文:ねこしおり 絵:植垣歩子 出版:アリス館
男の子がママに「だっこー!」と叫んだら・・・
来たのは「らっこ」!?
泣いている子も思わず泣き止み、笑ってしまう絵本です。
あらすじ
男の子がママにだっこをせがんでいました。
大きな声で「だっこー!」と叫ぶ男の子。
するとやってきたのはラッコ。
男の子が「呼んでない」と言うと、らっこは去っていきました。
男の子はさらに「だっこ、だっこー!」と叫びます。
するとやってきたのは2匹のラッコ。
やっぱり男の子に「呼んでない」と言われ去っていきました。
中々だっこしてもらえない男の子は、ひっくり返って「だっこ、だっこ、だっこー!」と叫びます。
するとやってきたのは3匹のラッコ。
男の子も思わず笑ってしまいます。
3匹のラッコは「呼んでない」と言われて去っていきました。
男の子はさらに叫びます。
「もう、だっこ、だっこ、だっこ、だこだこだこだこ・・・」
すると、やってきたのはたくさんのタコ。
たこたちは、楽器を吹き鳴らし、祭りの踊りを踊りながら去っていきました。
男の子はついに泣き出しながら叫びます。
「あーん、あーん、だっこ、だっこー、こっこっこっこ・・・」
それを聞いてやってきたのは・・・?
男の子の願いはママに届くのでしょうか?
『だっこだっこらっこ』の素敵なところ
- 「だっこ」と「らっこ」の楽しい言葉遊び
- 泣く子も思わず笑ってしまう、明るく優しい生き物たち
- 優しく安心感のある最後の場面
「だっこ」と「らっこ」の楽しい言葉遊び
この絵本の醍醐味は、なんといってもシンプルで楽しい言葉遊びにあるでしょう。
「だっこ」と言ったら「らっこ」が来る。
この、語感は似てるけれど、意味の全然違うものがくるというのが、ただただおもしろいのです。
これには子どもたちも大爆笑。
「ラッコ来ちゃった!」
「だっこって言ってるのにー」
「たしかに、だっことラッコ似てるけど~」
と、しゃべっていても、笑いがこらえきれません。
さらにずるいのが、これに3回繰り返すという天丼まで加えてくるところ。
2回目は「だっこ、だっこ」だから、ラッコが2匹現れて、
3回目は「だっこ、だっこ、だっこ」で3匹現れます。
2回目以降は、子どもも流れを予想できるようになっているので、「やっぱりきたー!」と、タイミングを合わせての大笑い。
言葉遊びと、コントの王道である繰り返しの合わせ技で、笑いの渦を巻き起こしてくれるのです。
また、言葉遊びは「だっこ」と「らっこ」だけではなく、物語が進むにつれて広がって行きます。
「だこだこだこ」で「タコ」が来たり、「こっこっこっこ」で別の生き物が来たりと、「だっこ」から派生して、語感が似ている言葉のおもしろさを味あわせてくれます。
そして、そのどれもが小さな子でもわかるくらいシンプルで、かつ大きな子も笑ってしまうくらいおもしろい。
この、小さな子から大きな子まで、大笑いできるシンプルな言葉遊びのおもしろさが、この絵本のとても楽しいところです。
泣く子も思わず笑ってしまう、明るく優しい生き物たち
こうして、言葉遊びとともに出てくる生き物たち。
この生き物たちがとても気さくで優しく、泣いている男の子の気持ちを癒してくれるところも、この絵本の素敵なところの1つになっています。
泣いたり怒ったりしながら「だっこ!」と叫び続ける男の子に対し、小さなラッコは「ラッコです!ぼくのこと呼んだ?」とかわいいポーズで現れます。
さらに「だっこだっこ!」と叫ぶと、「ラッコラッコでーす!ぼくたちのこと呼んだ?」と、小さなラッコと中くらいのラッコが、身を乗り出したおもしろいポーズで登場。
タコなどは、「呼んでない」と言われても、「呼んだでしょー」とお祭り騒ぎを始めます。
ここでおもしろいのは、男の子の表情。
さっきまで怒ったり泣いたりしていたのに、ラッコを見てつい顔がほころんでしまったり、
タコを見て思わず涙が引っ込んでしまったりと、驚きのあまり泣いていたことを忘れてしまうのです。
子どもたちも、その変化に気付き、
「あ、泣き止んだよ!」
「笑ってるね!」
「ビックリしてるんじゃない?」
と、泣き止んだことを自分のことのように喜んでくれていました。
特に印象的なのは、最後に出てくる生き物で、
「涙拭いてくれてる」
「優しいね」
「お母さんみたい」
と、見ているみんなも優しい雰囲気に。
言葉遊びのおもしろさだけでなく、「だっこ」と泣いている男の子の気持ちも、同じくらい気にしているみたいです。
この、言葉遊びから出てきた気さくで優しい生き物たちが、明るく優しい行動で、「だっこ」と泣いている男の子の心を癒してくれるのも、この絵本のとても素敵で心温まるところです。
きっと、「だっこ」と泣く姿は、自分とも重なるところがあるのでしょう。
そんな男の子が泣き止むことは、自分に対する安心感と救いにもなっているのかもしれません。
優しく安心感のある最後の場面
さて、こうして色々な生き物に癒されますが、それも一時のもの。
生き物が去るとまた気持ちが戻って「だっこ」と泣き出してしまいます。
そして、この気持ちを満たしてくれるのは、たった一つの行動しかありません。
この絵本では、最後の最後にこの願いがしっかりと叶えられて終わります。
これもまた、この絵本のとても素敵なところです。
これまで大笑いしていた子も、最後の場面では「よかったね」と優しい笑顔。
男の子の「だっこ」を楽しい言葉遊びにするだけではなく、男の子の気持ちもしっかりと満たしてくれるのです。
きっと、この安心感があるからこそ、言葉遊びでも安心して笑えるのでしょう。
この、「だっこ」という言葉を、一番聞いてほしい人に聞いてもらえる、安心感に包まれる最後の場面も、この絵本のとても素敵で温かいところです。
ぜひ、読み終わった後、子どもをだっこしてあげてください。
子どもの心の中にいる男の子も、安心して笑顔になると思いますよ。
二言まとめ
「だっこ」と「らっこ」が似ているところから始まる、シンプルな言葉遊びがとにかくおもしろい。
言葉遊びに大笑いしながらも、男の子の心が癒される姿にとても安心できる絵本です。
コメント