文:えのもとえつこ 絵:鎌田歩 出版:福音館書店
子どもたちに大人気の踏切。
そんな踏切の1日の仕事を紹介します。
擬人化した踏切の仕事を見て、もっと踏切が好きになり身近に感じられる絵本です。
あらすじ
駅のそばに、ふみきりくんがおりました。
ふみきりくんには、長い遮断機がついていて、電車が来ると、赤い目玉をピカピカさせながら、かんかんかんと音を鳴らし、遮断機を降ろします。
朝になると、ふみきりくんの仕事が始まります。
最初の電車に合わせ、遮断機を降ろします。
そして、電車が駅に着いたのを確かめると、遮断機をあげました。
やがて、人が多くなってきました。
ふみきりくんは電車が通るたび、遮断機を下げて「電車が通りまーす!お待ちくださーい!」と声をかけます。
みんなも遮断機が下りると止まります。
電車が次々やってくるので、ふみきりくんは何度も遮断機を上げ下げして大忙し。
急行電車も、特急電車も通ります。
こうして、いつも通りふみきりくんが遮断機をおろしていた時のこと。
向こうから、ものすごいスピードでトラックが走ってくるのが見えました。
どうやら急いでいるようです。
ふみきりくんは、かんかんかん「止まれ止まれ!」と大声で叫びます。
トラックは急いで急ブレーキ。
間一髪、事故になるのを防いだのでした。
やがて夜になり、最後の電車を見送ると、駅の電気が消え、ふみきりくんの仕事も終わります。
『ふみきりくん』の素敵なところ
- 踏切のしている大切な仕事がよくわかる
- 擬人化されて、とても親近感が持てるふみきりくん
- 踏切から電車を見ている楽しさが味わえる
踏切のしている大切な仕事がよくわかる
この絵本のおもしろいところは、ふみきりくんの姿を通して、踏切がどんな仕事をしているのかがよくわかるところでしょう。
最初の電車とともに始まり、最後の電車とともに終わる長い1日。
その中で、踏切はとても大切な仕事をしています。
子どもたちに人気の踏切ですが、そのインパクトに引っ張られ、「電車が通る時に閉まる」という、なんとなくの役割しかわかっていない子も多いと思います。
また、踏切が減ってきているのもあり、おもちゃや物語の中でしか知らない子も結構いることでしょう。
そんな時、この絵本は踏切が事故を防ぐ大切な仕事をしていることを、とてもわかりやすく見せてくれるのです。
特に、トラックが猛スピードで走ってくるところでは危機一髪。
踏切がなかったら、大事故に繋がっていたことが改めて実感できます。
この、遮断機や、音、赤い点滅が、どれもみんなの安全を守るために大切なもので、どんな役割を果たしているのかを、実際に踏切が働く姿からすることができるのが、この絵本のとても素敵なところです。
擬人化されて、とても親近感が持てるふみきりくん
こうして、踏切の大切な仕事を伝えてくれるこの絵本ですが、こんなにもわかりやすく伝わるのには秘密があります。
それが、踏切をふみきりくんとして擬人化しているところです。
よく見ると顔に見える、踏切の形を活かし、擬人化しているふみきりくん。
きっと、この絵本を見たら、踏切がふみきりくんの顔にしか見えなくなることでしょう。
擬人化したことで、見た目に親近感が湧くのはもちろんのこと、声が届くようになるのがとても大きなポイントです。
本物の踏切は「かんかんかん」という音しかしません。
ですが、ふみきりくんは「かんかんかん」という音とともに、「電車が通りまーす!」お待ちくださーい!」や「止まれ止まれ!」としゃべるのです。
これにより、ただの警告音から、踏切の言葉となり、その役割がより理解できるのです。
また、擬人化したことで、物語に入り込めるようになり、物語に入り込むことで、自然に踏切の役割や仕事が体感できます。
そして、体感することで頭ではなく、体全体で踏切の大切な役割がわかるのです。
この、擬人化し、踏切がより身近な存在にすることで、その役割をとてもわかりやすく親しみを持って伝えてくれるのも、この絵本の素敵なところです。
きっと、この絵本を見たら、踏切のことをもっと身近に感じ、大好きになると思います。
踏切から電車を見ている楽しさが味わえる
さて、そんな踏切の大切さがよくわかるこの絵本。
実は、もう1つとても楽しいところがあります。
それは、踏切を通る電車を臨場感たっぷりに眺められるところ。
乗り物好きにとって踏切は、駅以外で電車を目の前で見れる大興奮のスポットです。
踏切を題材にしたこの絵本では、その楽しさもしっかり味あわせてくれます。
踏切を通過する普通列車。
普通列車同士のすれ違い。
たまに通るレアな特急列車。
など、踏切を電車が猛スピードで通過する姿を、スピード感抜群に描き出しているのです。
電車が通るたび子どもたちは、
「電車きたよ!」
「なに電車かな?」
「新幹線!!」
と、大喜び。
本当に、踏切の前にいるようでした。
この、ふみきりくんになり切りつつも、踏切の前で電車を眺めている楽しさも味わえる、踏切のよさを余すところなく楽しめるところも、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
踏切を擬人化することで、その大切な仕事や役割を、とてもわかりやすく伝えてくれる。
見れば、踏切のことをもっと身近に感じ、もっともっと好きになる乗り物絵本です。
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