作・絵:田中友佳子 出版:徳間書店
あるところに、1匹のカッパが暮らしていました。
けれど、日照り続きで食べるものもありません。
そんな時、目の前に大きなキュウリを運ぶ老人を見つけたので、
追いかけていくと・・・。
あらすじ
あるところに、カッパの子どもであるかっぺいが住んでいました。
しかし、今年の夏は日照りが続き、水も枯れ、食べるものもなくなっていました。
腹をすかせたかっぺいが、キュウリをおなか一杯食べたいと考えていると・・・
大きなキュウリを荷車に乗せたおじいさんが、目の前を通り過ぎて行ったではありませんか。
かっぺいは、すぐにそのおじいさんを追いかけていきました。
追いかけていくと、曲がり角からキュウリのお尻が見えています。
さっそく、かっぺいは駆け寄りかぶりついたのですが・・・
それはサボテンでした。
かっぺいはがっかりしましたが、少し先にまたキュウリのお尻が見えます。
また、かっぺいがキュウリにかぶりつくと・・・
それは大きなワニでした。
ワニは怒りましたが、日照り続きで追いかける元気はない様子。
かっぺいは気を取り直して、また歩き出しました。
そしてまた、キュウリを見つけかぶりつきます。
ところがそれは、ティラノサウルスのしっぽ。
驚いたティラノサウルスが、しっぽを振りまわしたので、かっぺいは空高く跳ね飛ばされてしまいました。
跳ばされたかっぺいは、雲の上からのびる太いつるのようなものに引っかかりました。
上を見上げると、なにやら緑色の実がなっています。
かっぺいは、その実を目指してつるを登てみることにしたのでした。
いったいここはどこなのでしょう?
かっぺいは、無事キュウリへとたどり着けるのでしょうか?
『かっぱのかっぺいとおおきなきゅうり』の素敵なところ
- 巨大キュウリを求めるワクワクの長い旅
- キュウリだと思ってかぶりついたら・・・
- お腹だけじゃなく日照りも解決!?
巨大キュウリを求めるワクワクの長い旅
この絵本の一番ワクワクするところは、巨大キュウリを追いかける長い旅路でしょう。
偶然おじいさんが運ぶキュウリを見つけたかっぺいが、それを追いかけ、様々な出来事に遭遇します。
この出来事に関しては、次の項でお話ししましょう。
そんな出来事を乗り越え、岩場を越え、砂地を越え、キュウリを追いかけどんどん進んでいくかっぺい。
最終的には、雲の上までたどり着いてしまいます。
このキュウリを追いかけているとは思えない、奇想天外な道のりがこの絵本のとてもおもしろいところ。
雲の上に伸びるつるを見て、
「え!?こんなところにキュウリ!?」
「どうなってるの!?」
と、まさかの展開に驚く子どもたち。
完全に普通のキュウリだと思っていたのに、一気に不思議さが増していきます。
この、長く壮大で、予想もつかないかっぺいの旅に、驚きとワクワクが止まらないのも、この絵本の素敵なところです。
キュウリだと思ってかぶりついたら・・・
こうして、長い旅をしていくかっぺいですが、道中で様々な出来事に出会います。
そのどれもが、キュウリにかぶりつこうとして起こるのが、この絵本のとてもおもしろいところ。
キュウリっぽいものを見たかっぺいが、そのキュウリにかぶりつこうとして、ページをめくると全然違うものだった・・・
という繰り返しで進んでいきます。
しかも、だんだんとスケールが大きくなり、最終的に登場するのがティラノサウルス!
「ティラノサウルス!?」
「恐竜もいるの!?」
と、子どもたちも度肝を抜かれます。
この、次に進むごとにスケールと危険度が大きくなり、物語が進むほどハラハラドキドキさせられる、キュウリにかぶりつく場面も、この絵本のとても盛り上がるところです。
お腹だけじゃなく日照りも解決!?
さて、こうして空までたどり着いたかっぺいですが、そこでキュウリの真実を知ることになります。
あんなに巨大なキュウリを運んでいたおじいさんの正体も。
もちろんそこで、キュウリをおなか一杯食べてもハッピーエンドなのですが、それだけでは終わらないのがこの絵本の素敵なところ。
ある出来事がきっかけで、日照りもしっかりと解決してくれるのです。
その出来事が、キュウリの持つ特徴を見事に活かしたものになっていて、なおさら素敵。
キュウリのみずみずしさが、物語のギミックとしてきれいに機能しています。
ただ、それが偶然の出来事で、みんなを救おうとしたわけではありません。
本人は、キュウリを食べたかっただけというのも、実にかっぺいらしいなぁと思います。
この、偶然ではありながら、物語の根本的な問題もしっかりと解決し、すっきり大満足で終わる結末も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
キュウリだと思ってかぶりついたら、違うものだったという繰り返しが、ハラハラドキドキでおもしろい。
雲の上に行ったり、ティラノサウルスまで出てきたりと、予想外の壮大さにワクワクが止まらないカッパ絵本です。
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