【絵本】あのひのクジラ(4歳~)

絵本

作:ベンジー・デイヴィス 訳:村上康成 出版:ブロンズ新社

大嵐の翌日、砂浜に小さなクジラが打ち上げられていました。

それを見つけた男の子は、家へ連れ帰り世話をすることに。

でも、すぐお父さんに見つかって・・・。

あらすじ

男の子ノイは、お父さんと6匹のネコと、海のそばで暮らしていました。

お父さんは、朝早くから魚釣りの仕事に出かけ、夜まで帰ってきません。

ある嵐来た翌日のこと。

ノイは浜辺になにか打ち上げられていないか様子を見に行きました。

すると、砂浜には、小さなクジラが打ち上げられていたではありませんか。

このままでは、クジラが乾いてしまいます。

ノイは、クジラを家へ連れて帰ることにしました。

ノイはクジラをバスタブに入れ、色々な話をしてあげました。

やがて、日が暮れ、お父さんが帰ってくる時間に。

ノイは、お父さんにクジラが見つからないかドキドキしました。

ドキドキしながら夕飯を食べ、ドキドキしながらクジラへ魚を持っていきました。

でも、もちろんすぐにバレました・・・。

けれど、お父さんは怒りませんでした。

そして、お父さんが家にいないという、ノイの寂しさに気が付きました。

だけど、クジラは海に帰してやらないといけません。

お父さんとノイは、船でクジラを沖まで連れていき、海へ帰しました。

ノイは、クジラとの別れは辛かったけれど、お父さんが側にいてくれる嬉しさも感じていたのでした。

別れた後もノイは、クジラのことをいつも思っていました。

そんな中、お父さんとピクニックに出かけたある日・・・。

『あのひのクジラ』の素敵なところ

  • 小さなクジラとの出会いが羨ましい
  • クジラとの出会いを通して気付く、口に出さないノイの寂しさ
  • 思わず笑顔になってしまう、別れで終わらない最後の場面

小さなクジラとの出会いが羨ましい

この絵本のとてもワクワクするところは、ノイと小さなクジラの出会いでしょう。

ノイが子どもなりに、一生懸命考えてクジラの世話をする姿は、とても微笑ましいものになっています。

それと同時に、とても楽しそうで羨ましい気持ちにも。

なんで、子どもの動物と出会い、世話をするというのは、こんなにも心を躍らせるのでしょう。

しかも、それが本来はお世話するどころではない、大きなクジラの子どもだというのですからその気持ちもより高まります。

子どもたちも、バスタブに入るクジラを見て、

「かわいい!」

「いいな~、うちにもクジラこないかな~」

「ご飯あげてみたい!」

と、やっぱり羨ましそう。

子どもがクジラの世話をするという構図に、目をキラキラさせているのでした。

と、同時にお父さんにバレないかというドキドキ感も。

子どもたちも、「お風呂入ろうとしたらバレちゃうんじゃない!?」「隠せるかな?」と、一緒にドキドキ。

まさに、ノイと一緒にクジラのお世話をしている気分になっているのでしょう。

この、羨ましさを感じつつも、ノイと一体になりクジラのお世話を楽しめるという、素敵な偶然の出会いが、この絵本のとても楽しいところです。

クジラとの出会いを通して気付く、口に出さないノイの寂しさ

そんなクジラとの出会いを通して、ノイとお父さんはあることに気付きます。

それが、ノイの感じている寂しさでした。

朝早くから仕事に行ってしまい、日中は1人ぼっちのノイ。

おそらくお母さんはいないのでしょう。

でも、それが当たり前になっているのか、ノイは寂しさを口に出すことはありません。

そんなノイが、思っていることをありのまましゃべる場面があります。

その場面とは、クジラが気持ちよくいられるように、島の暮らしを話してあげる場面。

その姿からは、久しぶりに話し相手ができた嬉しさが滲み出ているのです。

きっと、本来はお父さんに聞いてもらいたいことでしょう。

もしかしたら愚痴も混ざっているかもしれません。

誰かに話しを聞いてもらいたいというノイの気持ちが溢れだしているのが、なんとなく感じ取れるのです。

さらにそこから、クジラがお父さんに見つかる場面に繋がります。

お父さんは怒らないどころか、ノイを抱きしめ、その寂しさを感じ取ってくれるのです。

もしかしたら、文章として描かれていませんが、ノイが本音をお父さんに語っていたかもしれません。

これは、クジラとの出会いがなければ、お互いにこの日常が当たり前だと思って、気付きもしなかったことでしょう。

それに、クジラとの出会いがきっかけで、気付かせてくれたのです。

この、クジラとの出会いを通して、親子の本音が通じ合う、心温まる展開もこの絵本のとても素敵なところです。

思わず笑顔になってしまう、別れで終わらない最後の場面

こうして、お父さんとのわだかまりを解消し、一緒にクジラを海へ帰しに行くことにしたノイ。

その後は、お父さんとピクニックに行く姿から、お父さんがノイのために時間を作るようになったことが伝わってきます。

そんなある日のピクニックが最後の場面。

そこで、とても嬉しい光景を目にします。

それは、あの日が別れではなかったことを証明してくれる場面です。

子どもたちも、

「あの小さいのがあの子だよ!」

「また会えたね!」

「ありがとうって言ってるんじゃない?」

と、とても嬉しそう。

その姿は、ノイの嬉しそうな姿にピタリと重なっているようでした。

この、また会えた嬉しさや、無事に群れへ帰れた安心感など、色々な気持ちが湧きおこる、あの日が別れでは終わらなかったことを見せてくれる最後の場面も、この絵本のとても嬉しくなる素敵なところです。

二言まとめ

小さなクジラとの出会いと、そのお世話をする姿が、とても楽しそうで、クジラがかわいくて、羨ましくなる。

クジラとの出会いをきっかけに、親子が互いの素直な気持ちに気付くヒューマンドラマにも心が温まる絵本です。

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