【絵本】いぬとねこ(4歳~)

絵本

再話:ソ・ジョンオ 絵:シン・ミンジェ 訳:おおたけきよみ 出版:光村教育図書

イヌとネコがおばあさんのために立ち上がる、韓国の昔話。

日本の昔話と通ずるものに親近感が湧いたり、

韓国でイヌよりネコがかわいがられる理由がわかるお話です。

あらすじ

昔、おばあさんがイヌとネコと一緒に暮らしていました。

ある日、川辺を散歩していると、漁師に捕らえられたスッポンに出会いました。

おばあさんは持っていたお金を全て漁師に渡し、スッポンを逃がしてやりました。

あくる日、おばあさんの元へ男の子が訪ねてきました。

なんと、その男の子は昨日のスッポンで、竜王の息子だと言うではありませんか。

男の子はお礼をするため、おばあさんを川の底にある竜宮へと連れていってくれたのでした。

竜宮で楽しく過ごしたおばあさんは、帰り際に竜王から「なんでも一つ土産に持って行っていい」と言われました。

おばあさんは、竜王の息子が目配せしてくれた、竜王の杖についている玉をもらうことにしました。

その玉は、なんでも願いが叶う魔法の玉でした。

思うだけでなんでも出てくるのです。

おばあさんの暮らしは、見違えるほど豊かになりました。

魔法の玉の噂は広がり、川向こうの欲張りばあさんの耳にも入りました。

そしてある晩、欲張りばあさんは小間物売りの振りをして、おばあさんに近づき、魔法の玉と偽物の玉を取りかえて、さっさと逃げて行ってしまいました。

魔法の玉を失い、おばあさんの生活は元通り。

おばあさんはすっかり元気をなくしてしまいました。

それを見ていたのが、イヌとネコ。

2匹は話し合い、欲張りばあさんから魔法の玉を取り返すことにしました。

その夜、イヌとネコは静かに家を抜け出し、欲張りばあさんの家へ向かいます。

欲張りばあさんの家は川向こう。

ネコがイヌの背中に乗り、川を渡っていくのでした。

欲張りばあさんの家へ行くと、イヌは門の見張りを、ネコは玉を探しに屋敷へ入ります。

ネコが明かりの漏れている部屋へ入ってみると、そこにはネズミの大群が。

ネコはすかさずネズミの王様を捕まえると、王様を放す代わりに、魔法の玉を見つけてくるようネズミたちに頼みました。

家中を探し回るネズミたち。

その数の多さで、あっという間に魔法の玉を見つけてくれました。

約束通り王様を放すと、魔法の玉を口に入れ、また川を渡って帰ります。

その途中、イヌがネコに話しかけてきますが、ネコの口には玉が入っているので口を開けません。

それでもしつこく聞いてくるイヌ。

イヌが大きく体をゆすったことへの驚きもあり、ネコはつい答えてしまい・・・。

果たして、魔法の玉は無事に、おばあさんの元へ帰ってくるのでしょうか?

『いぬとねこ』の素敵なところ

  • 日本の昔話との共通点に親近感が湧く
  • わかりやすいからこそハラハラドキドキさせられる
  • 鮮やか過ぎる伏線回収

日本の昔話との共通点に親近感が湧く

この絵本のおもしろいところは、韓国の昔話ですが、日本の昔話との共通点があることです。

それが、物語前半の竜宮へと行く部分。

舞台が海ではなく川ですが、展開は『うらしまたろう』とほとんど一緒。

子どもたちも、

「うらしまたろうに似てるね!」

「日本と一緒だ!」

と、ほとんど展開が同じだと気付き、驚いていました。

川の底に行き、そこで過ごした後お土産をもらうなど、竜宮へ行った後の流れも、ほとんど同じ。

国や言葉は違うけれど、みんな大好きな昔話の中にある共通点に、韓国への親近感が湧いてきます。

同時に、その後の展開の違いや、『いぬとねこ』ならではのおもしろさにも惹きつけられ、どの国の昔話もおもしろいことに気付きます。

これは、前半が馴染みある昔話と同じ展開のこの物語だからこそ、よりわかりやすく子どもに伝わるのでしょう。

そんな外国と日本の文化を繋いでくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。

わかりやすいからこそハラハラドキドキさせられる

さて、前半は『うらしまたろう』そっくりなこの物語ですが、お土産をもらうところから、大きく展開が変わります。

玉手箱ではなく、好きなものをもらえるのです。

そこでもらった魔法の玉は、まさに夢のような道具。

なんでも思ったものが出てくるのです。

これには子どもたちもうっとり。

「すご過ぎる!」

「好きなおもちゃ出せるじゃん!」

「お金も出せるね!」

などなど、夢と妄想が膨らみます。

しかし、そこに現れるのが欲張りばあさん。

その名前を聞いた途端、子どもたちの表情に緊張が走ります。

だって、名前からして絶対玉を盗みに来そうなんですから。

そして案の定、近づいてくる欲張りばあさん。

子どもたちの警戒はMAXに。

「絶対、魔法の玉とろうとしてるよ!」

「見せちゃダメ!」

と、ハラハラドキドキ・・・。

けれど、やっぱり取られてしまって、「ほらー!」とがっくり。

「欲張りばあさんいけないよね!」

「泥棒だ!」

と、避難の嵐です。

こんな風に、結果は残念なのですが、このわかりやすい展開やネーミングもこの絵本のとても楽しいところです。

「欲張りばあさん」と聞いただけで、次に何が起こるか予想できるのだから、事件が起こるまでハラハラドキドキしない訳がありません。

他にも、魔法の玉と言うわかりやすく万能な道具や、イヌとネコが玉を取り返しに行くという展開も、シンプルゆえにワクワク感やドキドキ感へ繋がります。

このわかりやすいからこそ、「理解」よりも「気持ち」に集中でき、ワクワクハラハラドキドキ感を全力で味わえるのも、この絵本のとても素敵なところです。

物語の各所で味わえる、たくさんの子の気持ちが一つになる一体感のおもしろさは、ぜひ体験してほしいところです。

鮮やか過ぎる伏線回収

また、この物語、最後にアッと驚く展開がまっています。

ですが、そこへの伏線の張り方が、この物語らしくわかりやすいのも、この絵本のおもしろいところ。

そのわかりやすさはダチョウ倶楽部の「押すなよ押すなよ」レベルです。

欲張りばあさんの家から、魔法の玉を見つけ出したネコ。

手には持てないので、口に含んで帰路につきます。

そこへ話しかけてくるイヌ。

ネコの返事は「・・・」。

だって、口を開けないのですから。

子どもたちも「今しゃべれないよ・・・」と、ネコの味方をしてくれます。

でも、やっぱり話しかけてくるイヌ。

子どもたちも徐々に展開が予想でき、ハラハラドキドキ。

「返事しちゃだめだよ!」

「口を開けちゃダメ!」

と言う言葉はまさに「押すなよ押すなよ」。

もう、口を開けるまでのカウントダウンは始まっていることでしょう。

そして・・・。

このわかりやすくも鮮やか過ぎる伏線回収もまた、この絵本のとても盛り上がる楽しさが詰ったところです。

この時の、子ども達のがっかり感と一体感は相当なもの。

わかっちゃいたけどつい「あーあ・・・」とため息が出てしまいます。

あ、でもちゃんとハッピーエンドで終わるので安心てくださいね。

最後まで見たら、なぜ韓国ではネコの方が重宝されるかわかることでしょう。

二言まとめ

わかりやすい伏線の数々に、わかりやすいからこそハラハラドキドキさせられる。

日本の昔話との共通点に、なんだか韓国に親近感を感じる昔話絵本です。

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