【絵本】十二支のしんねんかい(3歳~)

絵本

:みきつきみ 画:柳原良平 出版:こぐま社

お正月に開かれる十二支の新年会。

まずは、十二支の雄姿を称える自己紹介から。

それが終わればいよいよ新年のご挨拶。

あけましておめでとうございます!

あらすじ

初日の出とともに、新しい年が始まりました。

今日は、十二支の新年会が開かれる日。

みんなそろって、会場へ向かいます。

向かう途中に、十二支の自己紹介。

子(ね)

寝ずの番をして家を守り、子孫繁栄を祈ります。

丑(うし)

七夕のけんぎゅう様と織姫様の乗る船を後ろに引いて、天の川を渡ります。

寅(とら)

捉えられない速さで、野越え山越え千里を走る。

卯(うさぎ)

美しい月夜の晩にお餅をつきます。

辰(たつ)

竜巻、嵐もなんのその。天まで昇り、世を見張る。

巳(み)

身をくねらせて、家の中や夢の中へにょろり。見れば縁起が良い印。

・・・

まだまだ出てくる十二支たち。

みんなの自己紹介が終わったら、新年会が始まります。

始まりのあいさつはもちろん・・・。

『十二支のしんねんかい』の素敵なところ

  • かわいいものからかっこいいものまで十二支の自己紹介
  • リズミカルで威勢のいい歌舞伎役者のように読みたくなる文章
  • 最後のあいさつはやっぱり「あけましておめでとうございます」

かわいいものからかっこいいものまで十二支の自己紹介

この絵本の素敵なところは、なんと言っても十二支の特徴を捉えた自己紹介でしょう。

それぞれの特徴がよく表れていて、かっこいいものから、かわいいもの、のんびりしたものまで様々。

けれど、どの自己紹介にも、縁起のよさが漂っているのが十二支の絵本らしいところとなっています。

例えば、ネズミなら、家に居つく性質と子沢山なところから、家を守り、子孫繁栄の象徴として。

ウシなら、けんぎゅう様と織姫様を引くという、特別なものとして。

トラならば、しなやかで速いものの象徴として。

十二支たちは紹介されます。

中には、餅つきをするウサギや、のんびり欲張らないヒツジなど、ほっこりするものも出てきますが、それらからも縁起のよさや、よい生き方の見本としての品を感じます。

また、干支の由来に、ダジャレや、その生き物らしさがバランスよく取り入れられているのも、この絵本のおもしろいポイント。

これにより、縁起のよさを感じさせつつも、堅くなりすぎず、小さな子にもわかりやすく楽しいものとなっているのです。

この、威厳のあるものから、かわいらしいものまで、十二支たちそれぞれに合わせた自己紹介が、この絵本のとてもおもしろいところです。

ぜひ、この絵本だけの十二支たちの自己紹介をお確かめください。

リズミカルで威勢のいい歌舞伎役者のように読みたくなる文章

そんな楽しい十二支たちの自己紹介。

その内容だけじゃなく、リズム感や言葉選びが素敵なのも、この絵本の楽しいところ。

この絵本の文章は、

「寝ずの番して 家守り 子どもの 子どもの そのまたまたまた 子どもまで 栄え続けますようにと チュウチュウチュウ」

「後ろに引くは 七夕のけんぎゅう様と織姫様 年に1度の 天の川」

「捉えられないその速さ 野越え山越え森を抜け 風を従え 千里を走る」

といったように、どれもリズミカルで、読んでいても聞いていても心地よいものになっています。

ただ、読んでいるとどうにも歌舞伎役者や、落語家など、日本の伝統芸能風な読み方になっていってしまうのが、この絵本の不思議でおもしろいところなのです。

言葉の選び方が、昔話などで使われるような古風さがあるからなのか?

干支やお正月という題材を扱っているからなのか?

詳しくはわからないのですが、とにかく大仰に読みたくなる。

中には「ぴょんとことんぴょんとことん」など、かわいい擬音もあるのですが、それでも日本の伝統芸能感はぬぐえません。

きっと「美しい月夜の晩」や「おいしくなあれ」と言った言葉や、満月とススキとウサギという画面に、日本語らしさを感じるからなのでしょう。

「ぴょんとことん」をかわいい感じではなく、やっぱり大仰な感じで読んでしまうのです。

けれど、これがなんとも、この絵本のお正月らしさを高めてくれているところ。

特に最後の場面では、まるでお正月笑点を見終わった後のような、新年が始まった実感を得られることでしょう。

この、言葉選びのためなのか、はたまた絵本全体の雰囲気からなのか、日本の伝統芸能のように大仰に読みたくなる、それがとてもしっくりくるお正月らしい文章も、この絵本のとても楽しいところです。

最後のあいさつはやっぱり「あけましておめでとうございます」

さて、そんな十二支の自己紹介も終わったら、いよいよ新年会の始まりです。

十二支たちが正装に着替え、子~亥まで金屏風の前に居並びます。

そして、新年のごあいさつ。

言うのはもちろんあの言葉。

「あけましておめでとうございます」

このシンプルさも、この絵本の最高に素敵なところです。

子どもたちも、みんなで声をそろえ、

「あけましておめでとうございます!」

と、新年のごあいさつ。

十二支をしっかりと知り、そのうえで新年のあいさつをする。

気分は完全に新年へ切り替わることでしょう。

この、十二支を全員見た後に、みんなで新年のあいさつをして終わるという、シンプルゆえに新年へキリリと気持ちが切り替わる、おめでたい最後の場面も、この絵本のとてもとても素敵なところとなっています。

二言まとめ

十二支たちの特徴にぴったり合った縁起のいい自己紹介が、読んでいても聞いていても心地いい。

十二支みんなと一緒にする新年のあいさつで、身も心も新年へと切り替わるお正月絵本です。

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