文:谷川俊太郎 絵:堀内誠一 出版:くもん出版
突如現れたキツネのおじさん。
布を帽子にかけ、めくってみると中から・・・。
さあ、マジックショーの始まりです!
あらすじ
ある日、キツネのおじさんが、森の中に現れました。
それを見に来たリスの目の前で、テーブルに置いた帽子に布をかけるキツネのおじさん。
その布をめくると・・・
なんと帽子の中に山盛りのどんぐりが。
それを見て、ウサギとサルもやってきました。
キツネのおじさんはまた、帽子に布をかけます。
その布をめくると・・・
なんと、リンゴが3つ出てきました。
キツネのおじさんは、またまた帽子に布をかけます。
その布をめくると・・・
まだまだ出てくる、いろいろなもの。
いったいどうやって、帽子からいろいろなものを出しているのでしょうか?
『ちちんぷいぷい』の素敵なところ
- 帽子から次々といろいろなものが出てくるおもしろさ
- 読み手に任された魔法の呪文を言う余白
- ちりばめられた仕掛けのヒント
帽子から次々といろいろなものが出てくるおもしろさ
この絵本のなにより楽しいところは、キツネのマジックショーでしょう。
帽子に布をかけてめくると、あら不思議。
中から、ドングリやリンゴなど、いろいろなものが出てくるのです。
これには子どもたちも、
「わあ!ドングリだ!」
「リンゴが出てきた!」
「あむあむあむ!」
と、驚いたり出てきたものを急いで食べたり。
まるで、本当に目の前でマジックショーを見ているかのようでした。
この、布をめくるとなにかが出てくるという驚きとワクワク感が、この絵本のとてもおもしろいところです。
出てくるものも、子どもたちがよく知っているものばかりというのもポイントで、自分の知っているものが出てくることに大喜び。
小さい子も、指差しや言葉で知っているものが出てきた嬉しさを伝えてくれていました。
読み手に任された魔法の呪文を言う余白
そんな帽子マジックを見せてくれるこの絵本ですが、実はタイトルにある魔法の呪文「ちちんぷいぷい」はマジックの中で使われません。
布をかけ、ページをめくると「ぱっ」と、なにかが出てくるのです。
ただ、この布をかけた後の余白が、ものすごく「ちちんぷいぷい」と言いやすい。
それに、「ちちんぷいぷい・・・」と、ためてページをめくったほうが、子どもたちも盛り上がります。
これは、おそらくですが、読み手が自由に「ちちんぷいぷい」を入れやすいように、こういう作りになっているのでしょう。
文章に縛られず、自分が一番盛り上がると思うタイミングと言い方で「ちちんぷいぷい」を入れられるように。
読んでいると、そんな心づかいが感じられるのです。
もしかしたら、「ちちんぷいぷい」以外の呪文が浸透している場所でも、「ちちんぷいぷい」に縛られず好きなように変えられるようにという願いもあるのかもしれません。
この、そのまま読んでもとても楽しいですが、余白の部分に「ちちんぷいぷい」と、呪文を入れるとよりおもしろくなるのも、この絵本のとてもおもしろいところです。
ぜひ、ページをめくる前に、魔法の呪文を唱えてみてください。
本当の魔法のように、子どもたちのワクワク感が高まりますよ。
ちりばめられた仕掛けのヒント
さて、このキツネのマジックショーですが、実はタネも仕掛けもちゃんとあります。
しかも、絵本の中ですべて明かされているのです。
ただ、おもしろいのは、明かされてはいても、語られてはいないところ。
キツネのマジックショーは、黒い布をかけたテーブルの上に帽子を置いて行われるのですが、テーブルの中に明らかになにかいるのです。
次に出す予定のリンゴが布から転がり出てしまったり、
それを取るために手が出てきたり、
しっぽが見えたりと・・・
と、マジックをするたびに、小さなヒントが出され、最後には見つかってしまういます。
さらにその後、使っていた穴の空いたテーブルが背景に描かれます。
これらをつなぎ合わせると・・・
どうやって、帽子からいろいろなものを出していたかに気付けることでしょう。
この、明かされるれど語られない、マジックの仕掛けもこの絵本のとてもおもしろいところです。
語られないからこそ、よーく見て、推理して、自分で気づいた時の嬉しさは相当なもの。
「あ!わかった!」とまるで頭の上に電球が飛び出たかのような反応で、自分の推理を興奮気味に教えてくれることでしょう。
二言まとめ
帽子からいろいろなものが出てくる、不思議なマジックショーがシンプルにおもしろい。
魔法の呪文でアレンジすると、さらにワクワクしておもしろくなるマジック絵本です。
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