作:長新太 出版:福音館書店
チョコレートの池がありました。
そこにパンが浸かればチョコレートパンの完成です。
でも、パンだけじゃなく他のものもやってきて・・・。
あらすじ
あるところにチョコレートの池がありました。
そこへパンたちが歩いてきて、チョコレートの池に入ります。
チョコレートパンの出来上がりです。
次になにかがやってきて、チョコレートの池に入りました。
池から細長いものが突き出して、そこからチョコレートを吐き出しています。
それはゾウでした。
次に車。
さらに、リス、ネズミ、キツネ、タヌキが池へと入ってきます。
どんどんやってくる生き物たちに、チョコレートの池はついに見かねて一言。
一体チョコレートの池が放った言葉とは?
『チョコレートパン』の素敵なところ
- とても簡単なチョコレートパンの作り方
- 次々池に入ってくるパンじゃないものたち
- 池がしゃべった!?
とても簡単なチョコレートパンの作り方
この絵本のおもしろいところは、とても簡単な足し算で出来上がるチョコレートパンの作り方でしょう。
パンがチョコレートの池に入れば、チョコレートパンが完成。
チョコレートの池や、パンが歩いてくるなどツッコミどころはたくさんありますが、子どもたちには関係ありません。
とてもわかりやすくチョコレートパンができるのです。
子どもたちは、
「チョコレートパンできた!」
「おいしそう~」
と、大喜びで見ていました。
そして、この「パン+チョコレート=チョコレートパン」わかりやすさが、この後の展開をよりおもしろいものにしてくれます。
それも含めて、とてもシンプルかつおもしろいチョコレートパンの作り方が、この絵本のとても素敵なところです。
次々池に入ってくるパンじゃないものたち
こうして、チョコレートパンが完成し、池に誰もいなくなったあと、なにかがブラブラやってきます。
そのなにかもチョコレートの池に入り、細長いものを突き出して、チョコレートを吹き出し始めるのです。
この光景が、中々に不気味。
チョコレートまみれの長細いものがたくさん突き出て、吹き出すチョコレートの形も人魂みたいなのです。
これにはブラブラやってくるのを見て、「なんだろう?」と興味津々だった子も、
「こわっ!」
「なにこれ!?」
「オバケ!?」
と、戦慄・・・。
池から出てくるのを見てゾウだとわかり、「なんだゾウか~」とホッと胸をなでおろしていました。
さらにここから車が入ると、
「車も入っちゃうの!?」
「チョコレート食べられなくなっちゃうー!」
動物が入ると、
「食べっこ動物のチョコみたい」
「ぺロッてなめたらおいしそう!」
「チョコおいしいから来たのかな?」
と、どんどんくるパンじゃないものに大盛り上がり。
チョコレートパンというタイトルなのに、全然パンが現れず、まったく関係ないものばかり次々やってくるドタバタ感がたまりません。
この、パンじゃないものが、次々チョコまみれになっていくおもしろさに、驚きと笑いが絶えないところも、この絵本のとても楽しいところです。
池がしゃべった!?
けれど、最後の場面で、その流れを止めるものが現れます。
それがなんと池本人。
ここぞとばかり、大勢集まってくる動物たちに、衝撃の一言を言い放ちます。
その内容と、言い方がものすごくシュールでおもしろい。
毅然としつつも、どこか力が抜ける言い回しになっているのです。
きっと、長新太さんの絵本を読んだことがある人なら、言わんとしていることがわかることでしょう。
この収め方が、この絵本のなんとも不思議な魅力となっています。
でも、なんとも言葉で言い表すのが難しい。
癖になるような感じとしか言いようがありません。
子どもたちも、「池がしゃべった!?」と驚きつつも、「チョコレートパンの池だもんね」と妙に納得。
これまでの大笑いが嘘のような、脱力感に包まれていました。
この、ドタバタとしたコントのような流れを一言で止めてしまう、どこかシュールで癖になる池の放つ言葉も、この絵本と長新太さんならではのとてもおもしろいところです。
長新太さんの絵本が好きなら、この絵本もきっと好きなことでしょう。
二言まとめ
チョコレートの池に、パンじゃないものが次々入ってくるおもしさに、驚きと笑いが止まらない。
予想もしていなかった不思議でシュールな終わり方が、なにやら癖になってしまう長新太さんらしいナンセンス絵本です。
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