くと、ついてくるあかわに。
わにわにはあかわにに、プリンを出してみました。
あかわには食べました。
次にわにわにがお風呂へ行くと、あかわにもやっぱりついてきます。
お湯をためてみると、湯船に飛び込むあかわに。
2匹は仲良くお風呂にもぐり、泳ぎます。
そして、お風呂から出ると大きなタオルに体をこすりつけ、並んで体を拭きました。
それから外に出ると・・・。
『わにわにとあかわに』の素敵なところ
- 突如現れるあかわにのホラー感
- もてなすわにわにと、懐くあかわにの両方がたまらなくかわいい
- 謎が多すぎるあかわに
突如現れるあかわにのホラー感
この絵本のまずおもしろいところは、不思議なホラー感でしょう。
誰もいない静かな家で目を覚ましたわにわに。
ですが、廊下を這っていると、ドアの隙間から顔だけ出す小さなわにと目が合います。
これ、実生活だったら恐ろしすぎる。
完全にオバケの登場の仕方なのです。
さすがのわにわにも「だれ?」と、戸惑います。
この、おもしろいような怖いような、不思議なホラー感が、この絵本のおもしろいところ。
年齢が低いほど、あまり深く考えずおもしろがり、年齢が高くなると、よく考えたら怖いことに気付き、あかわにに不気味さを覚えます。
それぞれに反応の違いが見えて、これもおもしろいところだったりします。
もてなすわにわにと、懐くあかわにの両方がたまらなくかわいい
こうして最初は戸惑いを見せるわにわにですが、すぐにいつものマイペースなわにわにに戻ります。
あかわになど見なかったかの如く、普通に這って行くのです。
けれど、あかわにも負けてはいません、
わにわにの後をついてきます。
すると、あかわにが気になってしょうがないわにわに。
色々なもてなしをあかわににしてあげます。
この姿が、まるで初めて一人育児をするお父さんみたいでたまらなくおもしろく、かわいいのです。
プリンを勧めたものの、食べるか気になってしょうがないわにわに。
手元がお留守になり、自分用にコップへ注いでいたミルクが、まったくコップへ入っていません。
これには子どもたちも、
「こぼしてるこぼしてる!」
「コップちゃんと見て!」
とすかさずツッコミ。
そして、あかわにがプリンを食べると、「たべたぞたべたぞ。」となんだか嬉しそう。
次に行った風呂場でも、溺れないようにか、あかわにを洗面器に入れ湯船に運んであげます。
・・・が、あかわには洗面器から湯船へダイブ!
滅多に驚いた表情を見せないわにわにが「オー!ララー」と、謎の声と焦りの表情。
かなりレアな顔が見られます。
まるで、急に走ったり、高いところからジャンプしだす子どもに焦るお父さんのよう。
でも、あかわにも泳げることがわかると、一緒にのんびり湯船に潜って泳ぎます。
風呂から上がってタオルで体を拭く時も、その後の行動も、あかわにはわにわにのまねっこです。
その姿はまるで親子のようで、とても微笑ましく、ほっこりとした時間が流れます。
このやきもきしながらも、あかわにをもてなすわにわにと、一生懸命にわにわにの真似をするあかわにの、まるで親子のような姿がたまらなくかわいいのも、この絵本のとても素敵なところです。
謎が多すぎるあかわに
さて、まるで親子のようなわにわにとあかわにですが、最後の最後に驚きの結末が待っていました。
きっとここまで見た人は最後の場面で、「わにわにと一緒に暮らすのかな?」「あかわにの正体がわかるのかな?」と思ったことでしょう。
ですが、そんなことは起こりません。
結局、「なぜわにわにの家にいたのか?」「どこから来たのか?」「そもそも誰なのか?」などは一切語られないのです。
まさに正体不明。
わかっているのは、とりあえずかわいいことくらい。
これには子どもたちも、
「えー!?」
「あかわにってなんだったんだろう?」
「なんで家にいたの!?」
と、完全に頭の中が消化不良。
でも、正体不明だからこそ、あかわにならではの不思議な魅力に繋がっているのでしょう。
いきなり現れたあかわにの、最後まで正体不明のまま終わる、正体不明過ぎて逆に清々しいこの独特な感覚も、この絵本のとてもおもしろいところです。
二言まとめ
あかわにをもてなすわにわにが、まるで新人お父さんのように奮闘する姿がおもしろく微笑ましい。
まるで親子のような2匹の姿に、心がほっこりさせられる、わにわにシリーズ絵本です。
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