【絵本】あめのひに(3歳~)

絵本

作:チェ・ソンオク 絵:キム・ヒョウン 訳:星あキラ、キム・ヨンジョン 出版:ブロンズ新社

大雨の日、雨宿りのため、女の子を訪ねてくる生き物たち。

でも、どんどん水位が上がり、家の中にも水が入ってきます。

そこで屋根裏へ登っていくと・・・。

あらすじ

大雨の中、家に帰ってきた女の子。

外で水が川になり、坂の下のナツメの根元まで雨水が上がってきた時、ドアを叩く音がしました。

やってきたのはアリの家族。

雨宿りに来たのです。

女の子はアリの家族を家に入れてあげました。

坂の下のケヤキの幹まで雨水が上がってきた時、またドアを叩く音がしました。

やってきたのはハリネズミ。

女の子はハリネズミも家に入れてあげました。

家の近くのお地蔵様の足元まで雨水が上がってきた時、またまたドアを叩く音。

やってきたのはネコでした。

女の子はやっぱり家に入れてあげました。

窓から外を見ると、雨水はドアまで押し寄せています。

その時、外から誰かが歩いてくる足音が。

ドアを叩いてやってきたのは大きなクマでした。

女の子はクマも家に入れてあげました。

雨水はついに家の中に入ってきて、イスの所まで上がってきました。

それと一緒に、魚やオタマジャクシも家の中へ。

でも、みんなはピクニック気分で楽しそう。

それでも雨は止まず、雨水がどんどん入ってくるので、女の子はみんなを連れて屋根裏部屋へ行くことにしました。

屋根裏部屋の窓から外を見てみると・・・。

雨はいつになったらやむのでしょう?

みんなは家に帰れるのでしょうか?

『あめのひに』の素敵なところ

  • 少しずつ迫る雨水、大きくなっていく生き物たち
  • 家の内外が同時に描かれるおもしろい構図
  • 大雨からの開放感あふれる美しい最後の場面

少しずつ迫る雨水、大きくなっていく生き物たち

この絵本のなによりおもしろいところは、どんどん雨水が迫ってくるドキドキ感と、次々にやってくる生き物のワクワク感だと思います。

この二つは連動した繰り返しになっていて、外の水位が上がるにつれて、大きな生き物がやってくる作りになっています。

水位が、

「坂の下のナツメの根元」

「家の近くのお地蔵さんの足元」

など、とても具体的に語られるのもポイントで、家に向かって少しずつ迫ってくる様子が想像出来ておもしろい。

子どもたちも、

「もう家の近くまで水が来てるよ!」

「家の中に入ってこないかな・・・?」

と、そのドキドキ感を言葉にしたり、身を寄せ合いながら楽しそうに見ていました。

そして、水位の上昇に合わせて次々やってくるのが、生き物たち。

ドアを叩いて入ってきます。

生き物たちが、アリ→ハリネズミ→ネコ→クマと、少しずつ大きくなっていくのもおもしろく、生き物に会わせてドアを叩く音も変化。

繰り返しの中での変化に、「次は誰だろう?」とワクワクさせられることでしょう。

この、繰り返しの中で刻々と上がっていく水位と、どんどん増えていく生き物たちのドキドキワクワク感が、この絵本のとても楽しいところです。

家の内外が同時に描かれるおもしろい構図

また、大雨のすごさや水の勢いを表現するために、この絵本はおもしろい構図で描かれているのも、このドキドキワクワク感を高めてくれるポイントです。

それが、家の内外を同時に描くというもの。

ページの中央に四角があり、その中が家、外が屋外という構図です。

なので、四角の外では横殴りの雨が降っていて、下には水が溜まっています。

家の壁をカタツムリが登っていたり、カエルが流されていたりと、小さな発見も。

でも、この構図のなによりおもしろいところは、水位の上昇が、とてもわかりやすく目に見えることでしょう。

家の中の様子と一緒に描かれることで、家の床よりも高い所まで雨水が来ていることや、1階がすべて雨水に沈んでしまったことなどが、視覚的にわかるのです。

これには否が応でも、ドキドキ感が高まります。

「お家沈んじゃってるよ!」

「全部川になってる!」

「魚釣り出来そうだね♪」

など、子ども達も危機感を覚えたり、非日常を楽しんだり様々な反応。

確かに、家の周りや家の中で魚が泳ぐ様子は、とても幻想的で楽しそうです。

この、家の周りで魚が泳ぐほどに水位があがっていくことが、目に見えるようになっている構図も、ドキドキ感を思いきり盛り上げてくれ、大雨のすごさを肌で感じさせてくれるところです。

大雨からの開放感あふれる美しい最後の場面

さて、そんな物語の最後の場面は、これまでの大雨で家へ閉じ込められている閉塞感から、身も心も開放してくれるようなものでした。

その鍵になったのは、家の周りを泳いでいたクジラです。

素敵なのは、解放感が順番に体験できるところ。

最初に家からの解放。

ここでは、大雨の中で遊ぶ解放感が味わえます。

その後に、大雨からの解放。

この時の美しい景色を見れば、心奪われ「わぁ~」という感嘆の声が出てしまうことでしょう。

子どもたちも、

「雨やんだよ!」

「きれい~」

「あ!虹が出た!」

と、大喜び。

その美しい景色と解放感を思いきり味わっている様でした。

でも、実はもう一つ解放が隠されています。

それが裏表紙。

そこには雨上がりの家が描かれていて、表紙とは対照的。

ここにも雨の日からの解放感が感じられます。

同時に、命にとっての雨の大切さも。

そんな生命の息吹を感じられるものになっています。

子どもたちも、

「雨がたくさん降ったから、元気になったんじゃない?」

と、その繋がりを感じているようだったのが印象的でした。

この、これまでたくさんドキドキさせられたからこその、最後の場面での大雨からや雨水からの解放感と、そこで描かれる美しい風景も、この絵本のとても素敵なところです。

二言まとめ

水がどんどん迫ってくるドキドキ感と、そんな中で生き物たちがやってくるワクワク感がおもしろい。

大雨ならではの楽しさと、大雨からの解放感の両方を思いっきり味わえる、雨の日絵本です。

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