作:高畠那生 出版:フレーベル館
外は土砂降りの「いい天気」。
そう、カエルにとっては降れば降るほどいいのです。
さあ、「いい天気」を思う存分楽しむお出かけへ出発です!
あらすじ
カエルが家で天気予報を見ていました。
どうやら、明日はいい天気。
カエルは明日、出かけることに決めました。
次の朝、外はものすごい大雨です。
カエルは大喜びで出かける準備をしました。
そう、カエルにとっては大雨が「いい天気」なのです。
カエルはバスケットに荷物を入れると、自転車に乗って出発しました。
街中を走っていると、傘を差していないのはカエルだけです。
道中、せっかくなので、ハンバーガーを買っていくことに。
頼んだのは、サックサクのカツバーガー。
それを持って、公園へと向かいます。
公園に着くと、大雨で水浸し。
水が腰の高さまでたまっています。
それを見たカエルはますます大喜び。
折り畳みのイスを出し、さっそくカツバーガーを取り出します。
ですが、水に濡れてサックサクだったカツバーガーは、でろでろのぐちょぐちょ。
カエルはそれをとても美味しそうに食べました。
さらにカエルは、もっと雨に当たるため服を脱ぎ、のんびりとイスに寝そべることに。
気持ちよくてすっかり眠ってしまったカエル。
ところが、寝てる間に雨は弱まり・・・。
『カエルのおでかけ』の素敵なところ
- 全部があべこべなおもしろさ
- 水の中で起こっていることにやきもき
- 雨がやんでも大丈夫なカエルらしい発明品
全部があべこべなおもしろさ
この絵本のなによりおもしろいところは、カエルと人間で常識の全てが正反対なところでしょう。
いい天気は大雨だし、
人間たちが傘を差す中、カエルだけが傘を差しません。
水浸しの公園に大喜びし、
サックサクのカツバーガーより、でろでろでぐちょぐちょなカツバーガーを美味しそうに食べ、
雨が上がると焦って家へ帰るのです。
全部が見事に正反対。
子どもたちもこれを見て、
「えー!?晴れてる方がいい天気だよ!」
「でろでろのぐちょぐちょまずそう・・・」
と不満の声が上がりますが、最終的には「カエルだからね!」でまとまります。
これがこの絵本のとてもおもしろいところ。
カエルを通して、自分とは正反対の価値観に触れることができ、そのおもしろさを思う存分味わえるのです。
これには、カエルの心から雨を喜ぶ、ウキウキと楽しそうな姿も大きな影響を与えているでしょう。
その嬉しそうな表情、動き、言葉の節々から、大雨が楽しくて仕方ない様子が感じられます。
自分は楽しいと思えない状況を、心から楽しむカエルを見ることで、自分の常識とは違うおもしろい世界を見せてくれるのが、この絵本のとても楽しく素敵なところです。
水の中で起こっていることにやきもき
さて、公園へと着いたカエルですが、ベンチに寝そべりくつろぎの時間を始めます。
この時、荷物は全部水の中に置かれます。
ここでの荷物の動きもまた、とても子どもの興味を引くものになっているのも、おもしろいところです。
家から色々な荷物が入ったバスケットを、水の中に沈めるので、水の影響を受けて色々な動きをし始めます。
花束は散らばりカエルの周りを漂い、
チーズは流れに任せて、流されていき、
グラスに注いだワインは、水に浮かび上がります。
けれどカエルはそんなことお構いなし。
カツバーガーを食べているものだから、気付いている子どもたちはやきもきしてしまいます。
「お花流されてるよー!」
「あー!荷物が―!」
「飲み物こぼれちゃって、飲めなくなってるよー!」
と訴えかける声が上がりますが、全然気づく様子はありません。
でも、その後のページでは、流されていたはずのものが、使った後の状態でバスケットに綺麗に片付けられています。
これを見ると、想像が膨らみ始めます。
「カエルだから、水と一緒に飲み物飲んだのかな?」
「ちゃんと拾ってチーズ食べたんじゃない?」
「お花はないから、流されちゃったのかも」
などなど、妙に想像が広がるのです。
この水の力の働きが妙にリアルなのも、この絵本のとてもおもしろいところで、絵本の世界にリアリティを与えてくれつつ、子どもたちの興味をものすごく刺激してくれます。
絵本の中のほんの一部分ですが、とても遊びがありおもしろい場面です。
雨がやんでも大丈夫なカエルらしい発明品
こうして、雨を思いきり楽しんでいたカエルですが、雨はいつか上がります。
段々と弱まっていく雨。
焦って帰り支度を始めるカエル。
・・・ですが、カエルは準備を怠っていませんでした。
こんな時のためと言わんばかりの発明品を取り出すのです。
これもまた、この絵本のとてもおもしろくて素敵なところ。
カエルらしい発明品なのに加え、ここでもあべこべのおもしろさがさく裂しています。
みんなとは正反対の理由で使う秘密道具に、子どもたちも驚きつつ笑ってしまいます。
さらにはその発明品を見て「どうなってるの!?」と気になる子どもたちに、その秘密が実は物語の中に隠されているのも、おもしろいポイント。
ある場面で、その設計図をカエルが描いていて、そこにこの秘密兵器の仕組みも描かれているのです。
これはきっと、繰り返し読んだ時に気付くことでしょう。
この最後まであべこべのおもしろさを忘れない、カエルらしいあべこべな発明品も、この絵本のとてもユニークで素敵なところです。
二言まとめ
カエルの喜ぶポイントの、全部が人間とはあべこべでおもしろい。
カエルを通して、自分とは違う世界の見方をおもしろおかしく味あわせてくれる絵本です。
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