【絵本】びっくりぎょうてん(3歳~)

絵本

文:小長谷清美 絵:ペテル・ウルナーフ、降矢なな 出版:福音館書店

ある日、大きな原っぱに、大きなテーブルが降ってきた。

それからの1週間、毎日ビックリ仰天な出来事が。

曜日ごとに起こるビックリ仰天に、目が離せない絵本です。

あらすじ

大きな原っぱに、モグラとネズミとハリネズミが暮らしていました。

ある月曜日。

その原っぱに、空からテーブルが降ってきました。

あとからたくさんのイスも。

火曜日の朝、テーブルから花瓶が生えてきました。

さらに風が花を運んできて、花瓶の中は花でいっぱい。

水曜日は雨が降り続け、カエルがたくさん出てきました。

カエルは雨上がりの夜に、みんなで歌を歌いました。

木曜日は、ビックリすることはなにもありませんでした。

金曜日、テーブルの隅っこに電話が置かれていました。

土曜日の午後。

電話がいきなり鳴り出しました。

そして、日曜日・・・。

どんなビックリ仰天が待っていたのでしょう?

『びっくりぎょうてん』の素敵なところ

  • 曜日ごとに起こったり起こらなかったりするビックリ仰天
  • 一緒に言いたくなる「びっくりぎょうてん」という言葉
  • とても不思議で魅力的な世界観

曜日ごとに起こったり起こらなかったりするビックリ仰天

この絵本のとてもおもしろいところは、曜日ごとに起こるビックリ仰天な出来事の数々でしょう。

突然空からテーブルとイスが降ってきて、テーブルから花瓶が生える。

そのどれもが、なんの脈絡もなく、みんなビックリ仰天です。

子どもたちも、

「えー!?テーブルどこから来たの!?」

「なんでテーブルから花瓶が!?」

と、まさにビックリ仰天。

目を見開いて驚いていました。

しかも、このビックリ仰天が、曜日で区切られているのも、この絵本のおもしろいところ。

これにより、曜日が変わることが一段落になり、ビックリ続きの中で、子どもの気持ちが切り替わります。

この切り代わりにより、「次はどんなことが起こるのか?」というワクワク感に繋がり、ビックリ仰天な出来事の期待感を高めてくれます。

また、1週間がわかっている子には、「きっと、日曜日まであるんだろうな」という予測に繋がり、最後の日曜日へ向けた期待感の高まりにも繋がります。

あわせて、ビックリ仰天ではない日が挟まれているのもおもしろく、

「なんにもない時もあるんだ・・・」

「のんびりな日だね~」

と、うまく子どもたちの緊張をほぐしてくれ、最後に向けたよいインターバルになってくれています。

この、曜日に合わせたビックリ仰天な出来事が続いたり、なにもなかったりする山あり谷ありな一週間もが、この絵本のとてもおもしろいところです。

一緒に言いたくなる「びっくりぎょうてん」という言葉

そんなビックリ仰天続きのこの絵本。

なんと、物語で驚かせるかでじゃなく、ちゃんと言葉でも「びっくりぎょうてん」と伝えています。

しかも、

「月曜日、空からテーブルが降ってきた。びっくりぎょうてん」

「火曜日の朝、大きな花瓶が生えてきた。びっくりぎょうてん」

というように、ほとんどすべての曜日で。

これには子どもたちもビックリ仰天するほかないでしょう。

実は、このビックリ仰天するところが、とてもわかりやすいのもこの絵本の魅力の1つ。

絵本に慣れている子も、慣れていない子も、この一言で安心して「ビックリ仰天していいんだ」と思え大きなリアクションをとることができるのです。

それに、息を合わせてビックリすると言う、一体感にも繋がりますしね。

さらに、「びっくりぎょうてん」が文章に組み込まれているおもしろさがもう一つあります。

それは、「びっくりぎょうてん」という言葉そのものがもっている魅力です。

みなさんは、「びっくりぎょうてん」と聞いたら、どう思うでしょうか?

そう、口に出して言いたくなるのです。

その語感なのか、リズム感なのか、妙に言いたくなる「びっくりぎょうてん」という言葉。

これが、文章の最後というとてもわかりやすく合わせやすい場所に描かれていることで、みんな気兼ねなく「びっくりぎょうてん!」と言えるのです。

この時の、子どもたちが言う「びっくりぎょうてん」のバリエーションの多さたるや。

おどけて言う子、とにかく大きな声で言う子、顔芸を交える子など、本当に様々な「びっくりぎょうてん」が飛び交います。

この、「びっくりぎょうてん」という、言いたくなってしまう魅力的な言葉が、しっかりと文章に組み込まれていることで、子どもたちが思い切り「びっくりぎょうてん!」と言えるのも、この絵本のとても素敵なところです。

とても不思議で魅力的な世界観

さて、そんな「びっくりぎょうてん」続きなこの絵本ですが、最後の日曜日にはとびきりの「びっくりぎょうてん」が待っています。

それは、これまでとは違い世界観すら揺るがすほどのものでした。

きっと、見ている人は不思議なことがたくさん起こるものの、ここが地球だという前提で見ていたと思います。

登場人物も、モグラ、ネズミ、ハリネズミなので違和感はありません。

けれど、最後の場面でその前提にすら亀裂が入ります。

ですが、もちろん悪い裏切られ方ではありません。

むしろビックリ仰天とともに、新たな世界観にワクワクと考察が止まらなくなる裏切られ方と言えるでしょう。

「ということは、もしかしてあのテーブルって・・・?」

「ここはどこだったんだろう?」

「これはなんの会なんだろう?」

と、様々なことが頭の中を駆け巡ります。

さらに、そこで描かれるものも魅力的。

馴染み深さと、ほどよい不気味さについ細かく見入ってしまいます。

「あれなんだろう?」

「目がたくさんあるのもいるよ!」

「トナカイみたい!」

と、子どもたちも顔を近づけてじっくりと見ていました。

一目見れば、この世界の不思議な住人たちが、魅惑的な未知の世界へと惹きこんでくれることでしょう。

この、最後の最後でくつがえされる「びっくりぎょうてん」な世界観も、この絵本の大きな魅力の1つです。

きっと、この世界観を知った上でもう一度見ると、これまでの「びっくりぎょうてん」が、また違ったものに見えてくると思いますよ。

二言まとめ

曜日ごとに起こるビックリ仰天な出来事に、「びっくりぎょうてん!」と言いながら驚くのがおもしろい。

最後の最後に、想像を絶するビックリ仰天が待っている、「びっくりぎょうてん」な絵本です。

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