【絵本】こんなかいじゅうみたことない(5歳~)

絵本

作:藤本ともひこ 出版:WAVE出版

あるところに、怪獣の子どもがいました。

でも、その子は怪獣にあるまじき、おりこうさんな怪獣でした。

そんな子を見かねて、両親は怪獣を人間の保育園に預けることに決めたのでした。

あらすじ

あるところに、怪獣の子どもがいました。

怪獣の子が静かに絵本を読んでいると、お母さんから「ビルでも壊してきなさい」と叱られてしまいました。

部屋を片付けていると、お父さんから「もっと散らかしなさい」叱られます。

靴を右左揃えていると、「怪獣は靴なんかはかないの!」と言われてしまいます。

両親が、いくらいっても怪獣の子は、怪獣らしくなりませんでした。

そこで、「こんな怪獣みたことない」と泣き出した両親は、怪獣の子を人間の保育園に預けることに決めたのです。

そこには小さな怪獣がたくさんいました。

どろんこ怪獣に、散らかし怪獣、積み木を壊すぶっ壊し怪獣まで。

怪獣の子はそれを見て「こんな怪獣みたことない」と思いました。

でも、この怪獣たちは暴れるだけでなく、転んだ時に心配してくれたりと、ちょっぴり優しいのです。

怪獣の子はみんなのことが大好きになり、みんなも怪獣の子が大好きになりました。

そして、あっという間に卒園式がやってきて・・・。

さて、卒園した怪獣の子は、どんなふうに成長したのでしょう?

『こんなかいじゅうみたことない』の素敵なところ

  • 怪獣と人間の立場が真逆なおもしろさ
  • 怪獣が保育園で学んだこと
  • 色々な意味を持つ「こんなかいじゅうみたことない」

怪獣と人間の立場が真逆なおもしろさ

この絵本のなによりおもしろいところは、怪獣と人間の固定観念を打ち砕いてくれるところでしょう。

怪獣は、暴れん坊で色々なものを壊すという、ゴジラのようなイメージだと思いますが、この絵本の怪獣の子は違います。

絵本が好きで、片づけをきちんとし、積み木だって上手に積んで遊ぶのです。

そんな怪獣の子を預ける先は、まさかの人間の保育園。

そして、確かに言われてみると、普段子どもたちがやっていることは、まさに怪獣がやっていることに見えてきます。

走り回り、ケンカをし、大泣きする。

特に作った積み木をぶっ壊す姿なんか、怪獣がビルを壊す姿と瓜二つ。

この、人間の子って実は怪獣みたいだということに、気づかせてくれるのが、この絵本のとてもおもしろいところです。

絵本を見ている時は多くの子が、

「こんなことしないよ!」

「怪獣じゃないよ!」

と言ってくると思います。

そんな子には、ぜひ日常生活の中で怪獣みたいにしている時に「あ!小さい怪獣だ!」と言ってみてください。

きっと、その時に、この絵本の本当のおもしろさに気付くと思いますよ。

怪獣が保育園で学んだこと

こうして、人間の保育園で遊び始めた怪獣ですが、その暴れっぷりに驚いただけでなく、あることにも気付きます。

それが、子どもたちの優しさ。

転んで泣いている子にすぐ気付き、「いたいのいたいのとんでけ」とおまじないをかけてくれたりするのです。

この絵本の中では、この場面だけですが、

「優しいね~♪」

「ケンカを止めてくれたりもするよね」

「お片付け手伝ったりもする」

など、ほかの優しい場面も一緒に連想されていました。

小さな怪獣たちの、優しく温かい姿に、心がほっこりしてきます。

この、人間の子どもたちの怪獣らしさだけでなく、時折見せる優しい姿を自然に描き出しているのも、この絵本のとても大きな魅力です。

怪獣と子どもたちが遊ぶ姿からは、楽しいだけじゃなく、暖かで優しい人と人との関りの素敵さを、強く感じられると思いますよ。

ぜひ、こうした関わりの中で育った怪獣の子が、卒園後どんな姿になったのかも確かめてみてください。

きっと、素敵な怪獣に成長した姿が見られることでしょう。

色々な意味を持つ「こんなかいじゅうみたことない」

さて、そんな物語の中で、何度も出てくる言葉があります。

それは「こんなかいじゅうみたことない」。

おもしろいのは、この言葉が場面ごとに、意味が違って聞こえることです。

最初に出てくるのは、両親がおりこうな怪獣の子に絶望する場面。

ここでは「悲しみ」が感じられると思います。

次に出てくるのは、怪獣の子が保育園で子どもたちの暴れっぷりを見る場面。

ここでは「驚き」が感じられることでしょう。

最後に出てくるのは、この絵本の最後のページ。

ここでは、「感心」を感じられるのではないでしょうか。

どれも驚きの表現なのですが、そこには違う感情やニュアンスが込められています。

これらの機微を、物語の中で自然と「こんなかいじゅうみたことない」という言葉から感じられるのも、この絵本のとてもおもしろいところとなっています。

同じ言葉でも、使う場面によって全然違う意味に聞こえる、言葉遊びのようなおもしろさ。

言い方によって「正」にも「不」にもなる、言葉の複雑さを、子どもたちと感じてみてください。

二言まとめ

怪獣らしくない怪獣の子と、怪獣そっくりな人間の子どもとの関りがとてもおもしろくて、心温まる。

普段は遠い存在の怪獣と自分の共通点に、気付いてしまう怪獣絵本です。

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