文:ケイト・バーンハイマー 絵:クリス・シーバン 訳:福本友美子 出版:岩崎書店
昔、何十回、何百回読んでも飽きなかったお気に入りの絵本。
そんな絵本はありませんでしたか。
その絵本に出会えたことは自分だけでなく、絵本にも幸せなことだと思います。
そんな絵本をまた読み返したくなるようなお話です。
あらすじ
ある日、図書館に新しい本が一冊入りました。
うぐいす色の表紙で、黄色いしおりひもがついています。
表紙には森の中で女の子が1人、大きなキノコの下に立っている絵が描いてあります。
新しい本の棚に置いてあるその本は、大勢の子どもたちに借りられて、いつも貸し出し中でした。
しばらく経ち、子どもの本の棚に移されましたが、それでも人気でした。
本は幸せに暮らしていました。
それから何年も経つと、借りていかれることはめったになくなりました。
色褪せたり、破れたり、ページがなくなっているところもありました。
それからまた、何年も経つと借りていかれることはなくなりました。
本はさみしくなりました。
ある晩、子どもの手から落ち、暗い部屋の隅に転がったまま誰にも見つけてもらえなくなってしまいました。
次の日、小さな女の子が本を読んでいると、落ちている本に気が付きました。
落ちている本を読んでみると気に入って、借りていくことにしました。
毎日寝る前にお父さんが読んでくれました。
でも、その後も月の光で続きを読み、破れている所やなくなったページを思い浮かべ、枕の下に入れて眠りました。
学校でもこの本のことをみんなに教えました。
本はこんなに大事にされたことはありませんでした。
次の週、図書館ではお姫様とライオンが出てくる面白いお話を読んでくれるイベントがありました。
女の子はその本を借りることにしました。
あの古い本を借り直そうとしていたことは忘れてしまっていました。
家に帰るとすぐに思い出し、借りに行こうとしましたがもう図書館は閉まっている時間でした。
次に図書館に行けるのは今度の土曜日でした。
土曜日になり、あの本を探しましたが見つかりませんでした。
あの本は地下室にあるセールに出す本の棚に移されていたのです。
毎週探しましたが見つかりませんでした。
本も会いたくてたまりませんでした。
こんなにさみしかったのは初めてです。
しばらくすると、女の子は段々あの本のことを思い出さなくなりました。
他にも面白い本がたくさんあったからです。
女の子と古い本はもう会うことはないのでしょうか。
『さみしかった本』の素敵なところ
- 綺麗で幻想的な絵
- その本を好きな気持ちや、読んでいる時の幸せな気持ちが伝わってくる
- 自分のお気に入りの本と重ね合わせ、大切にしようと思える
とても綺麗な絵で描かれるこの絵本。
月明かりの下で絵本を読んでいる所や、女の子が絵本の情景を想像するところなど、とても幻想的です。
特に最後のページは思わずため息が出てしまいます。
綺麗なだけでなく、表情も豊かに描かれています。
それによって、本と出合った時の一目ぼれした顔や、絵本を読んでいる時の幸せそうな表情、本が見つからない時のさみしそうな顔などから、どんなにこの本が好きかが伝わってきます。
そんな本と女の子の姿に、自分の家にあるお気に入りの本と自分との姿が重なります。
そして、その本の気持ちにも思いをはせることでしょう。
たまらなくその本が読みたくなり、触りたくなり、大切にしたいと思います。
そんなお話です。
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