【絵本】ゆらゆら(4歳~)

絵本

作:北澤平祐 出版:講談社

願いを叶えてくれけど、あっという間に消えてしまう流れ星。

そんな中、とてものんびりな流れ星がいました。

のんびり過ぎて、到着した時には夜が明けてしまい・・・。

あらすじ

空の上に、ゆらゆらという流れ星がしました。

みんなと違い、丸みをおびた形をしているし、のんびりのろまだけど、願い事はちゃんと叶えることができます。

今夜もたくさんの逃れ星が、願いを叶えようと張り切って飛び出しました。

みんなあっという間に見えなくなり、残ったのはゆらゆらだけ。

けれど、そんなことは気にせず、ゆらゆらはあっちこっちにふらふらと流れながら、ゆっくり飛んでいくのでした。

それがあまりにのろまなので、地球に着いた頃には夜が明けてしまっていました。

ゆらゆらはゆっくり飛び回りながら、みんなの願い事を聞こうとしました。

でも、朝はみんな忙しく、誰もゆらゆらに気付きません。

お昼になり、賑わう公園に来てみましたが、そこでは意地悪なお日様に邪魔をされ、やっぱり誰からも気が付いてもらえませんでした。

お日様から逃げて、辿り着いた先は薄暗い森。

そこでは、森の動物たちが集まってきてくれました。

ようやく願いが叶えられると思った時、オバケたちが現れてゆらゆらを仲間だと勘違い。

動物たちは怖がって、みんな逃げてしまったのでした。

やがて、お日様が沈み、夜がやってきました。

「今度こそ」と思っていたゆらゆらでしたが、深い霧が辺りを包み、ゆらゆらを隠してしまったのです。

ゆらゆらは誰にも気付かれることなく、しょんぼりしながら流されていきます。

それからしばらく経った頃、どこからか笑い声が聞こえてきました。

そして、待ちに待った願い事まで。

その願いは「霧を晴らしてほしいと」いうもの。

ゆらゆらは喜んで、声のする方へ手をかざして霧を晴らしてあげました。

霧が晴れ、ゆらゆらの目の前に現れたのは・・・。

『ゆらゆら』の素敵なところ

  • のんびりのろまなことの良さ
  • 現実とリンクする昼間に見つけてもらえないゆらゆら
  • やっぱり星を輝かせてくれるのは・・・

のんびりのろまなことの良さ

この絵本のとても印象的なのは、のんびりのろまな流れ星のゆらゆらでしょう。

流れ星と言えば、消える前に願い事を3回言わないといけないけれど、あっという間に消えてしまうというイメージでしょう。

もちろん形も、そのスピード感に合った鋭いもの。

ほうきのしっぽも持っていて、見るからに速そうです。

けれど、このゆらゆらは違います。

形は丸みを帯びていて、星というよりクッキーみたい。

流れ方も鋭くまっすぐ流れることができず、あっちこっちゆらゆらふらふら流れていきます。

なにしろ、地球に着くころには朝を迎えてしまうのですから。

ですが、それがいいことだとも、困ったことだとも描かれないのがこの絵本の素敵なところ。

他の流れ星とは違いますが、そののんびりさの中で生きるゆらゆらの苦労と、のんびりだからこそよかったことの両方がゆらゆらの姿を通して描かれます。

のんびりしすぎたから、夜明けに間に合わず、昼間に見つけてもらう大変さを味わい、

でも、のんびりだからこそ、たくさんの願いを叶えられるという嬉しさも感じ・・・。

そんな風に、のんびりのいい面も、困った面も見ることで、「のんびりはよくない」と思われがちな視野を広げてくれるのです。

それぞれ、「いいところも困ったところもある」。

そんな忘れがちな当たり前のことに、ゆらゆらを通して気付かせてくれるのが、この絵本のとても素敵なところです。

現実とリンクする昼間に見つけてもらえないゆらゆら

また、普段あまり見ない、昼間の星の大変さを体験できるのも、この絵本のおもしろいところとなっています。

のんびりしすぎて、着くのが朝になってしまったゆらゆら。

朝はみんな忙しすぎて、空なんか見ていられず気付いてもらえません。

さらに、昼間になるとギラギラしたお日様の光に照らされ、星の光は隠されてしまいます。

うす暗い森では、オバケに間違われる始末・・・。

と、明るいうちは踏んだり蹴ったりなゆらゆら。

でも、これがなんとなく昼間の空に星が見えないこととリンクしていておもしろい。

だって、月は見えているのですから。

確かに、真昼の空でも月はうっすら見えますが、星はまったく見えません。

このゆらゆらの姿を見ていると、もしかしたらお日様に意地悪されているだけで、星もいるのかもと思わせてくれるのです。

それに、朝もう少しのんびりしたり、昼間もお日様にばかり注目しなければ、見つけてあげられるかもと。

この、昼間のゆらゆらの苦労が、自分たちの生活に当てはまり、「今度、昼間の星も探してあげようかな」と思えるところも、この絵本の現実とリンクするおもしろいところです。

やっぱり星を輝かせてくれるのは・・・

さて、結局、お日様がいる間は誰にも見つけてもらえなかったゆらゆら。

しかし、夜になっても深い霧に覆われて、見つけてもらうことができずしょんぼりしてしまいます。

そこへ、ついに願い事をしてくれる誰かが現れます。

この願い事が、とてもゆらゆらのことを思った素敵なものになっています。

声の主はこう言います。

「流れ星さん、流れ星さん、せっかくおめかしをしたのに、これじゃあ誰とも会えやしない。どうかこの霧を晴らしてくれないか?」

と。

一見、自分のために見える願い事ですが、声の主の本当の願いはきっと、霧を晴らし、ゆらゆらをみんなに見えるようにすることだったのでしょう。

でも、ゆらゆらにそんなことを考えさせないよう、自分の願いのように頼む声の主。

本当にゆらゆらのことを大切に思って、応援しているのが伝わってきます。

そして、この声の主はもちろんゆらゆらをずっと見守ってきた・・・。

この声の主が、「お星さまにずっと寄り添ってくれるのはやっぱり・・・」と思わせてくれるところと、だからこそ、ゆらゆらへの慈しみにものすごい納得感があるとろも、この絵本のとても素敵で優しい気持ちになれるところです。

この絵本を見た後に夜空を見上げると、いつもよりも優しく温かい空に見えることでしょう。

ふらふらしているゆらゆらを、見つけることができるかもしれませんよ。

二言まとめ

のんびりのろまな流れ星を通して、「のんびりも悪くないなぁ」と思わせてくれる。

見たら、夜空の光がより優しく温かなものに見えてくる、のんびりゆったりな絵本です。

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