作:小松申尚 絵:かのうかりん 出版:文芸社
ある日、空からサンマが降るという天気予報を耳にしたどろぼうねこ。
それを聞いた仲良しの魚屋さんが、商売あがったりだと困っていました。
そこで、どろぼうねこは魚屋さんのため一肌脱ぐことに・・・。
あらすじ
ある町に、町の商店街を縄張りにしているネコがいました。
名前はどろぼうねこ。
ある日、どろぼうねこは顔なじみの魚屋さんに、サンマを盗みに行きました。
どろぼうねこが魚屋さんにサンマを盗んでいいか聞くと、1匹だけならいいとのこと。
どろぼうねこはサンマを1匹盗んでいきました。
それからしばらくして、どろぼうねこが商店街を歩いていると、テレビから変わった天気予報が聞こえてきました。
空からサンマが降ってくるというのです。
その天気予報を聞いて、どろぼうねこが鼻をひくひくさせてみると、確かに魚の匂いがするような・・・。
そんなどろぼうねこを見て、魚屋さんが声をかけてきました。
話を聞くと、空からサンマが降ってきては、店の魚が売れなくなると、困っているみたいです。
なんとかならないかと相談されたどろぼうねこは、いつもお世話になっている魚屋さんのため、一肌脱ぐことに決めました。
さっそく、どろぼうねこは表に出ると、しっぽを逆立て、声高らかに鳴きました。
すると、町のあちこちから、たくさんのネコが集まってきたではありませんか。
驚く魚屋さんに、どろぼうねこは説明しました。
このネコたちは、ねこやなぎ盗賊団で、自分はその親分なのだと。
すっかり感心している魚屋さんをよそに、どろぼうねことねこやなぎ盗賊団は作戦を開始します。
その作戦とは、ネコたちみんなで、降ってくるサンマをすべて平らげてしまおうというもの。
どろぼうねこの鳴き声を合図に、ネコたちは町中へ散っていきました。
しばらくすると、西の空からウロコの形をした雲が近づいてきました。
そして、辺りが暗くなってきたと思ったその時。
空から数えきれないほどのサンマが降ってきたではありませんか。
待ち構えていたネコたちは、一斉にサンマを食べ始めます。
そんなねこやなぎ盗賊団の姿を、風呂屋の煙突の上から満足そうに見守っていたどろぼうねこ。
1つ大きなあくびをすると、ついに自分も動き出します。
大きく口を開け、深く喉を広げると・・・。
これだけのサンマを、本当にネコたちだけで平らげてしまえるのでしょうか・・・?
『どろぼうねこのおやぶんさん』の素敵なところ
- 魚屋さんから頼りにされるどろぼうねこ
- 空からサンマが降るという奇想天外なおもしろさ
- 親分らしいどろぼうねこのすごい技
魚屋さんから頼りにされるどろぼうねこ
この絵本のおもしろいところは、どろぼうねこなのに、魚屋さんと仲良しなところでしょう。
魚を盗みに行くけれど、きちんと魚屋さんの許可を取り、世間話までこなします。
子どもたちも、
「それは泥棒っていうのかな?」
「これなら泥棒されても嫌じゃないね!」
と、この不思議な関係をおもしろそうに見ていました。
そんなどろぼうねこは、仲良しどころか、相談されるほど頼りにされているからびっくり。
天気予報を見た魚屋さんに呼び止められ、「どうにかならないか」と相談されるほどなのです。
その姿は、まるで町の顔役のよう。
ネコとは思えない存在感と、オーラをまとっています。
このどろぼうねこという名前と、行動のギャップが、この絵本のなんともおもしろいところです。
空からサンマが降るという奇想天外なおもしろさ
さて、魚屋さんがどろぼうねこに相談するほど困ってしまった原因は、サンマが降るという奇想天外な天気予報。
これには魚屋さんだけでなく、子どもたちもビックリ仰天。
「魚が降るの!?」
「そんなわけないよ!」
と言いつつも、天気予報の内容や、確かに魚が降りそうな空模様にドキドキワクワク。
魚が降るのを今か今かと待ち構えます。
そして、ねこやなぎ盗賊団の準備ができ、いよいよ空が暗くなってきた時、聞こえてくる「びちびちびちびち」という音が聞こえてきた瞬間・・・
「サンマだ!」
という子どもたちの叫び声。
その声からは、待ちに待った瞬間が来た喜びと驚きがひしひしと伝わってきます。
まるで、雪が降ると言われ、今か今かと待ち構えている時の様。
期待が大きかった分、降ってきた時の喜びが大きかったのでしょう。
サンマが降ってくる絵のインパクトもすごく、降ってくるめちゃめちゃリアルなサンマが空を覆い尽くしている様子は圧巻。
この絵本でしか見られない光景だと思います。
この、空からサンマが降るという奇想天外な天気のおもしろさと、そんな奇想天外な光景に現実味を帯びさせる、これでもかとリアルに描かれたサンマの絶妙なコントラストも、この絵本の「すごい・・・」ところです。
親分らしいどろぼうねこのすごい技
ですが、これだけのサンマが降ってくる光景を見ていると、とてもではありませんがねこやなぎ盗賊団だけでは食べきれなさそう。
本当に平らげることができるのか心配になってきます。
そこで動き出すのが、どろぼうねこのおやぶんさん。
満を持してゆっくりと動き出します。
その貫禄はまさに親分。
そのゆったりとした動きに、「なにをするのか?」と子どもたちの期待に満ちた目は釘付けです。
1つあくびをした後に、ページをめくるとそこには・・・
見開きの画面いっぱいに描かれた、大きな口を広げるおやぶんさんの顔。
その口は大空よりも広く、その喉は深海より深く開かれています。
この迫力がすごい。
さらに、その状態で見せてくる技は、ネコという領域をはるかに超えたすごいもの。
でも、ものすごい力技。
このおやぶんさんらしい、パワフルなスゴ技に、
「おやぶんさんすげー!」
「こんなに口おっきいの!?」
「サンマがー!!!」
と、子どもたちも大盛り上がり。
間違いなく、この絵本の中で一番の盛り上がりと言えるでしょう。
どろぼうねこなのに魚屋さんと仲良しなことや、サンマが降ってくるという奇想天外な大事件など、色々驚きがありましたが、この見開き1ページですべて持って行ってしまう。
このどろぼうねこのおやぶんさんのすごさが、この絵本とおやぶんさんのとてもすごいところです。
ぜひ、この迫力はご自身の目で確かめてみてください。
二言まとめ
空からサンマが降ってくるという、奇想天外なシチュエーションと、その様子のリアルさがたまらなくおもしろい。
色んな驚きがありつつも、最後はおやぶんさんがすべてをかっさらっていく、おやぶんさんらしい絵本です。
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