作:中川李枝子・山脇百合子 出版:福音館書店
300と65日の1年間。
春夏秋冬、その月ならではの出来事があるでしょう。
そんな12の月を、ぐりとぐらと一緒に1つずつゆっくりと見ていく絵本です。
あらすじ
ぐりとぐらと一緒に、1年間を1月ごとに見ていきます。
1月
雪景色の中であけましておめでとう。
1年がいい年であるよう祈ります。
2月
みんなでそりに乗って遊びます。
雪ならではの遊びです。
3月
雪が溶け、春がきます。
種を蒔いたり、苗を植えたり、春の仕事はたくさんあります。
毛糸を巻きながら予定を考えましょう。
4月
みんなで学校ごっこをしています。
本も読めるし字も書けるから、先生になろうかな?
でも、1年生にもなりたいな。
お弁当はお勉強が終わってからです。
5月
五月晴れの青い空。
若葉が揺れて、小鳥が歌う。
天気がいいから毎日遠足。
6月
雨の日には長靴はいて、傘をさして水たまり探検隊。
のぞいて、かきまわしたら、素晴らしい発見するかもしれない。
1年の半分が過ぎました。
7月からはいよいよ夏です。
残りの6か月はどんなことが待っているのでしょうか?
『ぐりとぐらの1ねんかん』の素敵なところ
- 1月ずつ丁寧に見ていく1年間
- 季節の移り変わりが自然と感じられる1年間
- 優しく、楽しく、わかりやすい言葉で描かれる1年間
1月ずつ丁寧に見ていく1年間
この絵本の素敵なところは、1年間をぐりとぐらと一緒に、1月ずつゆっくりと見ていくところでしょう。
見開き1ページで1月が描かれ、ページをめくるごとに1月が過ぎていきます。
そこでは、
雪の中でのそり遊び。
新緑の遠足。
夏のキャンプ。
など、その月ならではの風景が描かれます。
そのどれもが、ぐりとぐらのほかの絵本を思い出すような、自然豊かで楽しげに描かれるからたまらない。
この、ぐりとぐらの世界観の中で1年間を過ごすことができるのが、この絵本のとても素敵なところです。
1月ごとに、しっかりと区切って描かれているので、1年間の振り返りにも、1年の始まりに見通しを持つように読むのにも、とても読みやすく伝わりやすいのもポイント。
1ページ読むたびに、
「この月は、こんなことしたよね」
「今度は夏休みどこに行こうか?」
など、その月の出来事について、話すのがとても楽しい。
思い出を振り返ったり、楽しみを共有するのに、とてもいい絵本なので、ぜひ自分たちの1年間とも重ね合わせながら読んでみてください。
季節の移り変わりが自然と感じられる1年間
そんな1月ごとに描かれる1年間ですが、とても自然に季節が移り変わっていくのも、本当に1年間を過ごしている気分になれるすごいところとなっています。
現実の季節は、ページをめくるようには、急に変わりません。
少しずつ、次の季節の気配を感じ、気付いたら完全に季節が移り変わっているものだと思います。
この絵本では、1月ごとにしっかりと区切られているにも関わらず、その自然な流れを感じられるのがすごいのです。
冬と春の境目である3月は、雪が溶け、春が顔を出しますが、家の中にはストーブが置かれ、カーペットが敷かれています。
家の中にある草花も、冬と春が混在していて、まさに移り変わりの途中が見事に描かれているのです。
だからこそ、次の4月がとても自然に迎えられます。
この、冬でも春でもある境目や、夏でも秋でもある季節の間を見事に描いているのが、この絵本のすごいところ。
1月の冬から始まり、気付いたら春・夏・秋を越え冬になっているという、まさに1年間の体感が味わえます。
これも、ぐりとぐらと一緒に本当に1年間を過ごした気分になれる、この絵本の特別なところです。
優しく、楽しく、わかりやすい言葉で描かれる1年間
さて、この絵本で絵とともに忘れてはいけないのが、その優しく、楽しく、わかりやすい言葉です。
この絵本の言葉のどれからも、その月を目いっぱい楽しんでいることが伝わってくるのが本当に素敵。
2月なら「しっかり つかまれ ぎゅっと くっつけ それ いくぞ ひゅうひゅう びゅうびゅう 風きって せかいのはてまで とんでいけ こどもは 風の子 雪の子だ」
4月なら「本 よめる 字 かける 1234も しっている だから せんせいに なろうかな でも 1ねんせいにも なりたいな がっこうごっこの おきょうしつ みんな まじめ おおまじめ おべんとうは まだまだ おべんきょうが おわってからよ」
というように、その月ならではな楽しみや気持ちを、思いっきり楽しんでいるのです。
これが、楽しそうな絵と相まって、どの月を見ても、とても楽しく明るい気持ちにさせてくれます。
冬には冬の、春には春の楽しさがあり、1年中を楽しく遊ぶように過ごしていくのです。
ただ、完全に子ども目線かと言うとそうでもなく、それを見守る大人の優しい眼差しが見え隠れするのも素敵なところ。
1月の「あけまして おめでとう あたらしいとし おめでとう きょうも あしたも あさっても ずっと ずっと 1ねんじゅう 300と65にち よい日でありますように」
という言葉のように、大人からの祈りのような言葉もあります。
きっと、これが楽しいだけじゃなく、包み込むような優しさを感じさせる部分なのでしょう。
自分の一生懸命な遊びを、ずっと肯定的に見守ってもらっているような感覚を覚えます。
ただ、この絵本の1番すごいところは、子どもと大人、それぞれの視点が合わさっているのに、小さい子でも直感的にわかるほど、とてもわかりやすく言葉が紡がれているところ。
おそらく、どの言葉も、子どもが遊びの中で発する言葉や、大人が子どもに話しかけるような言葉を詩としているからなのでしょう。
この絵本の言葉は、驚くほど自然に体の中に入ってきて、その月を思いおこさせるのです。
この、子どもの楽しむ視線と、大人の見守る視線が見事に調和した、誰かと話しているように自然と体の中に入ってくる、優しく、楽しく、わかりやすい言葉も、この絵本のとても素敵なところです。
二言まとめ
ぐりとぐらと一緒に、1年間を1月ごとにゆっくり楽しく見通すことができる。
子どもと一緒に、自分たちの1年間も重ね合わせて読みたくなる絵本です。
コメント