作:舟崎克彦 絵:中田弘司 出版:ポプラ社
お風呂でオナラをするとプクプク泡が浮かんできます。
いつもは、すぐに割れる泡。
だけど、この日は泡が割れずに形が変わって・・・。
あらすじ
あるお風呂に入る時。
男の子は、初めて1人でお風呂に入ることになった。
ママが大事な電話をしなくてはいけないからだ。
なんだか落ち着かず、緊張からオナラが出た。
水面に浮かんでくる大きなあぶく。
パチンと弾けるかと思いきや・・・
なんと、あぶくはヘルメットの形になり、ヘルメットの下からフロ野球選手が現れたのだ。
選手は洗い場に飛び出し、ボールを投げて来いという。
男の子は困ってしまい、湯船の隅っこに逃げ出すと、またオナラが出た。
嫌な予感がして、あぶくを眺めていると・・・
あぶくはみるみるマスクになって、フロレスラーが飛び出した。
すると、フロ野球選手と、フロレスラーのケンカが始まった。
野球をするというフロ野球選手。
ここはフロレスのリングだというフロレスラー。
2人が取っ組み合いを始めたので、男の子は風呂場から逃げ出し、ママに助けを求めた。
その声を聞いて、大慌てでやってきたママ。
一緒に風呂場を見に行くと、そこには誰もいなくなっていた。
ママは寂しくなって、呼びに来たんだと思っている。
翌日、ママが一緒にお風呂に入ろうかと言ったけど、男の子は断った。
だって、1人じゃなくちゃだめだから。
こうして、男の子が風呂場に行くと・・・。
『ぷぅ』の素敵なところ
- みんな大好きなオナラ
- あぶくが他のものに変化するおもしろさ
- 風呂をかけた言葉遊び
みんな大好きなオナラ
この絵本のまず子どもを惹きつけるところは、オナラという題材でしょう。
タイトルを見た時点で、「オナラかな!?」と、子どもの目がキラキラ。
読み始める前から、テンションが上がり、笑いが起こります。
そして、お風呂の中で「ぷぅ」とオナラをした瞬間、予想通りの大爆笑。
「くさ~い」
「だれかオナラした!?」
「ぼくしてないよ!」
と、子ども達は大盛り上がり。
オナラというのは、その存在だけで、子ども達を楽しく幸せにするのでしょう。
このオナラを、タイトルだけで直感的にわかるほど、前面に押し出しているのが、この絵本のおもしろく、一瞬で子どもの心を掴んでしまうところです。
ある男の子は楽しみ過ぎて、タイトルを見て以来毎日「今日、オナラの絵本読む!?」と聞いていました。
オナラとは、すごい吸引力です・・・。
あぶくが他のものに変化するおもしろさ
ただ、もちろんオナラのおもしろさだけでは終わりません。
このオナラが、色々なものに変化するところが、この絵本の醍醐味ですから。
いつもはすぐに弾けるオナラのあぶく。
ですが、この日は違いました。
あぶくが段々と違うものに変化するのです。
この変化の過程が、とても自然でおもしろい。
あぶくに段々色が着き、つばがつき、ヘルメットに変わります。
マスクの時も、徐々に赤いラインが現れ、目や口の穴が見えてきて、レスラーの顔が現れます。
これを見ていると、突拍子もないように見えつつも、あぶくとの類似性に納得できてしまうから不思議です。
でも、そんなのんきなことも言っていられません。
だって、それを被った人まで出てきてしまうのですから。
これには、子ども達もびっくり。
「人が出てきた!」
「ここじゃ野球できないでしょ!」
「筋肉ムキムキー!?」
と、大騒ぎ。
このカオスな状況がなんともおもしろく、まるでドタバタコメディーを見ているよう。
わーきゃー言いながら楽しんでいます。
この、あぶくの見立てから生まれる、おもしろくもカオスな展開が、この絵本のなんともおもしろいところ。
脈絡があるようなないような、絶妙に子どもが喜ぶカオスっぷりなのです。
きっと、「えー!?」「なんで!?」という、子ども達の楽しい声が聞こえ続けることでしょう。
風呂をかけた言葉遊び
さて、そんなあぶくからのカオスがおもしろいこの絵本。
ですが、忘れてはいけない楽しい要素がもう一つあります。
それが、風呂を使った言葉遊びのおもしろさです。
野球選手やレスラーが出てきたのには、あぶくにヘルメットやマスクが似ているからという理由の他に、もう一つ選ばれた理由があります。
それが、「プロ」と「フロ」が似ているからです。
風呂から出てくるのは「フロ野球選手」に「フロレスラー」。
まさに風呂から出てくるのにピッタリでしょう。
これには子どもたちも、
「プロが風呂になってる!」
「お風呂から出てきたからだ!」
「おもしろ~い」
と、大盛り上がり。
「フロ」と「プロ」の類似性に気付き、改めて言葉遊びのおもしろさを楽しんでいる様でした。
ただ、プロ選手は野球選手とレスラーだけではありません。
ということは、フロ選手も無数に存在しています。
それを最後の場面でこれでもかと見せてくれるのも、この絵本の楽しいところ。
子どもたちも男の子と一緒にその多さにびっくり。
見終わった後、色々な場面で目にする「プロ」が「フロ」に見え、色々な想像がふくらむようになっていることでしょう・・・。
二言まとめ
子どもたちの大好きなオナラと言葉遊びを組み合わせた、笑いと驚きが止まらない。
見たら、自分のしたオナラのあぶくが、なにか別のものに見えてくる・・・かもしれないお風呂絵本です。
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