作:夏目義一 出版:福音館書店
おいしいオムライスを作りましょう。
野菜を切って卵を割って・・・。
作っていると、切る音に混ぜる音、たくさんの楽しい音が溢れてきます。
あらすじ
ある日のお昼ごはんはオムライス。
パパと女の子でオムライスを作ります。
材料を用意したら、さっそく野菜を切っていきます。
ニンジンの皮をむくのは女の子。
ピーラーで皮をむいていきます。
皮がむけたらパパの番。
包丁でニンジンを小さく小さく切っていきます。
次はピーマン。
パパがまっぷたつにしたピーマンの種を、女の子がとっていきます。
種がとれたら、パパが小さくみじん切り。
今度は玉ねぎ。
皮をむくのは女の子。
皮がむけたら、パパがみじん切りにしていきます。
野菜が切れたら、いよいよフライパンに火を入れます。
バターを溶かし、ひき肉を炒め、さっき切った野菜を入れます。
そこに「ご飯とケチャップ、塩コショウも入れて炒めます。
しっかり混ぜて炒めて、おいしそうなケチャップご飯ができました。
次は卵を割っていきます。
ここからは女の子の仕事です。
卵を割って、ボウルに入れたらかき混ぜます。
パパがボウルを持ってくれるので、女の子は泡だて器で混ぜていきます。
しっかり卵が混ざったら、またフライパンに火を入れて・・・。
さあ、最後の仕上げです。
『おとがあふれてオムライス』の素敵なところ
- 本物そっくりな親子での料理風景
- 料理の中で聞こえてくる色々な音
- ページが進むごとに空いていくお腹
本物そっくりな親子での料理風景
この絵本のおもしろいところは、とてもリアルに親子での料理を描いているところでしょう。
絵が本物そっくりにリアルなのはもちろんのこと、その料理風景や進み方も本当の料理そっくりです。
特に「親子で」というのがポイント。
ピーラーでの皮むきや、ピーマンの種取りなど、実際に親子で料理をする時に、子どもに手伝ってもらうような部分が子どもの仕事になっています。
そこから先は、パパにバトンタッチして、包丁で切る番。
この切る時も本当の料理そっくりで、ニンジンなら輪切りにしてから、細切りにして、賽の目切りに。
ピーマンなら、へたを切って、半分に切り、子どもが種を取って、賽の目切りに。
というように、切る工程まできっちりと描かれているのです。
この、子どもと大人の役割分担と、本当の料理と同じ流れに沿ったパパの手元の動きが合わさって、本当に親子で料理をしているみたい。
子どもたちも、
「これ、うちでも同じことした!」
「うちもピーラー使う!」
「あ、これママがやってた!」
などなど、家での料理経験が呼び覚まされているようでした。
この、親子で料理するというのを、本物そっくりな絵と流れで絵で描くことで、本当に料理をしている場にいる感覚になれるところが、この絵本のとてもおもしろいところです。
料理の中で聞こえてくる色々な音
さらに、このリアルさを盛り上げてくれる、もう一つの要素も忘れてはいけません。
それが、タイトルにもなっている「音」。
この絵本では、野菜を切ったり、炒めたり、混ぜたりする時にたくさんの擬音が使われています。
けれど、その擬音は一般化されたわかりやすいものではありません。
耳で聞いた音をそのまま言葉にしたような、とてもリアルなものになっているのです。
ニンジンのピーラーで皮をむく時は「しゃっしょっしょっ、しゃっしょっしょっ」
輪切りは「たくん、たくん」
細切りは「しゃぐっ、しゃぐっ」
バターをフライパンに入れたら「ぱちぱちぱちぱち、ちゅー」
炒める時は「じゃう、じゃう、じゃう、じゃう」
こんな風に、臨場感たっぷりな音ばかり。
本当に音が溢れているようです。
これが、リアルな絵と料理の流れと相まって、料理に躍動感と臨場感を与えてくれます。
この音が加わることで、もうその場はキッチンとなり、炒めた時の熱も感じられることでしょう。
この、臨場感たっぷりの、聞こえてきた音をそのまま言葉にしているような擬音も、この絵本ならではのとてもおもしろいところです。
ページが進むごとに空いていくお腹
さて、こんなリアルな料理を見ていたら、当然のようにお腹が空いてきます。
でも、ただお腹がすくわけではありません。
これまた本当の料理風景と同じようにお腹が空いてくるのが、おもしろいところなのです。
物語の序盤は、あまりお腹が空きません。
なぜなら、生野菜を切っているだけだから。
料理の手伝いをしたことがある子なら、むしろ青臭い匂いを思い出し、食欲が減退するかも・・・。
ですが、野菜を切り終わり、炒めるタイミングになれば話は別です。
バターの溶けるいい匂い。
ひき肉を炒めるジューシーな匂い。
ケチャップが混ざるケチャップライスの独特な匂い。
そんないい匂いが、料理が進んでいくごとに脳内に再生されていくのです。
この、完成に近づくにつれ、少しずついい匂いが増え、加速度的に空いていくお腹の感じ。
これを、この絵本でも感じ取れるのがすごいところ。
子どもたちからも、
「あ~バターのいい匂い思い出す~」
「お腹空いてきた~」
「ケチャップライスつまみ食いしたい~」
と、まさに料理を目の前で見ている時に出てくる言葉が。
この、料理だけでなく、料理をしている時にともなう感情や空腹感まで味わえるのも、この絵本のとてもすごい素敵なところです。
この絵本を読んだら、さっそくオムライスを作ってみましょう。
きっと、いつもより、料理の工程や、音への感度が上がり、新しい発見や感動があると思いますよ。
二言まとめ
親子でオムライスを作る様子を、本物そっくりの絵と音で、リアルに描き出した。
本当に自分がキッチンにいて、料理をしている感覚が強く味わえる料理絵本です。
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