子どもも大人も抜群におもしろい『探求遊び』のススメ【保育・教育】

保育

お元気様です!

登る保育士ホイクライマーです。

夕方の急な雷雨が多い今日この頃ですが、みなさんは被害にあっていませんでしょうか?

保育園では、稲光や大雨は、子ども達の興味を強く引くもので、たくさんの子が窓に集まりワ―キャー騒ぐという一大イベント。

けれど、みんなで盛り上がっている中、後ろの方で1人表情の硬い3歳児の男の子が。

「怖いの?」と聞くと、「うん」と小声でうなずく男の子。

その姿を見ると、Tシャツまでズボンの中にしっかりしまい、さらにはズボンをへその上まであげるハイウエスト。

これでもかと、雷様からへそを守っている超防御的スタイルに、思わず笑ってしまいました。

子どもたちの世界には、当たり前のように雷様が空を飛んでいるのしょうね。

さて、そんな雷や大雨を見ている中で、子ども達はたくさんの疑問を口にします。

「あそこに雷様がいるのかな?」

「あっちは明るいから、もうすぐ晴れるかも!」

「光った!・・・あれ?音がしないね」

などなど、その中にはたくさんの学びの原石が詰っています。

そんな子ども達からの疑問を、子どもたち自身で探求していくのが、今回紹介したい探求遊びです。

この雷の例のように、日常の中で探求のきっかけはたくさんありますが、そのまま流れていってしまうことが多いと思います。

そんなきっかけを、探求へと繋げていく遊びです。

普段の保育の中で、

「子どもが主体になった遊びをしたい」

「子どもの可能性を引き出すにはどうしたらいいんだろう?」

「子ども自身に調べて学んでほしい」

そんなことを考えたことがある人には、きっと新たな気付きがある内容になっているはず。

なぜなら、ぼくもそんな疑問の末に辿り着いた者だからです。

ぜひ、最後まで見ていってください。

では、いってみましょう!

探求遊びとは?

まず始めに、探求遊びというものについてお話していこうと思います。

探求遊びとは、

なにかについて、深く探求していく遊び

です。

そのままですね。

では、普通の遊びとなにが大きく違うのでしょうか?

それは、

  • 目的や正解がないこと
  • 教えられるのではなく、子ども達が自ら考えを深めていくこと

という特性にあります。

少し普段の遊びを思い返してみてください。

その中に、目的のない遊びはどれくらいあるでしょうか?

制作であれば、その過程は自由でも、作品を完成させるという目的があります。

ゲームなども、ルールという正解がある中で遊びます。

そう考えてみると、普段の「活動」と呼ばれる時間に行うことは、目的や正解があることが多いのではないでしょうか?

目的がない遊びでいうと、自由遊びの時間に行われることが多いかもしれません。

散歩での散策や、自由工作などなど。

実はこれらは探求遊びに含まれます。

ただ、問題になるのは探求できる環境が整っているかということ。

環境が整っていないと、先ほどの雷の例のように、そこでの発見や疑問は流れていってしまいます。

つまり、ここで伝えていきたい探求遊びとは、

とことん調べ、試せる環境の中で、目的や正解のない問いを探求し深めていく遊び

ということになります。

探求遊びの魅力

では、この探求遊びの魅力とは一体何なのでしょう?

これには、子どもと大人それぞれの魅力があると思っています。

子どもにとっての魅力は、

好奇心のおもむくままに、好きなだけ調べ、試せる

ところでしょう。

普段の遊びの中では、時間の制約や、環境が足りないことで、興味は湧いても探求しきれずに終わりがちです。

それを探求遊びでは、探求対象へ特化した環境で遊ぶことにより、興味をさらに広げ発展させていけるのです。

きっと、みなさんも好きな事に熱中したり、気になることを調べているうちに時間を忘れていたことがあるでしょう。

まさに、子ども達がこの感覚を味わえるのが、探求遊びなのです。

大人にとっての魅力は、

子どもの素直な感性に触れ、その素晴らしい力に気付くことができる

ところです。

探求遊びは、目的なく、好奇心のおもむくまま進んでいける遊びです。

そこには、目的があるからこその「成功」や「失敗」、「出来」「不出来」といったものは存在しません。

だからこそ、子ども達の純粋な感性から出た言葉が多く飛び交います。

「こうすると、海の中みたいだよ」

「ここの色が映ってるのかな?」

「こっちも入れたら、どんな風になるんだろう?」

そして、これらの言葉が、新たな発見や疑問を生み、さらなる探求へと進んでいくのです。

また、これらの子どもの中から自然に出てきた言葉には、たくさんの示唆が含まれています。

「こんなところに注目しているのか!」

「こんな表現方法ができるのか!」

「自分たちだけでこんなことに気付けるのか!」

その子ども達の力に、驚かされることでしょう。

これは、大人の子ども観を変える大きな契機となり、子どもの持つ本来の力を正しく認識するきっかけとなるはずです。

大切なのは環境構成

さて、ここからは、探求遊びをする上での、具体的な方法について書いていきたいと思います。

まず、探求遊びをする上で、もっとも重要なのは環境構成です。

好奇心が湧いても、それを深める道具がなければ、探求できませんからね。

では、環境構成の具体的な流れを見ていきましょう。

1、テーマを決める。

最初に考えることは「なにを探求するか?」というテーマです。

みなさんもご存じの通り、すべてのものを探求できる環境を同時にそろえておくことは不可能。

「光」「音」「植物」など、テーマが違えば、必要な環境も異なります。

なので、まずはどんなテーマの探究をできる環境にするかを決める必要があるのです。

このテーマ選びで大切なのは、日頃子どもたちがどんなことに興味を示しているか知っておくこと。

この記事冒頭の、雷の例で言えば、そこで聞こえてきた子どもたちの声から、「光」「電気」「天気」など、探求のテーマが見つかったりします。

夏の時期なら、水遊びの楽しさから、「水」の探究にも自然と繋がるかもしれません。

子どもの興味から探求のテーマを決めていきましょう

2、テーマに沿った環境を作る。

テーマが決まったら、そのテーマを探求するために必要な環境を作っていきます

ここでは「光の探究」を例にとってみましょう。

まず初回ということで、光を使って遊ぶことを中心に考えます。

まずは光源となる、懐中電灯やスタンドライト。

次に、照らす場所ととして、スクリーンやテーブル模造紙を敷いておきます。

あとは、そこに光のおもしろさや美しさを体験できるものを置いていきます。

透過素材として、アクリル積み木や、カラーセロハン、ビー玉など。

不透過素材として、積み木や、お皿、網など。

こうして、照らしたことによる影のでき方の違いや、色の変化を体験できるようにしていきます。

ここで、注意しておきたいのは、多すぎても少なすぎてもダメということ。

多すぎると、光とは関係のない遊びになってしまったり、散らかって集中できない環境になってしまいます。

逆に少なすぎると、すぐに飽きてしまい探求する意欲がなくなってしまうのです。

そのため、子どもの年齢や人数により、環境を調整する必要があります

3、振り返り

探求遊びは、発展的な遊びです。

なぜなら、子どもの好奇心は同じところにとどまってはいないから。

一度、探求遊びをしたら、そこからさらに興味が広がることもあるでしょう。

そうなってくると、今の環境では探求がストップしてしまいます。

そうならないよう、次の環境構成が必要になってくるのです。

反対に、探求が深まらなかった場合には、環境の改善が必要です。

「ものが多すぎた?」「素材の選定が間違っていた?」など、色々な要因があるでしょう。

そのため、うまくいってもいかなくても、振り返りが大切になってきます。

探求遊びの環境は生きた環境。

常に探求する子どもたちの興味に合わせてアップデートが必要なのです。

探求は少人数のグループで

探求遊びをする上で、もう一つ大切なことがあります。

それは探求をする人数

探求はグループで行います。

これには、

  • 発見を共有することで、自分だけでは思い浮かばなかったアイディアが、他者と協力することで生み出される。
  • 他者と協力することで、1人ではできない規模の大きな探求も行える

というねらいがあります。

ですが、人数が多すぎると、集中しきれず探求が深まらないという事態も起こります。

なので、探求遊びの適正人数は4人までがよいでしょう。

6人くらいまでならなんとかなりますが、それでも集中力に大きな違いが生まれます。

4人というのは、互いの意見を落ち着いて聞き、自分の意見も伝えられる人数なのです。

日本のクラス担任制だと、難しい部分もあると思います。

探求遊びを中心に行える保育者が、探求グループを連れ出すことができたらいいのでしょうが、それも難しいことでしょう。

そんな時は、12人であれば、興味の近い4人×3グループにわけ、自由遊びの時間に部屋の一角で行う方法もあるので、試してみてください。

本格的に探求遊びを取り入れている保育園のような、大規模なことはできないかもしれませんが、子ども達と声を交わしながら、一つの興味を深めていくという、探求遊びの本質は、大人も子どもも十分に味わえると思いますよ。

大人は共同探求者

では、そんな魅力がたっぷり詰まった探求遊びの中で、大人はどんな関わり方をすればよいのでしょう?

それは、

共同探究者として、一緒に探求を楽しむ

という役割です。

一緒に発見を驚き、そのおもしろさを共有する存在です。

ただ、その中で大人にしかできない大切な役割があります。

その役割とは、発見が深まるように声をかけていくこと

例えば、光の探究で、なにかを照らしている時に、屈折した光が天井など他の場所に映った場面。

子どもたちは「あそこがキラキラしてる!」「お日様がいるみたい」など、その発見を楽しみます。

そのおもしろさを共有しつつ様子を見守る中で、発見だけで終わってしまいそうな時こそ、大人の腕の見せどころ。

「なんで光はここにあるのに、あそこに映ったんだろう?」

というように、子どもに問いを投げかけてみるのです。

すると、子どもも一緒に考え始め、様々な答えが出てくるでしょう。

これにより盛り上がりが次の発見に繋がっていくかもしれませんし、そのまま終わってしまうかもしれません。

子どもたちが出した答えが、大人から見たら間違っていることもあるでしょう。

けれど、それで構わないのです。

大人の役割はあくまで共同探求者。

探求の中でおもしろそうな部分に問いを発し、子どもと一緒に探求するのが大切なのです。

気を付けなければいけないのは、答えを教えたり、導こうとしないこと

ぼくたちは、無意識に忘れがちな「知らないからこそ、探求は楽しい」のだということを、改めて思い出しましょう。

まずは小さな探求遊びから始めてみませんか?

ここまでおススメしてきた探求遊び。

これらは本当の初歩の初歩で、本格的に探求遊びを実施している人からは、不十分な内容かもしれません。

探求遊びの本場であるレッジョ・エミリア教育では、町ぐるみでこれを実践していたり、この教育法を取り入れている保育園では、園全体で行っていたりします。

でも、ここを最初の目標にしたら、いつまで経っても探求遊びをすることができなくなってしまいます。

同時に、家庭ではできないとも思われてしまうでしょう。

そこで、「まずは規模が小さくても、実際にやってみませんか?」というのが、ぼくの伝えたいことです。

ぼく自身、まだ探求遊び初心者で、試行錯誤しながら時間を見つけて実践しているところです。

ただ、そんな1人で実験的にやっている小規模なものでも、子どもが目をキラキラさせ探求にのめり込む姿は見られます。

水の入ったペットボトルに光を照らし、そのキラキラ揺らめく影を見て、

「光ってキラキラした水晶みたいにだね」

と、言った子のうっとりした表情は、きっと忘れることはないでしょう。

環境設定をミスったりなど、よくわからない遊びになってしまうこともよくあります。

けれど、それがないと環境設定の改善や、対象としている子に適した環境を作ることもできません。

探求遊びは、その実践を走らせながら、子どもの声をくみ取り、より発展していくよう調整していく遊びだからです。

光の探究などは、懐中電灯、家にあるおもちゃや雑貨、模造紙くらいで始められてしまいます。

最初は、難しいと感じたり、正解のない遊びが怖いと感じることもあると思います。

でも、そこには遊びの根源的な楽しさが詰っています

ぜひ、「遊ぶための遊び」を、広げるため、思い出すため、凝り固まった保育観を壊すため、実践してみてください。

実践例:光の探究

とても簡単な光の探究実践例を載せておきます。

これくらい気軽に始められるというのを感じてもらえ、試してもらえたら嬉しいです。

実践例:光の探究

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は、探求遊びのおもしろさについて、紹介していきました。

細かく言うと、探求の遊びの過程をドキュメンテーションにして、保護者に伝えるとともに、子ども達が自分の探究を振り返る機会にするなど・・・

探求遊びに必要な要素はまだまだあります。

けれど、この記事で探求遊びの本質的な部分については、お伝え出来たと思っています。

日本の保育園では、目的をもって活動する文化が根強くあります。

椅子取りゲームなどのルールのある集団遊び。

完成させるための制作。

話を聞くための朝の会・・・などなど。

半面、自由な時間には、そこで出た子どもの興味を、汲み取り深める機会はほとんどないと思います。

少し思い返してみてください。

目的のない遊びは思いつきますか?

そんな中で、探求遊びは子ども観を大きく変えてくれることでしょう

それに、目的に合わせて子どもを導かなくていいというのは、大人にとっても心を解放できる楽しい時間になるはずです。

ただ、これらは、探求遊びをしてみないとわからない感覚でもあったりします。

なので、ぜひ今回の記事を参考に、簡単なものでいいので、探求遊びに飛び込んでみませんか?

最後まで読んでいただきありがとうございました!

参考文献

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