作:あまんきみこ 絵:垂石眞子 出版:福音館書店
女の子が青い傘を買いました。
理由は、青空みたいに見えるから。
そんな、青空みたいな傘を見て、たくさんの動物たちも雨宿りにやってきました。
あらすじ
雨の中、女の子が、お母さんと一緒に傘屋さんへやってきました。
女の子が傘をなくしてしまったので、新しいものを買いに来たのです。
色々な傘がありましたが、女の子は青い傘に決めました。
理由は、晴れた日の空の色みたいだったから。
女の子はさっそく新しい傘をさして、雨の中を公園へ行ってみました。
公園に着き、女の子が歌いながら、クルクル傘を回していると・・・
草むらが揺れ、子ネズミたちが顔を出しました。
子ネズミたちは、傘の中に飛び込むと、本当に青空の下にいるみたいで大喜びでした。
すると今度は、木の影や草の間からも動物たちが現れました。
子ウサギに小ジカ、子ギツネに小グマまで。
みんな傘の中に入ってきました。
さらに、虫や鳥たちも一斉に傘の中へ。
さらにさらに、公園で遊んでいた友だちもみんな傘の中へ入ってきました。
そんな中、ふと女の子が傘を見上げて見ると、なんと傘がずんずん大きくなっていくではありませんか。
女の子は、「やっぱりこの傘は青空なんだ」と思いました。
青空の傘の下、友だちや動物たちみんなで歌って遊びます。
と、しばらく遊んでいると、どこかから「虹が出たよう」という誰かの声が。
みんなで空を見てみると・・・。
『わたしのかさはそらのいろ』の素敵なところ
- 傘に入りきれないほどの動物や友だちが入ってくるおもしろさ
- 本当の青空のような不思議な傘
- 想像力を膨らませてくれる最後の声の正体
傘に入りきれないほどの動物や友だちが入ってくるおもしろさ
この絵本のとてもおもしろいところは、傘の中に動物たちや友だちが次々に入ってくるところでしょう。
子ネズミに、子ウサギ、子ぎつね、子グマ、子ジカ、鳥に虫たちから、友だちが4人。
とてもじゃないけれど、一つに傘に入りきれないほどの人数です。
子どもたちも、それが体感でわかるので、どんどん増えるたび、
「えー!?もう入らないよ!」
「こんなにたくさん入れる!?」
と、驚きとワクワクを感じている様でした。
この、ページをめくるごとにすごい勢いで増えていく、傘の下の仲間たちがこの絵本のとてもおもしろいところです。
また、傘に入ってくる時の合言葉も、この場面を楽しいものにしてくれている見逃せないポイント。
動物たちも子どもたちもみんな、
「いーれて」「いーれて」「いーれて」
と言いながら入ってくるのです。
これがなんともテンポよく、聞いていて心地いい。
つい、「いいよ~」と言いたくなってしまうでしょう。
このテンポ感が、ページめくりと、どんどん入ってくる仲間たちのテンポ感と合わさって、流れるように物語が進んでいきます。
この流れが、子どもたちをどんどんこの不思議で素敵な物語に引き込んでいってくれるのです。
ぜひ、この心地よい言葉と物語の流れを、読んでみて聞いてみてほしいところです。
きっと、心が躍るような楽しさを感じられると思いますよ。
本当の青空のような不思議な傘
こうして、どんどん入ってくる仲間たち。
ですが、もちろん普通の傘に入りきる人数ではありません。
ここで、子どもたちはあることに気付きます。
「あれ?傘が大きくなってない?」
そう、この傘は仲間が増えるごとに、段々大きくなっているのです。
さらにここからが、この傘のすごいところであり、不思議なところ。
そこから一気に広がって本当の青空のようになってしまうのです。
その大きさは、これだけ多くの仲間が、歌ったり踊ったりできるほどの大きさ。
まるで、公園全体を包み込んでしまっているようなスケール感です。
これには、子どもたちも、
「本当に青空みたいになった!」
「傘が晴れにしてくれたのかな?」
「いい天気みたいだね!」
と、女の子と同じ気持ちになっているようでした。
ここでおもしろいのが、しっかりと傘だと言う要素が残っていること。
ただ、青空になるだけではなく、女の子がずっと傘の柄を握っていたり、頭の上は青空だけれど、遠くの方に傘の縁がちゃんと見えているなど、あくまで傘の下にいると言うことを思い出させてくれるのです。
これがあるから、「やっぱり傘の下にいるんだ」ということが実感できて、よりこの傘の不思議さが際立つのでしょう。
この、下にいる人に合わせて、本当の青空のように広がっていく傘の不思議さも、こんな傘があったらいいなと思わせてくれる、この絵本のとても素敵なところです。
想像力を膨らませてくれる最後の声の正体
さて、傘の下で楽しく遊んでいる中、聞いたことのない声が聞こえてきます。
その声は虹が出たことを教えてくれる声。
この声の正体が、見ている人の想像力を膨らませてくれるのも、この絵本の素敵なところとなっています。
実は、この声の正体は物語の中では語られません。
でも、雨がやみ傘を閉じた後の、女の子と傘の様子を見ていると、なんとなく想像できるのです。
この想像力を膨らませ「もしかしてあの声って・・・」と考えを巡らせる心地よい余韻もまた、この絵本のとても素敵なところです。
そして、この余韻が傘の不思議さと素敵さをより際立たせてくれのです。
最後まで見た時、この傘が「不思議な傘」から「魔法の傘」のように見えてくるかもしれません。
二言まとめ
1つの傘には入りきらないほどの仲間たちが、次々入ってくる展開にワクワクと驚きが止まらない。
それに合わせて、本当の青空のように広がって行く不思議な傘が、とても魅力的で目が離せない、雨の日絵本です。
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