作:服部千春 絵:ほそいさつき 出版:岩崎書店
子どもたちが芋堀をしていると、お芋と一緒に子ネズミが。
慌てて逃げ出した子ネズミでしたが、逃げた先は先生のポケットの中。
誰も気づかないまま、園に連れていかれてしまったのでした。
あらすじ
あるところに、ネズミの家族が暮らしていました。
今日は、初めてのお芋狩りの日。
子ネズミたちはワクワクしています。
お芋畑に着いたネズミの家族は、人間に見つからないよう、隅に置いてある小さなお芋を食べることにしました。
ですが、兄弟で一番小さなチョロは、もっとお芋が食べたくて、土の中に潜ってしまいます。
と、その時。
人間の子どもたちの歌声が聞こえてきました。
ネズミの家族は、大急ぎで逃げ出します。
ですが、チョロはそのことに全く気付かず、土の中でお芋を食べ続けていたのでした。
お芋畑にやってきたのはおひさまえんの子どもたち。
今日は、芋ほり遠足の日だったのです。
まずは、先生が芋ほりの仕方を教えます。
先生がツルを引っ張り、お芋を引き抜くと、まん丸に太ったたくさんのお芋がくっついていました。
お芋だけでなく、お芋にかじりついていたチョロまでも・・・。
ネズミが苦手な先生は、びっくりして叫びます。
その叫び声にびっくりしたチョロも、慌てて逃げ出します。
チョロは、近くの穴に飛び込むと、ほっとして気が遠くなってしまいました。
しばらくして、チョロは子どもたちの歌声で目を覚ましました。
なんと、そこはおひさまえん。
チョロが飛び込んだのは、先生のリュックサックのポケットだったのです。
おひさまえんに来たチョロは、始めて見る物ばかりで大興奮。
さっそく、ポケットから飛び出して、遊びだしました。
積み木の家を走り抜け、ぬいぐるみに乗り、おもちゃのパトカーで園庭に飛び出します。
園庭で、チョロがすべり台を降りたその時、なんだかいい匂いがしてうっとり。
その隙に、子どもたちにつかまってしまいました。
子どもたちに、お芋が食べたかったのかと聞かれ、うなずくチョロ。
すると、おやつのお芋入り蒸しパンを子どもたちが持ってきてくれました。
その蒸しパンのおいしいこと。
チョロは夢中で蒸しパンを食べました。
先生はその様子を遠くから見ていましたが、子どもたちが先生の手にチョロを乗せると、少しずつ慣れやっと先生の顔に笑顔が浮かびました。
チョロを畑に返しに行くと、そこにいたのは・・・。
『おイモだ、ほい!』の素敵なところ
- 芋ほりを通した偶然の出会い
- 思わず「かわいい~」と言ってしまうほどチャーミングなチョロ
- 作ってみたくなるほどおいしそうなお芋入り蒸しパン
芋ほりを通した偶然の出会い
この絵本のとてもおもしろいところは、ネズミと人間の芋ほりが重なったことから起こる偶然の出会いでしょう。
芋を掘り出したら、その芋と一緒に出てくるネズミ。
そりゃ、びっくりして悲鳴もあげてしまいます。
さらに、リュックのポケットに入ってしまうという偶然が重なり、チョロはおひさまえんまで来てしまうのです。
お母さんと離れ離れになって、人間の世界にやってきてしまう子ネズミ。
これにドキドキしないはずがありません。
「この穴、ポケットみたいじゃない?」
「どうしよう!保育園に来ちゃうよ!」
「先生またびっくりしちゃう!」
と、子どもたちも焦ります。
でも、おひさまえんについてみると、そんな心配もどこ吹く風で、楽しそうに遊び回るチョロ。
これはこれで、子どもたちは大喜び。
だって、ネズミと一緒に遊べる機会なんて中々ありませんから。
おもちゃで遊ぶチョロも、それを追いかける子どもたちもとても楽しそう。
それを見て、
「楽しそ~!」
「いいな~」
「ネズミと遊んでみたい!」
と、羨ましがる子どもたち。
特に、お芋入り蒸しパンをあげる場面は、チョロのかわいさも相まって、とても羨ましそうでした。
この、とても楽しそうなひと時に繋がる、お芋堀を通した偶然の出会いが、この絵本のとてもおもしろいところです。
思わず「かわいい~」と言ってしまうほどチャーミングなチョロ
また、この羨ましさは、チョロがかわいすぎるところも大きな要因となっています。
まず、登場シーンからしてかわいいチョロ。
お母さんがネズミの兄弟を並べる時、子ネズミたちが数を言うのですが、
「いち!」「に!」「さん!」「し!」と数を言うのに対し、数のわからないチョロだけは「チョロ!」と自分の名前を言って手を挙げてしまいます。
この時点でちっちゃな子の持つかわいさを印象付けてくるのです。
さらに、笑顔でパトカーに乗るチョロや、すべり台を滑り駆け回るチョロなど、一緒に遊んだら楽しそうなわんぱくさも見せつけてくるからたまりません。
こんなのを見たら、一緒に追いかけっこしたくなってきます。
さらにさらに、一番かわいいと言ってもいいかもしれないのが、おイモ入り蒸しパンを食べている場面。
わんぱくな子が、食べ物を口に入れると、ピタッと大人しくなる独特のかわいさと、もそもそ食べるネズミらしいかわいさがミックスされて、とてつもなくかわいい・・・。
子どもたちも、
「食べてるところかわいいね!」
「ほっぺ膨らむかな?」
「わたしも、あげてみたい!」
と、かわいさにメロメロでした。
この、思わず触りたくなるチョロのかわいさも、この絵本の大きな魅力です。
作ってみたくなるほどおいしそうなお芋入り蒸しパン
さて、こうしてチョロにあげるために渡したお芋入り蒸しパン。
ここにも、この絵本の大きま魅力が詰っています。
そう、今すぐ食べたくなるほど美味しそうなのです。
チョロがおいしそうに食べる姿もそうなのですが、
「初めて食べる蒸しパンは、甘くてふかふかで、そのおいしいこと、おいしいこと」
という、チョロの感想も相まって、ものすごく食べたくなってくるのです。
また、最後のページに描かれている絵も、お芋入り蒸しパンが本当においしそう。
芋ほりに行っても行かなくても、家で作ってみたくなってしまいます。
この、甘さとフワフワ感の伝わってくる、とても美味しそうなお芋入り蒸しパンも、この絵本の多くな魅力の1つです。
芋ほりの前に読めば、掘ったお芋で作りたい料理の上位にお芋入り蒸しパンが入ってくることでしょう。
二言まとめ
小さくてかわいいネズミが、自分の園にやってきて、一緒に遊べるというシチュエーションが楽しくて羨ましい。
チョロと一緒に、自分もお芋入り蒸しパンが食べたくなる、芋ほり絵本です。
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