作:斎藤洋 絵:高畠那生 出版:偕成社
もしゾウがオリンピックに出たら・・・。
金メダルをいくつ取ることができるでしょう?
予想外の活躍に、きっとみんな驚くぞう!
あらすじ
アフリカで消防士をしているゾウ。
でも、それだけじゃなく、オリンピックにも出るのです。
重量あげや、円盤投げでは、その怪力でもちろん金メダル。
野球、サッカー、バレー、バスケットなどの団体競技でも、その力と体の大きさを活かして大活躍です。
水泳はちょっと・・・
と、思いきや、鼻からのジェット噴射を使った自由形で金メダル。
障害物競走では、イヌやウサギにかなわないけれど、オリンピックに障害物競走はありません。
新体操など苦手な種目の時は、おとなしく見物です。
100メートル競走だって、ゾウの地響きで他の選手が立っていられず、ゾウが金メダル。
マラソンでも同じです。
さて、ゾウはいくつ金メダルをもらったのでしょう?
そして、オリンピックを終えたゾウが次に目指すのは・・・?
『ぞうの金メダル』の素敵なところ
- 「ゾウがオリンピックに出たら」という、ユーモアたっぷりなもしもの世界
- 迫力満点なゾウの雄姿
- 向上心あふれるゾウのその後
「ゾウがオリンピックに出たら」という、ユーモアたっぷりなもしもの世界
この絵本のなによりおもしろいところは、「ゾウがオリンピックに出たら?」という、もしもの世界を味わえるところでしょう。
動物が動物のオリンピックに出るという絵本はたまに見かけますが、この絵本のおもしろいところは、人間のオリンピックに、動物たちが自由に参加できるということ。
人間のオリンピックのルールの中に、ゾウをはじめ、重量あげならクマ、水泳ならアシカやシロクマ、100メートル走ならチーターやヒョウなどが参加しているのです。
この異種格闘技な感じがなんともおもしろく、「人間には勝てても、チーターには勝てないんじゃない」という、不思議な予想が生まれます。
そんな中、いろいろな方法で圧勝していくゾウ。
鼻のジェット噴射で泳いだり、地響きで他を走らせないようにしたりと、なんともユーモアあふれる戦い方で、試合を制していきます。
これには子どもたちも、
「ゾウ、すっげー!」
「なんでもできるじゃん!」
と、大喜び。
一気にスポーツマンとしてのゾウの大ファンとなっていました。
この、テレビで見たことのある現実的なオリンピックの中で、ゾウが大活躍するというユーモアあふれるもしもの世界を体験できるのが、この絵本のとてもおもしろいところです。
迫力満点なゾウの雄姿
そんな大活躍のゾウですが、その描き方が迫力満点かつ、予想外な驚きに満ちているのもこの絵本のおもしろいところです。
序盤は、鼻でダンベルをあげたり、耳でサッカーのシュートを止めたり、長い鼻でバスケのゴールを決めたりと、ゾウらしい活躍を躍動感たっぷりに見せてくれます。
ですが、中盤からさらに本気を出してくるゾウ。
最初に度肝を抜かれるのは、水泳でしょう。
スタートラインには、人間の選手のほかに、アシカやシロクマなど、明らかに泳ぎの速そうなライバルたち。
その中で、ひときわ体が大きくて重そうなゾウという画は、万に一つも勝ち目がなさそうに見えます。
ですが、ページをめくった瞬間、圧倒的な速さで、ものすごい水しぶきをあげて、先頭を泳いでいるのだからびっくり。
「えー!?めっちゃ早い!」
「そんな泳ぎ方あるの!?」
「ロケットみたいに進んでるよ!」
と、まさに「どっひゃー!」という効果音がぴったりな驚き方を見せる子どもたち。
その迫力と、ポテンシャルの高さに度肝を抜かれていました。
100メートル走でも、同じこと。
ただ違うのは、子どもたちの期待感。
水泳を見て、「なにかやってくれる」という期待で目がキラキラ輝いています。
そして、期待を裏切らず、見事にやってくれるゾウ。
その躍動感たっぷりのゾウの走りと、ほかの選手たちの転びっぷりに子どもたちは、
「ゾウ、すっげー!」
「みんな転んじゃってるwww」
と、驚いたり大笑いしたりしていました。
この、真剣かつ、コミカルかつ、迫力満点に描かれたゾウの雄姿に、驚かされ、大笑いさせられるのも、この絵本のとても素敵なところです。
向上心あふれるゾウのその後
さて、こうして金メダルをたくさん獲得したゾウ。
ですが、オリンピックは4年に一度。
終われば、元の生活に戻っていきます。
この最後の場面で、ゾウの向上心の高さやさらなるポテンシャルを見せつけてくれるのも、この絵本のとても楽しいところです。
本職は消防士なので、消防士に戻りますが、ある勉強をしているゾウ。
その努力が実り、ゾウにぴったりなような、そうでもないような、ある仕事を始めます。
ただ、そこで終わらないのが、この絵本のおもしろいところ。
最後の最後で、新たな金メダルを手にするのです。
でも、この最後の金メダルを取ったのは、おそらく結構先の未来。
その間に、ゾウがどんなことをしてきたのか、どんどん想像が膨らむのです。
どんなことをして、この金メダルをもらったのか?
そんなことが気になりつつも、間違いないのはゾウが努力し続けたこと。
最後の場面を見たら、ゾウのポテンシャルや人となりがより想像でき、さらにゾウのファンになってしまうことでしょう。
この、オリンピックが終わった後の、少しだけ描かれたゾウのその後も、この絵本のとても素敵で、ゾウのことがさらに好きになってしまうところです。
二言まとめ
「ゾウが人間のオリンピックに出たら?」という、ユーモアたっぷりなもしもの世界がおもしろい。
そこでのゾウの目覚ましい活躍と、その後の予想外の活躍に、最初から最後まで目が離せないオリンピック絵本です。
コメント