【絵本】たかこ(5歳~)

絵本

文:清水真裕 絵:青山友美 出版:童心社

ある日、学校に転校生がやってきた。

でも、その姿はまるで平安時代の人みたい。

衣服もしゃべり方も古典的な、たかことの学校生活が始まります。

あらすじ

男の子の学校に、転校生がやってきた。

名前はたかこ。

扇で顔を隠し、お雛様のような着物を着ている。

たかこの席は、男の子のとなり。

男の子が「よろしく」というと、「こころやすくならむ」と返事が返ってきた。

どうしてそんな言葉なのかを聞くと、「いとはづかし」と、たかこは扇で顔を隠してしまった。

たかこは普通の子とは違っていた。

鉛筆の代わりに、墨と筆で字を書き、

リコーダーの代わりに琵琶を弾いた。

たかこはとても勉強ができた。

ある日、たかこがテストでほかの子に負けた。

その日は、一日中不機嫌そうだった。

そんなたかこを見て、クラスの子はたかこがいつもいばっていると感じた。

それ以来、たかこの言葉を真似たり、長い着物を踏んづける遊びが流行った。

たかこは怒って、みんなを追い立てた。

そんなある日、たかこの扇がなくなった。

たかこは扇の代わりに下敷きで顔を隠している。

男の子は探すのを手伝うことにし、ロッカーの奥から扇を見つけ出すことができた。

遠足の日がやってきて、男の子たちは、野原へとやってきていた。

晴れていたのだが、昼過ぎになり急に空が真っ暗に。

そして、雷とともにひょうが降り始めたのだった。

逃げ惑う子どもたち。

それを見て立ち上がったのはたかこだった。

たかこは自分の着物をつかむと・・・。

たかこはいったい何をしようというのでしょうか?

『たかこ』の素敵なところ

  • とても不思議でユニークなたかこのキャラクター
  • たかこと男の子の素敵な関係性
  • たかこならではの昔の文化が垣間見える助け方

とても不思議でユニークなたかこのキャラクター

この絵本でもっとも印象的なところは、たかこのユニークすぎるキャラクターでしょう。

まるで、平安時代からタイムスリップしてきたかのような、いで立ちとしゃべり方にいきなり度肝を抜かれます。

子どもたちも、

「昔の人みたい!」

「タイムスリップしてきたのかな?」

「今の人だけど、こういう格好してるの?」

と、ごく当たり前のように転校してくるたかこに、驚きと困惑を隠せません。

けれど、そのバックボーンが説明されることはないので正解はわかりません。

わからないからこそ、いろいろと想像が膨らむのも、たかこの魅力です。

でも、一番驚くところは、きっとしゃべり方だと思います。

そのしゃべり方は、まさに平安時代の人そのもの。

「いとはづかし」

「さなり」

「ものがたりをえたり。ひるはひぐらし、よるはめのさめたるかぎり、ともしびをちかくともして、はしるはしるこれをみるより、ほかのことなし。」

というように、普通に生活していたら、耳にしたことのない言葉ばかりです。

これを聞いて、

「なんて言ってるんだろう?」

「日本語なの?」

「恥ずかしいって言ってるんじゃない?」

など、子どもたちも初めて聞く言葉に、いろいろと考えます。

おもしろいのは、なんとなくわかる言葉もあるところで、全部はわからないけれど、状況や語感から察することでなんとなくわかります。

このなんとなくわかるというのは、まさにこのクラスの子たちと同じ状況。

たかこのことを知っていったり、いろいろな言葉を聞くことで、たかこのことが少しずつわかっていくという、クラスメートと同じ体験をできるのです。

ほかにも、墨と筆で字を書いたり、琵琶を鳴らしたりとどこをとってもユニークなたかこ。

この、昔の日本文化を感じさせてくれる、とてもユニークで興味深くおもしろいたかこのキャラクターが、この絵本のとてもおもしろいところです。

ぜひ、「現代の日本に、平安時代の人が来たら?」という、おもしろいシチュエーションを体験してみてください。

たかこと男の子の素敵な関係性

そんなたかこと一番仲良くなるのが、主人公の男の子です。

たかこのとなりの席で、よく話をしています。

なんならこの絵本自体が、男の子の「ぼく」という目線から語られる日記のような形式になっています。

この男の子とたかこの関係性が、なんとも素敵でいい関係なのも、この絵本の魅力です。

男の子は、常にたかこの味方であり、よい理解者となっています。

最初は、言葉がよくわからなかった男の子ですが、日が経つとたかこの長文も、自然と翻訳できるほど、たかこの言っていることが当たり前にわかるようになっています。

ほかにも、扇をなくした時に一緒に探したりと、常にたかこに寄り添ってくれる男の子。

なにより、たかこの変わったところを知りつつも、そのたかこ特有の文化を当たり前に受け止めたうえで、普通の友だちと同じように話し、心配し、寄り添っているところが、とても素敵なのです。

この、たかこの特異性をまったく感じさせない、それを当たり前のように受け取めている、男の子とたかこの関係性も、この絵本のとても素敵なところです。

最後の場面で、たかこのよきライバルになっている姿も、なんともこの二人らしいものになっていて、ほほえましいところも素敵です。

たかこならではの昔の文化が垣間見える助け方

さて、たかこと男の子は仲良しなのですが、ほかの子とはうまくいっていないたかこ。

からかわれる日々を過ごす中で、遠足の日を迎えます。

そこで突然降ってきた大粒のひょう。

子どもたちが逃げ惑う中、それを助けたのはたかこでした。

その助け方は、なんともたかこらしいパワフルだけれど、エレガントなもの。

でも、それはたかこの強い正義感や、みんなを守りたいという優しさがとても強く出ているものでもありました。

この、なんとも力強いけれど、なんとも雅な光景を見せてくれる、たかこらしい助け方もこの絵本のとても素敵なところです。

また、平安時代の着物の美しさや、その着方や暮らし方など、昔の文化が垣間見られるものとなっているのも素敵なところで、

「こんなにたくさん着てたの!?」

「この模様きれいだね!」

「重くなかったのかな?」

など、子どもたちも自然と昔の文化へと興味が惹きつけられるのです。

きっと、この絵本を見た後は、時代劇やお雛様など、昔の日本の文化を目にしたときの見え方が、また違ったものになっていることでしょう。

二言まとめ

現代の学校に、平安時代の人が転校してくるというシチュエーションがおもしろい。

たかこを通して、昔の日本文化に触れられる、現代と昔の異文化コミュニケーション物語です。

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