【絵本】はらぺこおおかみと7ひきのこやぎ(4歳~)

絵本

作:トニー・ロス 訳:金原瑞人 出版:小峰書店

有名な童話『おおかみと7匹のこやぎ』。

それを原作よりも、おもしろおかしくしたのがこの絵本。

特に大笑い必至なオオカミ退治の場面は必見です!

あらすじ

あるところに、母さんヤギと、7匹の子ヤギが暮らしていました。

ある日、母さんヤギが買い物へ行くことに。

留守番する、7匹の子ヤギたちに、「玄関のドアは絶対に開けないように」と言い聞かせ、買い物へ出かけていきました。

ところがはらぺこオオカミは、この話を窓の下に隠れて聞いていたのです。

さっそくはらぺこオオカミは、家のドアを叩きました。

子ヤギたちが誰かと聞くと、「母さんだ」と答えます。

けれどその声は唸り声。

子ヤギたちは「母さんは優しい声で歌うようにしゃべるもん」と、はらぺこオオカミだと気付き、ドアを開けませんでした。

そこで、はらぺこオオカミは音楽の先生のところにやってきました。

音楽の先生に教えてもらい、はらぺこオオカミは歌うような声を出せるようになったのでした。

はらぺこオオカミは戻ってきて、またドアを叩き「母さんよ」と話しかけます。

今度は歌うような優しい声です。

子ヤギたちは、それを聞いて手を見せるように言いました。

はらぺこオオカミは郵便受けに手を入れます。

その手を見た子ヤギたちははらぺこオオカミのの手だと気付き、その手を金づちで叩きました。

はらぺこオオカミは手の痛みに耐えながら、絵の先生の家へ走って行きました。

こうして絵の先生を脅して、手をヤギの色に塗ってもらったはらぺこオオカミは、また子ヤギたちの元へ戻ります。

そしてドアを叩き、歌うような声で話しかけ、白い手も見せました。

すると、子ヤギたちはしっぽを見せるように言ってきます。

はらぺこオオカミは郵便受けに自分のしっぽを入れました。

そのしっぽを見た子ヤギたちは、オオカミのしっぽだと気が付きます。

さらにそのしっぽをガブリ。

しっぽに噛みつかれたオオカミは、悲鳴をあげて歯医者の元へ向かいました。

はらぺこオオカミは無理を言って、歯医者にしっぽを抜いてもらうと、代わりに麦の穂をしっぽの代わりにつけたのでした。

こうしてまた子ヤギたちの家へ向かったはらぺこオオカミ。

麦の穂のしっぽを見せると、ついに子ヤギたちは信じてしまいました。

ドアを開けようとする子ヤギたち。

ですが、末っ子の子ヤギだけは用心して、石炭のバケツに隠れます。

ドアが開くと、そこにいたのははらぺこオオカミ。

あっという間に、6匹の子ヤギたちを飲み込んでしまいました。

はらぺこオオカミは満足すると、母さんヤギのビールをジョッキに注ぎ、裏庭にあるイスに腰をおろし、そのまま眠ってしまったのでした。

母さんヤギが帰ってくると、石炭のバケツから飛び出した末っ子が、なにがあったかを伝えました。

それを聞いた母さんヤギは・・・。

『はらぺこおおかみと7ひきのこやぎ』の素敵なところ

  • より笑えるユーモラスな『おおかみと7ひきのこやぎ』
  • 原作ゆずりのハラハラドキドキ感
  • 母の強さ全開のパワフルで大笑いな結末

より笑えるユーモラスな『おおかみと7ひきのこやぎ』

この絵本のとてもおもしろいところは、基本的な流れが原作と同じ中で、そのエピソードがとてもユーモラスに描かれているところでしょう。

そもそもの絵からして、7匹の子ヤギはたちはスケボーをしたり、サッカーをしたりとすでに雰囲気が現代風。

オオカミの服装も、ジーンズにジャケットを羽織っているなど、おしゃれです。

その時点で、けっこう新鮮なのですが、やり取りはやっぱり『おおかみと7ひきのこやぎ』。

子ども達も、

「スケボーやってるよ!」

「ちゃんとお洋服来てる♪」

など、この絵本ならではの要素を楽しみつつも、オオカミがドアを叩くと一瞬で『おおかみと7ひきのこやぎ』モードに切り替わり、家の中に閉じこもる子ヤギたちの表情に早変わり。

絶対にドアを開けないぞという意思が伝わってきます。

この「いつもと違う」↔「いつもと同じ」の往復と、そのギャップがとてもおもしろく、子ども達を『はらぺこおおかみと7ひきのこやぎ』の世界へと一瞬で惹きこんでいくのです。

また、いつもと同じ展開にも、ユーモラスな要素が満載で、原作ではほっと一安心するところを、大笑いに変えてきます。

手を入れた時に、金づちで手を叩き、オオカミが「いってー!」と転げ回って痛がったり、

しっぽを見せるという新たな展開で、そのしっぽにガブリと噛みついたり・・・。

鍵を開けないだけでなく、オオカミをただでは返さない子ヤギたち。

きっと子どもたちも、原作でハラハラドキドキさせられたうっぷんを晴らしているのでしょう。

「ドアを開けちゃないかな・・・」という不安の分だけ、痛がるオオカミを見てその不安が大爆笑に変わります。

この、ベースは原作と同じながら、子ヤギたちがただ食べられる弱い存在ではなく、しっかりとやり返す力強い描き方をされているのが、この絵本のとてもおもしろいところです。

原作ゆずりのハラハラドキドキ感

ただ、もちろん、オオカミに仕返しをするだけでは終わりません。

この絵本の原作は『おおかみと7ひきのこやぎ』。

ドアが開かずに終わったらおもしろくないのです。

声、手、しっぽと、3つに要素をクリアしたら、この賢い子ヤギたちでもドアを開けてしまいます。

この時の、ハラハラドキドキ感はまさに『おおかみと7ひきのこやぎ』そのもの。

しっぽを見て、開ける機運が高くなると、その分だけ子どもたちのドキドキ感は膨らみます。

「開けちゃダメ!」

「オオカミだよ!」

「食べられちゃう!」

と、必死で止めたり、顔を手で覆って怖い場面を見ないようにする子どもたち。

けれど、無情にも開けてしまう子ヤギたち。

あんなに大笑いしていた子どもたちも、子ヤギたちが食べられていく様を見て、一気に緊張感が増し、真剣な表情で固唾を飲んで見守るばかりです。

この、『おおかみと7ひきのこやぎ』で一番特徴的な場面が、緊張感そのままのハラハラドキドキ感で描かれているのも、この絵本のとても素敵なところです。

むしろ、それまで大笑いして油断していた分、原作よりも緊張感はすごいかもしれません。

ユーモラスに描くところと、シリアスに描くところのメリハリのつけ方もまた、この絵本の大きな魅力です。

母の強さ全開のパワフルで大笑いな結末

さて、こうして末っ子以外食べられてしまった子ヤギたち。

母さんヤギが帰ってきて、末っ子からことの顛末が伝えられます。

原作では、悲しみに涙し、絶望する母さんヤギ。

しかし、この絵本では違います。

この母さんヤギの反応と、その後の行動もまた、この絵本のとてもおもしろく素敵で、最大の見どころの一つです。

原作では基本的にヤギはオオカミに勝てないか弱い存在として描かれます。

最後の場面を知恵を絞って、オオカミが寝ている間にお腹に石を詰め、間接的に勝利します。

けれど、子ヤギですらオオカミに噛みつくこの絵本は違います。

だって、母さんヤギにはトロルも倒せそうな立派な角がついているのですから・・・。

この予想外の結末に、さっきまでドキドキしていた子どもたちも、驚きつつ大爆笑。

そのパワフルさに声を出して笑ってしまいます。

子ヤギたちの助かり方も、ギャグマンガのようにユーモラス。

笑わずにはいられないことでしょう。

この型破り過ぎる、大爆笑確実な、大いに盛り上がる最後の場面は、この絵本最大の魅力かもしれません。

ぜひ、子ども達と大笑いしながら読んで見て欲しい一冊です。

二言まとめ

子ヤギたちと母さんヤギの、パワフルさとたくましさに大笑いしてしまう。

ユーモラスに描かれた『おおかみと7ひきのこやぎ』の変わり童話絵本です。

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