【絵本】とんねるをぬけると(3歳~)

絵本

作・絵:片山健 出版:福音館書店

子どもたちを乗せて電車が出発します。

少し走ると、目の前にトンネルが。

真っ暗なトンネルを抜け電車が出てくると・・・子どもがみんな雪だるまに!?

あらすじ

電車の発車ベルが鳴り、子ども達が急いで電車に乗り込みました。

ドアが閉まり出発です。

少し走ると、目の前にトンネルがありました。

トンネルに入ると辺りは真っ暗です。

そして、トンネルを抜けると・・・

なんと、子どもたちが雪だるまになっているではありませんか。

そのまま走って行くと、目の前にまたトンネル。

トンネルを抜けると・・・

みんなダルマになっていました。

また、トンネルに入り、抜けると・・・

子どもたちがフクロウに。

さらに、トンネルに入り、抜けると・・・

お月様になっていました。

まだまだ、トンネルは続くみたい。

今度はなにになってしまうのでしょうか?

『とんねるをぬけると』の素敵なところ

  • トンネルを抜けるたび、突拍子のない大変身
  • どんどんペースを上げていく場面転換
  • 変身とともにさりげなく変化している走行音

トンネルを抜けるたび、突拍子のない大変身

この絵本のなによりおもしろいところは、電車がトンネルを抜けるたび、車内が大変身するところでしょう。

しかも、この変身にはまったく脈絡がありません。

トンネルを抜けるたび、雪だるま、ダルマ、フクロウ、果てはお月様・・・

と、絶対予想できないものに変身していくのです。

でも、突拍子もないからこそおもしろい。

子どもたちも、

「えー!?」

「なんでー!?」

「雪だるまになっちゃった!」

と、最初は驚いていましたが、流れがわかってくると大爆笑の渦に包まれます。

トンネルを抜けて変身するたび、

「また、変わっちゃったー!w」

「おもしろいねー!」

と、近くの友だちと大笑い。

こうなってくると、橋が転がってもおもしろい。

ページをめくるたびに大爆笑が起こり、大盛り上がり。

楽しい一体感に包まれます。

この、「考えるな!感じろ!」と言わんばかりの、突拍子なく、どんどん変身していく展開のおもしろさが、この絵本のなによりも楽しいところです。

どんどんペースを上げていく場面転換

また、このおもしろさと、子どものテンションをどんどん盛り上げてくれるのが、徐々にスピードが上がっていくテンポ感です。

最初はゆっくり丁寧に描かれます。

電車が走り、前にトンネルが見えてくる場面。

電車の中に入り真っ暗な場面。

トンネルを抜けて変身した場面。

と、その経過が1場面、見開き1ページで描かれます。

これが、変身を繰り返すたび、どんどん過程が短縮されていくのです。

トンネルに入る場面がカットされ、「トンネルに入り、トンネルを抜けると」という文章だけで済まされるようになり、

さらには「トンネルに入り」までカットされ、変身後に「トンネルを抜けると」の一文だけで、場面がどんどん転換していきます。

最終的には、ページをめくるたび、変身するのですごいスピード感に。

ただ、このスピード感がこの絵本の突拍子のなさと相性抜群。

変身して笑っている間に、次の変身が来て燃料を投下していくので、まったく休む暇がありません。

最後のページまでノンストップで笑い続けていました。

この、電車×笑い×スピード感という、最高の組み合わせもこの絵本のとてもおもしろいところです。

変身とともにさりげなく変化している走行音

最後に、場面ごとに変わる、電車の走行音のおもしろさにも触れておこうと思います。

最初は「カタン カタン カタン カタン」と走っている電車。

でも、トンネルに入ると「ガタン ガタン ガタン ガタン」に変わります。

さらに、ダルマになると「カタン カタコト カタン カタコト」

フクロウになると「カタン カタン カタン カターン」

こんな風に、変身したものや場面によって、走行音が変わるのです。

これが、繰り返しの物語の中で、よいアクセントに。

単純文章の繰り返しの中に、テンポの変化を生んでいて、新鮮な風を吹き込んでくれています。

これは地味に効果があり、変身したことを目だけでなく、耳でも感じる効果があります。

また、ひたすら変身を繰り返す後半の場面を、飽きににくくもしてくれているのでしょう。

この、さり気なく変わる走行音も。この絵本の地味だけれど、おもしろいところの1つです。

二言まとめ

電車がトンネルを抜けるたび、車内が全然違うものに変化していく展開がたまらなくおもしろい。

どんどん加速する変身スピードに、子どもたちが息つく暇なく笑い転げ続ける絵本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました