作:キューライス 出版:白泉社
この世界にはシカしかいません。
公園、銭湯、商店街・・・。
どこに行ってもたくさんのシカ!シカ!シカ?
あらすじ
この世界にはシカしかいない。
草原にも・・・
公園にも・・・
銭湯にも・・・
シカしかいない。
草や木の実のバイキングレストランにもシカしか・・・いない?
ウサギや羊もいるような・・・。
映画館にもシカしかいない。
観た映画は『怪獣シカラ』。
もちろん飛行機にもシカしか乗っていない。
野球場では、シカ同士が野球をしている。
ピッチャーが投げ、バッターがスカ!
また投げ、スカ!
もう一度投げ、パカ!
打たれましたが、シカはしっかりキャッチします。
と、シカしかいない絵本を読んでいるうち気づいたら・・・シカしかいない?
『シカしかいない』の素敵なところ
- ところ狭しと描かれるバリエーション豊富なシカ
- たまに出てくるシカ以外の動物に止まらないツッコミ
- シカを使った楽しい言葉遊び
ところ狭しと描かれるバリエーション豊富なシカ
この絵本の一番の見どころは、様々なシチュエーションで描かれる、大量かつバリエーション豊富すぎるシカたちの姿でしょう。
この絵本はほとんど文章がなく、ページを見るのが隅から隅までじっくり見るのが楽しい『ウォーリーを探せ』のような絵本です。
ページの中には大量のシカが描かれ、それぞれが色々なことをしています。
草原では木の陰にきれいに収まるよう集まっていたり、
逆にレジャーシートを敷き、ワイン片手に日向ぼっこしていたり。
公園では、逆上がりの練習やダイエット、「草食べるの禁止」という看板が立っているにも関わらず草を食べていたり。
もちろん、遊具もシカの形です。
それぞれのシカが、そのシチュエーションの中で色々な行動をしているのがおもしろく、
「泥だらけのシカがいるよ!」
「お父さんとお母さん困ってるんじゃない」
「シャワー浴びれば大丈夫だよ!」
など、頭の中にシカ同士の関係性や、その物語が浮かんでくるのです。
また、変わったシカの存在も、忘れてはいけません。
ページの中には、ものすごく小さなシカや、どこでも穴から顔を出すシカ、シカロボットなど、明らかに異色なシカも多数登場し、注目を集めます。
それらは、シチュエーションをまたいで、ほとんどのページにいるのも特徴的で、「あ!さっきもいた!」と、見つけるたびに大盛り上がり。
その背景が気になりすぎるところからも、この絵本のおもしろさの一翼を担う存在となっています。
この、見れば見るほど発見があっておもしろい、様々なシチュエーションで描かれる大量のシカがこの絵本のとてもおもしろいところです。
たまに出てくるシカ以外の動物に止まらないツッコミ
こうして、シカしかいないこの絵本ですが、実はシカ以外もちゃっかりいます。
それがバイキングレストラン。
普通に、リスやウサギ、ヒツジも利用しているのです。
なんなら、リスはお店も出しています。
これを見つけた瞬間に、子どもたちが鬼の首を取った勢いでツッコミを入れてくるのも、この絵本の素敵なところ。
「ヒツジいるじゃん!」
「シカしかいなくないじゃん!」
「シカしかいないって嘘じゃん!」
と、ここぞとばかりにツッコミを入れてきます。
『シカしかいない』というタイトルと、ずっとシカしか出てこなかったところからの、シカ以外が出てくる。
この鉄板としかいいようのない流れが、王道な盛り上がりを生み出すのです。
この、シカ以外の動物を不意に出すことで、ここぞとばかりにツッコミを入れられる、盛り上がる場面を用意してくれているのも、この絵本のとてもおもしろいところとなっています。
シカを使った楽しい言葉遊び
さて、こんな風に、シカやシカ以外の動物など、探すのがおもしろいこの絵本。
ですが、探す遊び以外にもおもしろい要素があります。
それはシカを使った言葉遊び。
この絵本の文章では、色々な場所に言葉遊びのおもしろさが散りばめられています。
例えば、野球をやっている場面で、空振りして「スカ!」
打つと「パカ!」
キャッチしたら「シカ、しっかりキャッチ!」
と、シカに似た言葉を選んだり、ダジャレが入っていたり。
他にもところどころに出てくるお店の名前や看板が、
ゴジラをもじった「シカラ」
タマホームをもじった「シカホーム」
「TOSHIBA」をもじった「TOSHIKA」
になっているなど、背景にもシカを使った言葉遊びの数々が。
ただ、これらは前面に押し出されることはありません。
ダジャレも、さりげなく仕込まれています。
だからこそ、気付いた時にとてもうれしい。
「あ!シカとしっかりがダジャレになってる!」
「シカ・コーラだって!」
「ポップコーンじゃなくて、ポップ草だ!」
などなど、子どもたちも発見を喜びつつ、ほかの子と共有していました。
この、散りばめられた言葉遊びを見つける楽しさと、見つけた時の嬉しさも、この絵本のとてもおもしろいところです。
大人でないとわからない昭和を感じる渋いネタも盛り込まれているので、ぜひ子どもと一緒に探してみてください。
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