作:ポール・ガルドン 訳:福本友美子 出版:ほるぷ出版
コンコンと咳が止まらなくなったヒヨコのために、
お母さんが水を汲みに行きました。
でも、水を汲むためにはあれも、これも、それも、あんなものまで必要で・・・。
あらすじ
昔々、めんどりのコッコさんと、ヒヨコのタッペンが森に出かけました。
美味しい種を探しに来たのです。
コッコさんは、タッペンに大きい種は喉に詰まってコンコンが出るから食べないように言いました。
ところがしばらくして、タッペンは大きい種を飲み込もうし、咳が止まらなくなってしまったではありませんか。
コッコさんは慌てて水を探しにとんでいきました。
すると、泉があったので、コッコさんは水を分けてくれるよう頼みました。
泉はコップを持ってくれば分けてくれると言いました。
そこでコッコさんは、かしの木まで出かけ、コップをくれるよう頼みました。
かしの木は、枝を揺すってくれたらコップをくれると言いました。
コッコさんは、木こりの息子のところへ行き、枝を揺すってくれるよう頼みました。
木こりの息子は、靴を持ってきてくれれば、枝を揺すると言いました。
コッコさんは、靴屋へ駆けていき、靴を作ってくれるよう頼みました。
靴屋は、皮を持ってきたら、靴を作ると言いました。
コッコさんは、牝牛のところへ行き、皮を分けてくれるよう頼みました。
牝牛はトウモロコシを持ってきたら、皮をわけてあげると言いました。
コッコさんは、お百姓さんのところへ行き、トウモロコシをわけてくれるよう頼みました。
お百姓さんは、スキを持ってくればトウモロコシを分けてくれると言いました。
コッコさんは、鍛冶屋に行き、スキを作ってくれるよう頼みました。
鍛冶屋は、鉄を持ってくればスキを作ってくれると言いました。
コッコさんは、鉱山へ行き、小人に鉄を分けてくれるよう頼みました。
すると、事情を聞いた小人たちは、大急ぎで鉄をどっさり運んできてくれました。
やっと必要なものが手に入ったコッコさん。
無事タッペンに水を飲ませることができるのでしょうか?
タッペンのコンコンは止まるのでしょうか・・・?
『ひよこのコンコンがとまらない』の素敵なところ
- どんどん必要なものが増えていく楽しくも困った繰り返し
- 1つ手に入ったところからの怒涛の巻き返し
- コッコさんと一緒にホッとする物語の結末
どんどん必要なものが増えていく楽しくも困った繰り返し
この絵本のなにより楽しいところは、必要なものがどんどん増えていく繰り返しでしょう。
コッコさんは水を飲ませようとしただけなのに、一つお願いするごとに、一つ必要なものが増えていきます。
気付けば、ものすごい量の必要なものが・・・。
さらにコッコさんの、必要なものが増えるたびに増えていくセリフが、必要なものの多さを実感させてくれ、よりおもしろい。
最初は、
「かしの木さん、かしの木さん、コップを一つちょうだい。
コップがなければ、泉の水が汲めない。
水がなければ、タッペンのコンコンがとまらないの」
という簡潔なお願いだったのが、最後には、
「鍛冶屋さん、鍛冶屋さん、スキを作ってちょうだい。
スキがなければ、お百姓さんがトウモロコシをわけてくれない。
トウモロコシがなければ、牝牛が皮をくれない。
皮がなければ、靴屋さんが靴を作れない。
靴がなければ、坊やはかしの木を揺すれない。
揺すらなければ、かしの木がコップをくれない。
コップがなければ、泉の水が汲めない。
水がなければ、タッペンのコンコンがとまらないの」
と、とんでもなく長い説明になっているのです。
子どもたちも、
「すごい長くなってる!」
「説明するのも大変だね~」
と、もう笑ってしまうほど。
でも、どこか言葉遊びのようで、読んでいる方も、聞いている方も楽しく心地がいい。
文章が長くなるにつれ、どんどん早口で読んでいくとテンポ感もよく、大変さも伝わる、ぼくのおススメな読み方です。
また、コッコさんが色々なところに行くけれど、必要なものが中々手に入らないヤキモキ感も、とてもおもしろいところ。
その塩梅が絶妙で、他の絵本なら「そろそろ手に入りそう」と予想するところから、まだしばらく手に入らないのです。
徐々に子どもたちも、
「えー!?まだもらえないの!?」
「タッペンが死んじゃうよ!」
と、焦り始めます。
さらにそれを越えるとおもしろくなってくるようで、
「まだもらえない!」
「いつもらえるの~」
と、どこまでもらえないのかと、笑いが出てきてしまうからおもしろい。
手に入らなさ過ぎる長い旅路が、飽きるどころかおもしろくなってしまうという、この絵本ならではの魔力があるのです。
この、予想の1.5倍くらい必要なものが多い繰り返しと、そのたびに増えていくコッコさんのセリフの変化が、この絵本の子どもをひきつけてやまない大きな魅力の一つです。
1つ手に入ったところからの怒涛の巻き返し
こうして長い時間かけて、必要なものをやっと手に入れることができたコッコさん。
ですが、一つ手に入ったら、そこからの解決は驚くほどにスピーディーなものでした。
この、一つ手に入れるまでの長い工程と、手に入れた後のスピード感のギャップも、この絵本のとてもおもしろく爽快なところです。
それはまるでジェットコースター。
これまで見開き1ページを使い、文章量もたっぷり使い、じっくりと各所を回っていたのとは正反対に、
1ページに1つずつ、
「その鉄で、鍛冶屋さんはスキを作りました。」
「そのスキで、お百姓さんはトウモロコシを取ってきてくれました。」
といった、簡潔な文章で必要なものがどんどん手に入っていくのです。
そして、あっという間に泉の水へ。
このスピード感に、子ども達も口を挟む隙すらありません。
タッペンに水を飲ませる段階になってようやく。
「早かったね~」
と感嘆の声。
その表情には、どこかやりきった達成感が感じられました。
このゆっくりじっくり必要なものを追っていく流れからの、鉄が手に入った瞬間から一気に加速して解決するスピード感への変化が、この絵本のものすごく爽快で気持ちのいいところです。
コッコさんと一緒にホッとする物語の結末
さて、こうして無事に目標を達成したコッコさん。
その道のりはとても大変なものでした。
対して、ヒヨコのタッペンはそんなこと露知らず。
のんきで無邪気な姿を、最後まで見せ続けます。
この最後の場面で、子どもたちの目線がコッコさんになっているのも、この絵本のおもしろいところなのです。
最初の場面では、子どもの目線は中立から、どちらかというとタッペンに近いものでした。
「かわいい~」と言いながら、みんな視線がタッペンに向かっています。
けれど、最後の場面では、
「も~大変だったんだから!」
「もう、大きい実食べないんだよ!」
「虫とかをお食べ!」
と、そこに変化が生まれています。
きっと、長い時間をかけて、コッコさんと水を汲みに行った苦労があるからなのでしょう。
すっかり、お母さんの目線になっている子どもたちの姿に笑ってしまいました。
この、エピソードを通して、最初と最後で目線が変わるというおもしろさも、この絵本のとてもおもしろい魅力の1つです。
二言まとめ
水を汲もうとしただけなに、どんどん必要なものが増えていく繰り返しがおもしろい。
言葉選び、テンポ感、スピード感、その全てが、読み手にも聞き手にもとても心地よい、何度も読みたくなる絵本です。
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